[出典] "Cuba’s bet on home-grown COVID vaccines is paying off" Reardon S. Nature 2021-11-22. https://doi.org/10.1038/d41586-021-03470-x
 COVID-19パンデミック発生時,キューバは他国のワクチン開発を待たずに国産ワクチン開発を決断した.経済封鎖をしている米国からのワクチンも治療法も入手困難であると認識した上のことである.
 現在,キューバでは,Center for Genetic Engineering and Biotechnology (CIGB)が製造しているワクチンAbdala (以下, アブダラ)と,Finlay Institute of Vaccines (以下,FIV)が開発したワクチンSoberana 02 (以下,ソベラナ 02)の接種が進んでいる.また,新たなワクチンの開発も進められている.
 キューバ政府は,7月にアブダラ,8月にソベラナ 02の成人への接種を許可し,その数ヵ月後には医療従事者が両ワクチンを子供にも接種し始めた.11月18日現在で,キューバ国民の89% (2歳の子供を含む)が,アブダラまたはソベラナ 02を少なくとも1回接種している.
 また,ベネズエラ,ベトナム,イラン,ニカラグアへの輸出を開始し,イランとはテヘランのパスツール研究所と提携して24,000人規模の試験を進め,WHOからの新型コロナワクチンとしての承認を求めている.

[アブダラと ソベラナ 2.0の性能]
 CIGBは7月に,48,000人以上の参加者を対象とした第3相試験において,3回接種のアブダラが92%以上の有効性を示したと報告した.また,800万人に2,400万回の投与を行ったとしている.詳細なデータは未公開である.
 ソベラナ2.0については11月に,プレプリントサーバのmedRxiv に2報 [1,2]投稿されている.それらによると,19~80歳の成人14,000人以上が参加した第3相試験にて、2回接種のソベラナ 02の安全性と有効性71.0%を達成した (この性能は,ジョンソン・エンド・ジョンソン社(J&J)やオックスフォード・アストラゼネカ社のワクチンと同レベルである).さらに,この2回接種に,第3回としてソベラナ プラスを接種することで有効性が71.0%から92.4%へと向上したと報告している.
  1. "Efficacy and safety of SOBERANA 02, a COVID-19 conjugate vaccine in heterologous three-dose combination" Toledo-Romani ME [...] García-Rivera D, Vérez-Bencomo V, SOBERANA Phase 3 team. medRxiv 2021-11-06. https://doi.org/10.1101/2021.10.31.21265703 
  2. "Safety and immunogenicity of anti-SARS CoV-2 vaccine SOBERANA 02 in homologous or heterologous scheme" Eugenia-Toledo-Romani M [..] García-Rivera D, Vérez-Bencomo V, SOBERANA Research Group. medRxiv. 2021-11-15. https://doi.org/10.1101/2021.11.14.21266309
[アブダラとソベラナ 02/プラスは統合型 (conjugate)タンパク質ワクチンである]
 アブダラは,キューバが開発し長年使用してきた既存のワクチン (B型肝炎用ワクチン)の技術を応用したもので,酵母細胞を使ってSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン (RBD)の一部を作り出し精製したタンパク質ワクチンである.
 ソベラナ 02は,統合型 (コンジュゲート)ワクチンの技術をCOVID-19に応用して,チャイニーズハムスターの卵巣由来 (CHO)細胞を宿主として生産する.アブダラとは異なるRBDの領域に破傷風毒素タンパク質を結合させたタンパク質ワクチンである.ソベラナ プラスは,RBDタンパク質だけで構成されたタンパク質ワクチンである.
 タンパク質ワクチンは,モデルナやファイザー・ビオンテックなどのmRNAワクチンに対して保存と輸送に極低温を必要としない利点があり,アデノウイルスを利用してRBDの一部の遺伝子を細胞内に導入するアストラゼネカやJ&J社のワクチンに比べて,副作用が少ない可能性がある.
 一方で,CHO細胞や酵母細胞で合成するプロセスに時間を要する課題を伴っている.また,この種のワクチンを接種している場合は,効果が低いことも示唆されている.
 FIVのVérez Bencomo所長は,統合型ワクチン技術は長年にわたり大きな問題を引き起こすことなく利用されてきており,また,小児用ワクチンの開発にも利用されてきたことから,ソベラナ 02/プラスは安全性が高いとし,また子供への接種にも積極的であった (すでに200万人近い子供達に接種されている).

[参考: 日本では]
1. 新型コロナワクチン開発の進捗状況 スクリーンショット 2021-12-05 17.15.16
 厚生労働省のホームページ掲載令和3年12月1日更新版を右図に引用

2. ミッション・インポッシブル
 2020年のマスコミ報道 [*]によると, 大阪府知事は2020年6月17日の記者会見で、「オール大阪で取り組んできたDNAワクチンについて、動物実験で安全性を確認したことから、6月末には大阪市大の医学部付属病院の医療従事者に投与し (第1相試験に相当)、ヒトでの安全性を確認し、10月には数百人規模へと拡大する (第2相試験に相当)」「一般のワクチンとして投与するのは、国の認可を得てから2021年の春から秋を目指す」とした.[*] Yahoo!ニュース 2020-06-17 14:28配信 (THE PAGE).https://news.yahoo.co.jp/articles/a1c58c09fff2f96961afa773853d8fce15a573eb