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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[論文1] 新型コロナウイルスは,スパイクタンパク質におけるL452R変異によって,日本人の約60%が持っている免疫関連分子の認識を免れる
[出典] "SARS-CoV-2 spike L452R variant evades cellular immunity and increases" Momozono C [..] Ikeda T, Nakagawa S, Ueno T, Sato K; The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) Consortium. Cell Host Microbe 2021-06-14.  https://doi.org/10.1016/j.chom.2021.06.006; プレスリリース"ウイルスの感染力を高め、日本人に高頻度な細胞性免疫応答から免れる SARS-CoV-2変異の発見" 東京大学医科学研究所 2021-06-06. https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/content/000004596.pdf
  • スパイクタンパク質のヒト受容体結合ドメイン (Receptor Bingind Domain, RBD)が,日本人の約60%が帯びているHLAの型"HLA-A24"の細胞性免疫によって強く認識される.
  • デルタ株 (B.1.617系統)に見られるL452R変異は,452番目の残基/アミノ酸がロイシン (L)からアルギニン (R)に変異したことを意味し,スパイク (S)タンパク質の中でヒトACE2受容体に結合するドメイン (Receptor Binding Domain, RBD)に位置している.
  • L452R変異はRBDの中でもHLA-A24が認識する配列のモチーフ (Receptor Binding Motif, RBM) [*]内に位置し,新型コロナウイルスにHLA-A24を介した細胞性免疫から逃避する能力を与え,また,感染力も増強させた.すなわち,日本人の半数以上がデルタ株に対抗する武器を一つ失っていることになる.
  • [*] In silico 解析から,Sタンパク質RBDの中で,452の位置を囲む448から456までの残基/アミノ酸からなるRBMの9アミノ酸 NYNYLYRLF(以下, NF9)が,世界的に広く分布し,特に東アジア・東南アジア地域に多いHLA-1アレルであるHLA-A24が提示する潜在的な抗原を決定づける部位 (抗原決定基/エピトープ)であった.さらに,COVID-19患者からの検体を用いた免疫学的解析により,NF9ペプチドがHLA-A*24:02が提示する主要なエピトープであることが示されていた
[論文2] 風邪コロナウイルスに対して生成・記憶され休眠していたキラーT細胞が,新型コロナウイルスで目を覚ます
[出典] "Identification of TCR repertoires in functionally competent cytotoxic T cells cross-reactive to SARS-CoV-2" Shimizu K [..] Fujii S. Commun Biol 2021-12-02. https://doi.org/10.1038/s42003-021-02885-6; プレスリリース "新型コロナウイルスに殺傷効果を持つ記憶免疫キラーT細胞-体内に存在するもう一つの防御部隊-" 理化学研究所 2021-12-08. https://www.riken.jp/press/2021/20211208_1/; YouTube解説動画 6分30秒 https://youtu.be/OuBG3JySa-0
  • In silico 解析により,HLA-A*24:02に親和性の高い6種類のエピトープ候補(それぞれ9個のアミノ酸からなるペプチド)を選択し,実験解析により最も有力なエピトープPep#3,  QYIKWPWYI (以下,QYI)ペプチド,を同定した.
  • QYIペプチドは,HLA-A*24:02を帯びた健常人の末梢血から高確率 (80%)で機能するキラーT細胞を誘導した.
  • QYIペプチドに高い相同性を示すペプチドが他の四つの季節性コロナウイルス (HKU1, OC43, NL63, 229E)にも見られた.
  • ここまでの結果は,季節性コロナウイルス感染から誘導されていた記憶免疫キラーT細胞が,新型コロナウイルス由来のQYIペプチドにも交差反応する可能性を示唆したが,実験的にもそれが裏付けられた.
 [注] 
  • 論文1のNF9ペプチドは,論文2のPep#4に相当する [論文2 Fig. 1-aの表参照]が,論文2ではPep#4を含む候補ペプチドのうちPep#3だけがT細胞応答を引き出した結果がFig 1- bのグラフに明示されている.

 [用語メモ]
  • ヒト白血球抗原 (Human Leukocyte Antige, HLA)は,ヒトのほとんどの細胞と体液に存在する分子であるが,白血球の型として発見されたことからこの名称が付いている.HLAは多数の抗原の組み合わせからなり,特定の組み合わせがHLA型と呼ばれる.HLA型は親子でも異なることがあるが,一定のヒトの集団ごとに型の頻度分布が異なる.また,HLAの型と疾患が相関することも知られている.[参考資料] "HLAとは" HLA Laboratory https://hla.or.jp/about/hla/: HLAの解説に続いて,日本人に多いHLAハプロタイプ上位10位まで,日本列島人における抗原内アレル多型性,HLAと日本人の病気の相関表などがまとめられている.
  • ウイルスや病原微生物などの侵入してくる病原体に対してヒトは免疫を獲得するが,この獲得免疫には,B細胞が生産する中和抗体を介してウイルスの侵入を阻止する液性免疫と,侵入体認識によって活性化されたマクロファージや細胞障害性T細胞 (キラーT細胞)が感染細胞を排除する細胞性免疫の2種類が存在する. 
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