[出典] "Mechanics of CRISPR-Cas12a and engineered variants on λ-DNA" Paul B, Chaubet L, Verver DE, Montoya G. Nucleic Acids Res. 2021-12-24. https://doi.org/10.1093/nar/gkab1272
CRISPR-Casシステムのエフェクターの中で,クラス2タイプVシステムに属するCas9が最も広く利用されてきた.しかし,その有効性と汎用性にもかかわらず,毒性および変異原性の可能性による限界も見えてきた [*1, *2].そこで,新たなCRIPSR-Casシステムの探索や作出に関心が向き,近年,クラス2タイプVの他のメンバー (Cas12a, Cas12b, CasΦ, Cas12g, Cas14)の研究と利用が広がってきた
.

University of CopenhagenとLUMICKSの研究グループは今回,張力を加えた標的DNAに対するヌクレアーゼ活性を解析することで,Cas12aの柔軟性を探った.λ-DNA上の標的部位を選択し,光ピンセットで張力を加えたDNAへの結合とホスホジエステル加水分解を,共焦点顕微鏡を介してリアルタイムで解析した [Figure 1引用右図参照].
Cas12a野生型の場合 [Figure 7引用下図左参照]
Cas12a変異型の場合
これまでのCas12aの構造機能解析から,リンカー (linker),リッド (lid)およびフィンガー (finger)と呼ばれる3つの領域が,Cas12aの主要なキャビティーに沿って,crRNAとcrRNAの標的鎖 (TS)のハイブリッド形成を監視するチェックポイントネットワークを形成することが報告されている [*3のFigure 4 参照].
- フィンガーの変異はCas12aを不溶化することから,リンカーとリッドに変異を導入し,生物医学や診断への応用の可能性を示唆する変異体を同定した [Figure 8引用右上図参照]:
- リンカーに変異を帯びた変異体のCas12a_M1は,crRNAに相補的なオリゴヌクレオチドで活性化後,無差別なssDNA切断活性だけを示した.
- リッドに二重の変異を帯びた変異体のCas12a_M2は,標的dsDNAを切断したが,無差別なssDNA分解活性は示さなかった.
- リッドに二重の変異を帯びた変異体Cas12a_M3は,標的dsDNAにニックを誘導した.
[参照論文とcrisp_bio記事]
- CRISPR-Cas9が誘導するDSBは,大規模な染色体短縮をもたらす.https://crisp-bio.blog.jp/archives/16180643.html; "CRISPR-Cas9 genome editing induces megabase-scale chromosomal truncations" Cullot G, Boutin J [..] Moreau-Gaudry F, Bedel A. Nat Commun. 2019-03-08. https://doi.org/10.1038/s41467-019-09006-2
- [20201212更新] ヒト胚CRISPR-Cas9遺伝子編集により染色体大混乱.https://crisp-bio.blog.jp/archives/23446874.html
- "Conformational Activation Promotes CRISPR-Cas12a Catalysis and Resetting of the Endonuclease Activity." Stella S, Mesa P [..] Hatzakis NS, Montoya G. Cell. 2018-11-29. https://doi.org/10.1016/j.cell.2018.10.045
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