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[注] PEの模式図参照スクリーンショット 2021-10-15 11.50.07
[出典] NEWS & VIEWS "Plant prime editing goes prime" Sretenovic S, Qi Y (U Maryland). Nat Plants. 2021-12-23. https://doi.org/10.1038/s41477-021-01047-0; Figure 1 参照; 論文 "A design optimized prime editor with expanded scope and capability in plants" Xu W, Yang Y [..] Zhao J, Yang J. Nat Plants. 2021-12-23. https://doi.org/10.1038/s41477-021-01043-4 (著者所属機関: 北京市農林科学院, 北京大学,西南大学,およびGeorgia Institute of Technology & Emory University)
 植物のプライム・エディティングにはこれまでPE2とPE3が試行されてきた.PE2では,Cas9(H840A)ニッカーゼ (Cas9n)に人工のモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(M-MLV-RT)が融合され,pegRNAは,目的とする編集をコードする逆転写 (RT)テンプレートの3′拡張領域とプライマー結合部位 (PBS)で構成される.PE3では,ヒト細胞で実証されたように,第2のガイドRNA (gRNA)を追加して,非編集DNA鎖のニッキングを介してDNA修復を促し,プライム編集効率を高めている [NEWS & VIEWS Fig. 1 a 参照].しかし、PE2およびPE3は植物での編集効率が低く (ほとんどの場合 2%未満),相同組み替え修復 (HDR)を介した遺伝子ターゲッティングに対する優位性を示すに至っていなかった.
 Nature Plants 論文の著者らは,PEを植物ゲノム編集に最適化することを目的とするPE3をベースにCas9nのC末端にM-MLV-RTを融合したPE-P2とCas9H840AのN末端にM-MLV-RTを融合したPE-P3 [論文 Fig.1 参照],および,1塩基置換 (RT-S)または複数塩基置換 (RT-M)を含むRT配列を持つpegRNAの組み合わせをイネとトモロコシで評価した.
  • イネでは,PE-P3 とRT-MペグRNAを組み合わせ (PE-P3-RT-M)によって,遺伝子組み換えイネのプライム編集効率が劇的に向上し,13種類の標的部位において高い編集頻度 (平均24.3%)が実現したが,他の3つの組み合わせ (PE-P2-RT-S, PE-P2-RT-M, PE-P3-RT-S)のプライム編集は極めて低頻度であった.
  • トウモロコシでは,PE-P3-RT-MとPE-P2-RT-Sのシステムを比較し,PE-P3-RT-Mがトウモロコシのプロトプラストにおいて,4つの標的部位で平均6.2%の編集効率を示し,PE-P2-RT-Sに優ることを確認した.
 すなわち,PE-P3-RT-Mシステムが,イネとトウモロコシの双方で,そのレベルに差はあるが,プライム編集効率を向上させる相乗効果があることが示唆された.
 ヒトHEK293T細胞においてもこの「相乗効果」を評価し,イネとトウモロコシと同様に, RT-M pegRNAがRT-S pegRNAに優ることを見出した.ただし,HEK293細胞におけるRT-Mの効果は,植物細胞とは異なりPE-P2型とPE-P3型の双方に共通であった.
 著者らは「相乗効果」の他に,pegRNAによるニッキング・サイトの下流+1〜+6位で編集が進行する標的 (タイプI)と,6塩基以上下流で編集が進行する標的 (タイプII)に分類されることを発見し,植物向けのPEには,タイプIの標的を持つpegRNAを設計することが望ましいことを明らかにした.
 2021年に入ってPEの性能向上を実現した論文が続いている.これらの論文の手法をRT-M pegRNAに組み合わせることで,植物PEのさらなる効率向上を実現できる可能性がある.
 [PE改良論文]
  1. 2021-03-28 植物のプライム・エディティングの効率をpegRNAの最適設計と二重化によって〜17倍向上.https://crisp-/archives/25940220.html; "High-efficiency prime editing with optimized, paired pegRNAs in plants" Lin Q, Jin S, Zong Y, Yu H [..] Li J, Gao C. Nat Biotechnol. 2021-03-25. https://doi.org/10.1038/s41587-021-00868-w
  2. crisp_bio 2021-11-05 プライムエディディング (PE)の効率と精度の向上を,pegRNAのペアを利用することで実現.https://crisp-bio.blog.jp/archives/27827475.html; "Increasing the efficiency and precision of prime editing with guide RNA pairs" Zhuang Y, Liu J, Wu H [..] Yi C. Nat Chem Biol 2021-10-28. https://doi.org/10.1038/s41589-021-00889-1
  3. "Enhancing prime editing by Csy4-mediated processing of pegRNA" Liu Y, Yang G, Huang S [..] Huang X, Wang X. Cell Res 2021-06-08. https://doi.org/10.1038/s41422-021-00520-x
  4. crisp_bio 2021-12-12 Twin PEと部位特異的リコンビナーゼにより,大規模なDNAの欠失,置換,挿入,および逆位を実現.https://crisp-bio.blog.jp/archives/27898465.html; "Programmable deletion, replacement, integration and inversion of large DNA sequences with twin prime editing" Anzalone AV, Gao XD, Podracky CJ [..] Liu DR. Nat Biotechnol 2021-12-09. https://doi.org/10.1038/s41587-021-01133-w
  5. crisp_bio 2021-10-15  PE4/PE5: プライム・エディティングの効率と忠実度が,ミスマッチ修復過程の阻害によって,目覚ましく向上する.https://crisp-bio.blog.jp/archives/27581421.html; "Enhanced prime editing systems by manipulating cellular determinants of editing outcomes" Chen PJ, Haussmann JA [..] Adamson B, Liu DR. Cell. 2021-10-14. https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.09.018
 [PEによる植物を対象とするスクリーニングへの応用]
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