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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[注] プロドラッグとは、投与されると生体による代謝作用を受けて活性代謝物へと変化し、薬効を示す医薬品である [Wikipedia]
[出典] "Genome-editing prodrug: Targeted delivery and conditional stabilization of CRISPR-Cas9 for precision therapy of inflammatory disease" Yan X, Pan Q [..] Ping Y. Sci Adv. 2021-12-08. https://doi.org/10.1126/sciadv.abj0624
 浙江大学の研究グループは,標題を実現するCRISPR-Cas9のプロドラッグナノシステム (NanoProCas9)を開発した.
 CRISPR-Cas9ゲノム編集は,デュシェンヌ型筋ジストロフィー症候群やβ-ヘモグロビン症などの遺伝性疾患の治療に大きな効果を発揮し,さらに,難治性の炎症性疾患の寛解や治療の選択肢としても注目されている.しかし,CRISPR-Cas9システムのAAVによるデリバリーでは,Cas9が肝臓,心臓,脳,筋肉など目的とする臓器以外に蓄積されることが示さるなど,Cas9の非特異的分布による遺伝毒性が懸念されている.Cas9の活性を光や低分子で制御することは可能であるが,光制御は生体組織深部でのゲノム編集に課題が残り,低分子制御は精密な時空間制御に課題が残っている.部位特異的に生体内の特定の生物学的シグナルに反応してCRISPR-Cas9を活性化するNanoProCas9はこれらの課題を解決する.
 NanoProCas9の構成 [Fig. 1引用挿入図上段(A)参照]
  • 核酸を効率的に送達するカチオン性ポリマーであるポリ(β-アミノエステル) (PBAE)を利用して,デグロンとして機能するジヒドロ葉酸還元酵素 (DHFR)ドメインを加えて不安定化 (destabilized)させたCas9 (dsCas9)をコードするプラスミドDNAを送達する.NanoProCas9
  • このPBAE/プラスミド (plasmid)・ナノ複合体の表面をマクロファージ膜 (MM)で被覆する (PPMM)ことで,dsCas9を炎症病変部へと誘導する.さらに,疎水性の尾部を持つ活性酸素種 (ROS)に応答する前駆体分子 (BAM-TK-TMPと呼ぶ)を,マクロファージ外膜に融合させる (PPMMT).
 NanoProCas9による生体内ゲノム編集 [Fig. 1引用挿入図上段(B)参照]
  • 全身投与したNanoProCas9は,生体を模倣した (バイオミメティック)MMによって,炎症病巣に誘導され,前駆体低分子が活性化されて活性型のトリメトプリム (TMP)が放出される.
  • このTMP存在下でdsCas9が安定化し,Cas9ヌクレアーゼ活性ひいてはゲノム編集活性を発揮する.一方で,不活性なBAM-TK-TMPの存在下やTMPの非存在下では,構造的に不安定なdsCas9は速やかにユビキチン依存性プロテアソームに分解され,ヌクレアーゼ活性を失う.
  • なお,治療後に活性酸素レベルが正常になると,NanoProCas9を投与しても編集が行われなくなる可能性がある.TMPは,アデノシン5′-三リン酸 (ATP),酸化還元,pH,酵素など,他の病理学的および生理学的シグナルに反応するように容易にカスタマイズできる.
 NanoProCas9は,特定の病理学的シグナルに反応して病変へとCRISPR-Cas9を効率的に送達することが可能である,加えて,標的に特異的に活性化することから,in vivo での精密ゲノム編集を実現するプロドラッグシステムである.

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