CAR-T細胞作製をマウス血中で実現

[NEWS & VIEWS] Olweus J. “Manufacture of CAR-T cells in the body.” Nat Biotechnol. 2017 Jun 7;35(6):520-521.

1.       CAR-T細胞とは

l   CAR-TCARは、腫瘍抗原を認識するモノクローナル抗体の可変領域(Fv:VLVH)で構成する単鎖抗体(scFv)をN末端に、T細胞受容体(TCR)のζ鎖をC末端に結合したキメラ受容体(chimeric antigen receptor)を意味し、CAR-Tは、CARを発現する遺伝子改変T細胞を指す。元々は、ワイツマン研究所の研究チームが1993年に提案:

[総説]中沢洋三「キメラ抗原受容体(CAR)を用いた遺伝子改変T細胞療法」信州医誌 61⑷:1972032013

[論文]Eshhar Z,Waks T,Gross G, Schindler DG. Specific activation and targeting of cytotoxic lymphocytes through chimeric single chains consisting of antibody-binding domains and the gamma or zeta subunits ofthe immunoglobulin and T-cell receptors.Proc Natl Acad Sci U S A. 1993 Jan 15;90(2):720-4.

2.       CAR-T細胞療法の開発

l   CAR-T細胞を利用した癌療法は、2011年のペンシルベニア大学の研究チームによるNew England Journal of Medicine論文を契機として衆目を集め始め、Novartis社、Juno Therapeutics社、Kite Pharma社などで製品開発が進められ、2016年にはFDAカラブレークスルー・セラピーの指定を受けるに至った。現在も100以上の治験が進行中と言われている。

[論文]Porter DL, Levine BL, Kalos M, Bagg A, June CH. Chimeric antigen receptor-modified T cells in chronic lymphoid leukemia.N Engl J Med. 2011 Aug 25;365(8):725-33. Published online 2011 Aug 10.

[ブログ] B細胞白血病/リンパ腫に対するキメラ抗原受容体発現T細胞療法 (CAR-T):最適なCARの選択(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/08/08

3.       CAR-T細胞療法の課題

l   例えば、Kite Pharmaの非ホジキンリンパ腫の一種びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫を標的とする治験における致命的なサイトカイン放出症候群発生に見られる、毒性。

 [ブログ]CAR-T療法の影に光を当てる(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/10/17

l   複雑な(自家(患者)または他家(HLA適合提供者)の末梢血からのT細胞分離〜CAR遺伝子導入〜CAR-T細胞培養増殖〜品質管理〜患者への点滴)手順を実施するために、高度な施設、長時間、そして莫大な経費を要すること。

CAR-T

l   第2の課題は、血中でのCAR-T細胞の作出・増殖を実現できれば解決に近づく。

4.       ポリマー・ナノ担体でCAR遺伝子をT細胞の核へ運び発現させる

l   ナノ担体には、表面に抗-CD3eF(ab)フラグメントに加えて微小管結合配列と核局在シグナル配列が施されており、T細胞への結合と、CAR遺伝子の核への輸送が促進される。

l   CAR遺伝子にはトランズポゾンが融合されており、piggyBacトランスポゼースによってCAR遺伝子がT細胞ゲノムにカットアンドペーストされる。

l   CD19陽性白血病マウスモデルを対象として実証実験

²  CD19 CARをナノ担体でマウスに送達、ex vivo増殖を介する従来法と同等の効力を確認

²  ナノ粒子の多くは肝臓と脾臓の食細胞に取り込まれる。CARsを発現する食細胞の割合は急速に減少するが、CAR-T細胞は増殖する。注目すべきことにこのCAR-T細胞増殖は薬理的に内在リンパ球を排除することなく実現している。

²  []-CD19CAR-Tは正常B細胞も除去するが、CD19陽性B細胞は長期生存には必須ではない。

l   このナノ粒子法のヒトへの展開は、ヒトには内在トランスポゼース活性が存在することからpiggyBacに換えてCRISPR技術などによるCAR遺伝子導入など望ましく、また、組換え部位の検討など、多々検討が必要であるが、今後、安全性と高い費用対効果を証明できれば、患者ごとに固有な腫瘍細胞特異的変異抗原(neoantigens)を標的とする個別化免疫療法の実現に繋がるかもしれない。

[論文] Smith TT, Stephan SB, Moffett HF, McKnight LE, Ji W, Reiman D, Bonagofski E, Wohlfahrt ME, Pillai SPS, Stephan MT. In situ programming of leukaemia-specific T cells using synthetic DNA nanocarriers.Nat Nanotechnol. Published online 17 April 2017.
[レビュー]Cox DB, Platt RJ, Zhang F. Therapeutic genome editing: prospects and challenges.Nat Med. 2015 Feb;21(2):121-31.