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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] REVIEW "The Human Proteoform Project: Defining the human proteome" Smith LM [..] Kelleher NL, The Consortium for Top-Down Proteomics. Sci Adv. 2021-11-12. https://doi.org/10.1126/sciadv.abk0734
[著者の所属] University of Wisconsin, Northeastern University, Institut Pasteur, Consortium for Top-Down Proteomics, University of Wisconsin-Madison, UCLA, Pacific Northwest National Laboratory, Spectroswiss, Northwestern University, Consortium for Top-Down Proteomics

[注] プロテオームとプロテオフォーム [出典のBox. 1から引用]
  プロテオームは,通常,生物が発現するタンパク質の集合体,とされている.しかし,この考え方は「タンパク質」の定義に依存する.1つの遺伝子から生成されるタンパク質であっても,アミノ酸配列や翻訳後修飾 (PTM)は多様であり,様々なproteoforms (プロテオフォーム)を生成するに至る.したがって,プロテオームとは,必然的に,生物が発現するすべてのプロテオフォームの集合体,である.本プロジェクトはこの考え方に基づいてHuma Proteoform Project (以下,HPP)と名付けられた.

 ヒトゲノムプロジェクト (HGP)は,生物学や医学の研究を大きく変え,加速させるとともに,~40億ドルの公共投資を7,000億ドルを超える規模の経済活動や新たな産業に転換させるという,刮目すべき成功をもたらした.しかし,私たちは,HGPの「生命の設計図」を明らかにするという課題を超える課題に直面している.それは,生命の設計図から,設計図が規定する構造と,それらが生物学的システムの中でどのように機能するのかを,理解することである.
2021-11-23 13.39.39 タンパク質は,生物機能の主要な機能因子であるが,タンパク質の構造と機能の豊かさは,遺伝暗号に由来する一次元のアミノ酸配列をはるかに超えている.遺伝的変異,選択的スプライシング,PTMなどが相まって、遺伝子から生み出される多種多様なプロテオフォームが生み出される [Figure 1引用右図参照].
 タンパク質の化学的多様性が,生物を制御する生物学的複合体 (biological complexes)やネットワークの基盤を成しているが,ほとんど明らかにされていない.プロテオフォームの情報は,ゲノム配列だけからは得られず,プロテオフォーム自体を直接解析することでその組成を明らかにし,生物システムにおけるプロテオフォームの空間分布や時間的動態を解析していく必要がある.
 HPPはプロテオフォームの集合体としてのプロテオームを明確にする,すなわち,ゲノムから生成されるプロテオフォームの完全な参照セットを構築する,ことを目指す.ここでは,疾患研究におけるプロテオフォーム・レベルの知識の有効性と重要性を示すいくつかの例を紹介するとともに,HPPの2つの戦略に基づいた技術の向上を呼びかける.

各論
1. 2021-11-23 13.39.53生体機能の理解にはプロテオフォームのレベルでの知識が不可欠
 HPPでは,5つの重要なヒト疾患領域からいくつかの例を取り上げて,疾患と健康におけるプロテオフォームを探っていく(図2引用右図参照)。
2.プロジェクトの中心となる目標と戦略
 医学的に重要なシステムにおけるプロテオフォームレベルの深い分析を追求すると共に,プロテオフォームの探索・解析技術の開発を加速させ,健康なドナーからの検体を用いた大規模なプロテオフォーム解析を展開する.
3.HPP
 包括的なプロテオフォーム解析のための新しい技術を積極的に開発し,ヒトプロテオフォームの広範かつ高品質なアトラスを構築する.ヒトの次世代プロテオミクスは,ゲノムの各遺伝子に対応する約20,000のプロテオフォームファミリーに基づいて行われると,想定している.
4.ヒトプロテオフォームアトラスの構築 [Fig.3 引用左下図参照]
2021-11-23 13.40.21 2021-11-23 13.40.33
 ・細胞をベースとするプロテオフォームの探索
 ・遺伝子をベースとするプロてフォームの探索 [図4 引用右下図参照}
5. 新技術の開発
6. プロテオフォームの探索からプロテオフォームのスコアリングへの転換
7. ヒトプロテオフォームの参照アトラスは新しいレベルの生物医学研究を可能にする [図5引用左下図参照]
2021-11-23 13.40.49 2021-11-23 13.41.02
8. ヒトプロテオフォームプロジェクトと他のプロジェクトとの相乗効果 [図6引用右上図参照]
9. 政府、財団、民間企業の役割
10. まとめ

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