crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典] News & Views "Improving CRISPR tools by elucidating DNA repair - Genome-editing tools are optimized by identifying genes that affect DNA repair" Lim JM, Kim HH (Yonsei University College of Medicine). Nat Biotechnol. 2021-12-06. https://doi.org/10.1038/s41587-021-01149-2
 CRISPR-Casをベースとするゲノム編集ツール (以下,CRISPRツール)は9年前の登場以来から最適化の努力が続けられてきた.これまで主として,多様なCasヌクレアーゼの探索や改変,不活性化したCasヌクレアーゼへの各種酵素の融合,ガイドRNAの設計などによる最適化が試みられてきた,最近,細胞内因子,特にDNA修復に関わる因子,が編集に及ぼす影響の分析と,その結果に基づく最適化の試みが広がってきた.
 Nature Biotechnology 誌に掲載されたKoblanらの論文 [1].およびCell 誌に掲載されたHussmannらの論文 [2]とChenらの論文 [3]は,Repair-seqと呼ばれるCRISPRベースのスクリーニング手法を開発・適用することで、それぞれ,塩基エディター,Cas9ヌクレアーゼ,およびプライム・エディター (PE)による編集結果に影響する細胞内因子を同定した上で,塩基エディター [1]とPE [3]の性能向上につなげた.
 表現型に影響を与える一連の遺伝子を同定することは,CRISPRツールによるスクリーニングの得意技であるが,ゲノム編集は必ずしも表現型の変化を引き起こすとは限らない.Repair-seqでは,細胞集団における塩基配列のディープシーケンシングによって,スクリーニング結果を分析するが,DNAの修復や複製に関わる遺伝子の多くが細胞生存に必須の遺伝子であることから,CRISPR KOスクリーニングではなくCRISPRiを採用する [Fig. 1 参照].
 Repair-seqは,論文 [1-3]で扱われなかった細胞内因子の影響の分析とABEおよび新たに開発されるであろうCRISPRツールの最適化への展開可能であり,また,解析対処の細胞の種類と標的配列を拡充することで,CRISPRツールの編集結果に影響を及ぼす細胞内因子の同定がさらに進むであろう.
 
 [*] 引用論文とそのcrisp_bio紹介記事
  1. Koblan LW et al. "Efficient C•G-to-G•C base editors developed using CRISPRi screens, target-library analysis, and machine learning" Nat. Biotechnol 2021-06-28. https://doi.org/10.1038/s41587-021-00938-z; 2021-07-02 効率の高いトランスバージョン・エディター"CGBE"を,効率に関わる内因性因子の同定を介して実現.https://crisp-bio.blog.jp/archives/26795725.html
  2. Hussmann JA et al. "Mapping the genetic landscape of DNA double-strand break repair" Cell 2021-10-20.  https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.10.002; 2021-06-21/2021-10-21更新 Repair-seq: DNA二重鎖切断 (DSB)の修復結果が拠って来たる遺伝的依存性を特定する.https://crisp-bio.blog.jp/archives/26650878.html
  3. Chen PJ et al. "Enhanced prime editing systems by manipulating cellular determinants of editing outcomes" Cell 2021-10-14. https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.09.018; 2021-10-07/2021-10-14更新 PE4/PE5: プライム・エディティングの効率と忠実度が,ミスマッチ修復過程の阻害によって,目覚ましく向上する.https://crisp-bio.blog.jp/archives/27581421.html
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