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2021-12-12 Nature Biotechnology誌から査読済み論文として刊行された:
"Programmable deletion, replacement, integration and inversion of large DNA sequences with twin prime editing" Anzalone AV, Gao XD, Podracky CJ [..] Liu DR.  Nat Biotechnol 2021-12-09. https://doi.org/10.1038/s41587-021-01133-w
 bioRxiv 投稿と比べてタイトルもアブストラクトも「すっきり」となったが,斜め読みした限りでは主要な図と成果は改訂されていないようだ.本記事では今回,bioRxiv 投稿でも論じられていたが,TwinPEの機序とpegRNAのペアを利用する手法を報告した2論文との比較を論じた部分を記事文末 [*]に改めて追記した.

2021-11-15 初稿
[出典] "Programmable large DNA deletion, replacement, integration, and inversion with twin prime editing and site-specific recombinases" Anzalone AV, Gao XD, Podracky CJ [..] Liu DR. bioRxiv. 2021-11-02. [プレプリント] https://doi.org/10.1101/2021.11.01.466790
 David R. Liuが率いる研究グループからのbioRxiv 投稿.

 TwinPEは,プライムエディター (PE)タンパク質と2種類のプライムエディティングガイドRNA (pegRNA)を利用することで,PEによって誘発される2ヶ所のニックサイトの間の内在性DNA配列を,pegRNAにコードされていた配列に置換する手法である [分子機序については本記事文末の[*]を参照]
  • TwinPEはヒト細胞において,少なくとも780 bpの精密な欠失と,少なくとも108bpのゲノムDNA配列の精密な置換を実現した.
  • 単一または複数のtwinPEと部位特異的なセリンリコンビナーゼを,別々のステップまたは単一のステップで組み合わせることにより,ヒト細胞において,AAVS1,CCR5, ALB などのセーフハーバー遺伝子座に、5,000bpを超えるDNAプラスミドを挿入することに成功した.この結果は,DNA二本鎖切断 (DSB)や相同組み換え修復を介さずに,修飾されていないヒト細胞の標的ゲノム部位に,遺伝子サイズの大きなDNAプラスミドを挿入した初めての例である.
  • TwinPEとリコンビナーゼの組み合わせは,イズロネート-2-スルファターゼ (IDS)における40,167bpの逆位を誘導し,一般的なムコ多糖症Ⅱ型 (ハンター症候群)の対立遺伝子の修正を実現した.
 TwinPEは,DSBを必要としない精密な遺伝子編集の可能性を広げ,他のツールとの相乗効果により,ヒト細胞における大規模または複雑な病原性対立遺伝子の修正または相補を可能にする。

 [参考]PEペアを利用した論文3報 [#1と#2について比較されている [*]
  1. [20211015更新] PRIME-Del: プライムエディティング (PE2)のペアを利用することで、精密なゲノム領域削除を実現.https://crisp-bio.blog.jp/archives/25213281.html; "Precise genomic deletions using paired prime editing" Choi J, Chen W [..] Shendure. Nat Biotechnol. 2021-10-14. https://doi.org/10.1038/s41587-021-01025-z
  2. 2021-03-28 植物のプライム・エディティングの効率をpegRNAの最適設計と二重化によって〜17倍向上.https://crisp-bio.blog.jp/archives/25940220.html; "High-efficiency prime editing with optimized, paired pegRNAs in plants" Lin Q, Jin S, Zong Y, Yu H [..] Li J, Gao C. Nat Biotechnol 2021-03-25. https://doi.org/10.1038/s41587-021-00868-w
  3. 2021-11-05 プライムエディディング (PE)の効率と精度の向上を,pegRNAのペアを利用することで実現. https://crisp-bio.blog.jp/archives/27827475.html; "Increasing the efficiency and precision of prime editing with guide RNA pairs" Zhuang Y, Liu J, Wu H [..] Yi C. Nat Chem Biol 2021-10-28. https://doi.org/10.1038/s41589-021-00889-1
[*] 
TwinPEの分子機序スクリーンショット 2021-10-15 11.50.07

 プライムエディティングは右図モデル図にあるように,Cas9 (ニッカーゼ)と野生型または変異型の逆転写酵素 (RT)からなるプライム・エディティングタンパク質複合体 (PE)と,編集の標的とする部位の特定し標的部位に挿入するDNAをコードするテンプレートのデリバリーを担うpegRNAで構成されている.
  PE-pegRNAは,標的部位を認識するとPAM配列を帯びたDNA鎖をニックし,ニックされた鎖をプライマーとして,pegRNAが帯びていたテンプレートをゲノムDNAヘと逆転写する.続いて,編集された配列を含む新たに合成された3'フラップが隣接するDNAに侵入して冗長な5'フラップを置換する.さらに続いて,編集されなかった反対側の非標的DNA鎖が,編集された標的鎖を鋳型として修復されてプライムエディティングが完了する  
 プライムエディティングの過程には,細胞内在DNA修復機構が,目的とする編集を阻止してDNA配列を野生型へと修復する機会が少なくとも2回ある:3’フラップのアニーリングとライゲーションのステップと,ヘテロ二重鎖解消のステップである.研究グループはこれらのステップを回避することで,編集効率を向上し編集モードを拡張できるのではないかと考えた.
 そこで,一対のpegRNAを用いて,それぞれがもう一方のpegRNAによってテンプレート化された3′フラップと相補的な3′フラップの合成をテンプレート化するTwinPE戦略を発想した [bioRixv Fig. 1またはNat Biotechnol Fig. 1の a 参照].こうすることでテンプレートから新たに合成されたDNA鎖 (以下,編集用DNA鎖)と標的部位の配列との類似度が低い場合は,一対のpegRNAの互いに相補的な3'フラップが優先的にハイブリダイズし,編集用DNA鎖がアニールされた3’オーバーバングと,野生型DNA鎖がアニールされた5'オーバーハングを含む中間体が形成されるという仮説を立てた.こうして,編集用DNA鎖とその相補鎖からなるDNA二重鎖が,PE-pegRNA複合体によって合成され,3'フラップの侵入や編集用DNA鎖のコピーのステップが回避されることになる.後は,アニールされた5'オーバーハングを切除し,TwinPEで入った2ヶ所のニックをライゲーションすることで,標的DNA二重鎖が一対の3’フラップ配列へと置換される. テンプレートの設計は柔軟に行えることから,任意の挿入,削除,置換が可能になる.
  
TwinPEの特徴
 Liuグループとは独立にChoiら [1]とLinら[2]が,pegRNAペアを利用するPEによって,ヒト細胞における正確な大規模欠失と,植物細胞における塩基置換や小さな挿入・欠失の改善が可能なことを報告していた.いずれにおいても,テンプレート化された3′フラップ配列を標的部位のDNA配列と相同に設計することで,編集を実現するためのDNA修復を容易にしている.一方,LiuグループのtwinPEは前項にあるように,そうした相同なDNA配列を必要としないように設計されていることから,テンプレート配列の柔軟性が高く,かつ,短いRTテンプレートでより大きな挿入を行うことが可能である。

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