[注] V-SYNTHES: virtual synthon hierarchical enumeration screening
[出典] "Synthon-based ligand discovery in virtual libraries of over 11 billion compounds" Sadybekov AA, Sadybekov AV, Liu Y [..] Roth BL, Makriyannis A, Katritch V. Nature 2021-12-15. https://doi.org/10.1038/s41586-021-04220-9; NEWS "Now scientists can efficiently screen billions of chemical compounds to find effective new drug therapies" Joy DS. USC Dornsife News. 2021-12-15. https://dornsife.usc.edu/news/stories/3599/v-synthes-computational-chemistry-drug-discovery/
 University of Southern California, University of North CarolinaおよびNortheastern Universityに,
Enamine Ltd (Ukraine),Chemspace LLC (Ukraine),およびTaras Shevchenko National University of Kyivの研究グループからの論文:
 標的タンパク質の構造をベースとするリガンドのバーチャルスクリーニングが,高分解能な構造情報と超大規模な化合物ライブラリーを利用できることから,短期間での創薬への鍵を握るパラダイムとして台頭しつつある.このため,シントンと呼ばれる数十万規模の'部品'の組み合わせで構築可能になった'容易に合成可能な化合物 (Ready Available for synthesis, REAL)'のバーチャルなコンビナトリアル・ライブラリーの急拡大 [*]に後れを取らないようなスクリーニング法が必要になってきた.
  • 研究グループが今回開発したモジュラー型シントン  (synthon)をベースとするV-SYNTHESは,110億以上の化合物を含むREALライブラリーの化合物空間 (REAL Space)を対象に,標的の構造をベースとした階層的スクリーニングを実行する.
  • V-SYBTHESは,REAL Space内の膨大な数の完成した形の分子を対象にするのではなく,はるかに小規模なシントンのライブラリから,標的タンパク質のポケットの一部に適合するシントンを特定することから始めて,他の部分に適合するシントンをクリック・評価・選択する操作を繰り返して,標的タンパク質とのドッキングスコアが最高な完成した化合物に至る.
  • この階層的なコンビナトリアル・アプローチにより,膨大な化合物のライブラリーのごく一部(<0.1%)のドッキングを実行しながら,ギガ・スケールの化学物空間でドッキング・スコアが最も高い化合物を,従来のREAL Space探索法が必要とする時間と計算機資源のごく一部で,発見することを可能にした.
  • V-SYNTHESの実証実験を,Enamine Ltdが開発したREAL シントン・ライブラリを対象とする新規カンナビノイド拮抗薬スクリーンで行った.
  • 化学合成と実験検証の結果,14種類のサブミクロ以下のリガンドが含むヒット率33%を達成した.この結果は,約100倍の計算資源と5,000倍の時間を必要とした標準的なバーチャル・スクリーニングを大幅に上回っていた.
  • 合成したベストヒットのアナログは,効力と受容体のCB2/CB1選択性が,それぞれ,阻害定数(Ki) 0.9nMと50~200倍,へと向上し,標準的なスクリーンで示唆される拮抗薬候補の2倍以上の性能を示した.
  • V-SYNTHESは,癌に関連するROCK1阻害剤のスクリーンにおいても高性能を示した.
 V-SYNTHESは,コンビナトリアル・ライブラリーの拡張に迅速に対応可能であり,また,あらゆるドッキング・アルゴリズムの適用が可能である.

[*]
 責任著者の1人であるVsevolod Katritchは,「REAL Spaceは,わずか1年間で210億種類の化合物へと倍増した.今後,これまで対象とされてきた2〜3シントンだけでなく4〜5シントンの組み合わせからなる分子にまで拡大されると,その組み合わせでREAL Spaceは数千億,数兆の規模にまで容易に膨張するであろう」とコメントした.