Norwegian Institute of Public Health (ノルウェー公衆衛生研究所)を主とするグループからの報告
[出典] "Outbreak caused by the SARS-CoV-2 Omicron variant in Norway, November to December 2021" Brandal LT, MacDonald E et al. Eurosurveillance. 2021-12-16. 2021年11月26日に開催された会社のクリスマス・パーティーでCOVID-19クラスターが発生した.11月30日に感染が判明した後,パーティーの参加者全員が10日間の自宅での自己検疫と,直ちにPCRテストを受けることを要請された.
- 117名の参加者のうち111名 (95%)がインタビューに応じた.回答者の平均年齢は39歳 (26〜68歳)で,48人 (43%)が女性であった.回答者の96% (107人)がワクチン接種を完了しており,その89% (99%)がmRNAワクチンを2回接種していた.ブースター接種例は無かった.また,すべての回答者が,イベント参加前1-2日以内に,自宅での迅速抗原自己検査またはPCR検査を行い,陰性であったと回答した.8人 (7%)の回答者はCOVID-19感染歴があったが,過去4ヶ月内の感染例はゼロであった.
- 111人のうち,66人 (59%)がオミクロン株確定症例 (ゲノムシーケンシグに基づく26人とPCR VOCスクリーニングに基づく40人)であり,15人 (14%)がPCR陽性のみの症例判定であった.PCR陽性者1名は後にデルタ株に感染が確定し,解析から除外した.
その結果,オミクロン感染の総発生率は74% (81/110)となった [論文挿入図を右図に引用]。症例の平均年齢は38歳 (26-61歳)で35人 (43%)が女性であった.残りの29名の参加者は2021年12月13日までにPCR陰性であった.
- パーティー会場での感染拡大を想定すると,有症状者の潜伏期間は中央値は3日 (0〜8日; 挿入図参照)であった.なお,デルタと非デルタの場合の潜伏期間中央値はそれぞれ4.3日と5日であった.症状の重症度を1 (症状なし)から5 (著しい症状)のレベルで自己評価してもらったところ,42% (33/79人)がレベル3,11% (9/79人)がレベル4と回答した.2021年12月13日までに入院を必要とした症例は無かった.
- 7例は7日以内の海外渡航を報告し,アフリカが3例,ヨーロッパが4例であったが,パーティーの前の期間に症状を訴えた症例はなかった.
- 回答者110名のうちほぼ全員 (104人; 95%)がパーティーの前の週に職場にいたと回答し,96人 (87%)がオフィスを共有していた.
- 症例 (n = 79; 98%)と非症例 (n = 27; 93%)のほとんどが完全なワクチン接種を受けており,最後のワクチン接種からの期間の中央値は症例が79日,非症例が87日であった(統計的な有意差は無い).2回のワクチン接種を受けた症例では55% (41/75)がファイザー・ビオンテック,23% (17/75)がモデルナであった.ワクチンを2回接種し非症例であった25名のうち7名がファイザー・ビオンテック,12名がモデルナであった.
- なお,調査中および12月13日現在,会場で感染した可能性のある他の宿泊客を70人近く特定し,そのうち53人 (76%)がオミクロン感染と判定された [注: クリスマス・パーティーは約145平米の部屋で18:00から22:30まで行われ,その部屋が22:30から03:00まで一般客に公開されていた]
まとめ
- 迅速な検出と接触者追跡、隔離、検疫措置の組み合わせにより、短期的には流行の拡大を抑えることができたと思われるが,今後,参加者の追跡調査と,二次感染の追跡調査を継続する.
- ほぼすべての参加者がCOVID-19ワクチンを少なくとも1回接種しており、大多数がイベント前に完全なワクチン接種と抗原検査を受けていたことから,オミクロン感染抑制にはブースター接種が必要と考えられる.
- 症状が出た場合は,原因にかかわらず,自宅待機の必要性について,さらにコミュニケーションを強化することが重要である.
- この事例は,感染リスクの高い環境 (屋内,長い曝露時間,混雑,大声など)でのアウトブレイクという特殊な状況であったことに留意して,結果を解釈していく必要がある.
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