(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/25

  • CAR(Chimeric Antigen Receptor)T細胞による養子免疫細胞療法は、B細胞白血病/リンパ腫の治療に目覚ましい効果を示したが、その固形がん治療への展開は一筋縄ではいかない.
  • FDAに抗がん剤として認可されたモノクローナル抗体と臨床試験が進んでいるCARsについて、その作用機序を分析し、固形がんへの適用にあたり、改変T細胞には正常細胞をオンターゲットとして認識することによる致死毒性が潜在し、真に腫瘍特異的でかつ種々の固形がんに共通な抗原は数少ない、といった限界を指摘.
    • 安全性と組織特異性を向上させる手法をレビュー(自殺遺伝子の導入、受容体活性化の時空間制御、抗原受容体のRNAエレクトロポレーションによる発現時間の制限)
    • がん患者に特有の体細胞変異の免疫原生産物(neoantigens)を標的とする免疫療法(患者末梢血からのneoantigens同定法;neoantigensに反応するT細胞の作出法;患者および組織内のがん細胞の多様性への対処)
  • CD19特異的CARsは血液がんに対して著効を示す一方で、正常なB細胞に対して毒性を示すが、ほとんどの患者がIg補充によって生存可能である.しかし、血液がんで成功したこの療法をそのまま固形がんに展開すると、生存に必須の正常組織の破壊を引き起すであろう一人一人の患者のがんにユニークな責任遺伝子のセットを標的とする困難な課題に取り組んでいくところから、固形がんのT細胞免疫療法が実現するであろう.

2017/07/12追記(関連ブログ記事へのリンク)