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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Therapeutic Exon Skipping via a CRISPR-guided Cytidine Deaminase Rescues Dystrophic Cardiomyopathy In Vivo" Li J [..] Chang X. Circulation. 2021-10-26. https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.121.054628
 西湖大学と上海栄養・健康研究所などの研究グループが,CRISPR-Cas9によるデュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD)の新規モデルマウス (DmdE4* マウス)の樹立と,塩基エディターの一種であるTAM (Targeted AID-mediated mutagenesis) [*]をsaCas9 (KHH)をベースとした上で,AIDへの機能獲得性変異導入やsaCas9のコドン最適化を介して編集効率を約10倍以上へとエンハンスしたeTAM によって,標題を実証した.
  • eTAMとgRNAをAAVを介してDmdE4* マウス新生仔に注入し,投与後2ヶ月または12ヶ月後に解析を行い,エクソンスキップの程度,ジストロフィンの回復,および心筋と骨格筋の表現型の改善を評価した。
  • DmdE4* マウスは,寿命の短縮 (約50%), 進行性心筋症, 脊柱管狭窄,筋力の大幅な低下,筋細胞の変性など,ヒトDMDの多くの側面を再現していた.
  • 単回投与によって,DMDの転写産物の50%以上でエクソンスキップが誘導され,心臓のジストロフィンを90%まで回復させた.その結果,心室の早期リモデリングが抑制され,心筋や骨格筋の機能が改善され、DmdE4* マウスの寿命が延びた.
  • AAVベクターとeTAMの発現は時間と共に徐々に低下したが,ジストロフィンの回復と筋ジストロフィーの病態改善効果が,少なくとも1年間持続した.
 [*] TAM法
  • “Targeted AID-mediated mutagenesis (TAM) enables efficient genomic diversification in mammalian cells” Ma Y, Zhang J, Yin W, Zhang Z, Song Y, Chang X. Nat Methods. 2016-10-10.  http://dx.doi.org/10.1038/nmeth.4027
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