[注] フェリチノファジー: フェリチンに特異的なオートファジーによるフェリチンの分解
[出典] "A neurodegeneration gene, WDR45, links impaired ferritinophagy to iron accumulation" Arino L [..] Shen YA. J Neurochem. 2021-11-27. https://doi.org/10.1111/jnc.15548
 University of Michiganの研究グループからの報告.
 脳の鉄沈着を伴う神経変性疾患 (neurodegeneration with brain iron accumulation, NBIA)のサブタイプの一つとして,近年,β-プロペラタンパク質関連神経変性症(beta-propeller-protein-associated neurodegeneration, BPAN)が同定された.
  • BPANは,WDR45/WIPI4 (WD repeat domain 45)遺伝子のデノボ変異によって引き起こされる.BPAN患者や動物モデルにおいてWDR45が欠損すると,オートファジーのフラックスに不具合が生じる可能性があるが,WDR45欠損が脳の鉄過剰をもたらす機序は不明であった.
  • 研究グループはWDR45の機能解析を目的として,CRISPR-Cas9によりWDR45 をノックアウト (KO)したSH-SY5Y神経芽細胞腫細胞株を作製し,この細胞株を利用して,鉄の蓄積を非トランスフェリン結合鉄の経路が支配していることを明らかにした.
  • さらに,WDR45 のKOが,鉄貯蔵タンパク質であるフェリチンを分解するオートファジーの一形態であるフェリチノファジーに欠陥が生じ,WDR45 KO細胞では,フェリチノファジーの障害が鉄の蓄積に寄与していることを明らかにした.
  • また,鉄の蓄積はミトコンドリアでも見られ,ミトコンドリア呼吸の障害,活性酸素の上昇,細胞死の増加などを伴っていた.
 以上,WDR45が特定の鉄獲得経路とフェリチノファジーの双方と関連していることが明らかになった.