2020-01-10 論文のステータスとしては依然としてプレプリントであるが,medRxiv から公開された.
論文タイトルに変更なし,medRxiv. 2022-01-03. https://doi.org/10.1101/2022.01.03.21268111
2022-01-01 初稿
[出典] "The hyper-transmissible SARS-CoV-2 Omicron variant exhibits significant antigenic change, vaccine escape and a switch in cell entry mechanism" Willets BJ et al. COVID-19 DeplOyed VaccinE (DOVE) Cohort Study investigators, The COVID-19 Genomics UK (COG-UK) Consortium, the G2P consortium and the Evaluation of Variants Affecting Deployed COVID-19 Vaccines (EVADE) investigators. https://www.gla.ac.uk/media/Media_829360_smxx.pdf [プレプリント]
論文タイトルに変更なし,medRxiv. 2022-01-03. https://doi.org/10.1101/2022.01.03.21268111
2022-01-01 初稿
[出典] "The hyper-transmissible SARS-CoV-2 Omicron variant exhibits significant antigenic change, vaccine escape and a switch in cell entry mechanism" Willets BJ et al. COVID-19 DeplOyed VaccinE (DOVE) Cohort Study investigators, The COVID-19 Genomics UK (COG-UK) Consortium, the G2P consortium and the Evaluation of Variants Affecting Deployed COVID-19 Vaccines (EVADE) investigators. https://www.gla.ac.uk/media/Media_829360_smxx.pdf [プレプリント]
オミクロン株は変異株の中でも多数のアミノ酸変異を帯びており,最も初期のWuhan-Hu-1株と配列を比較すると,30個のアミノ酸置換がスパイクタンパク質で起きており,そのうち15個が,液性免疫 (中和抗体)の回避に強く関連する領域である受容体結合ドメイン (RBD)に生じている.
MRC-University of Glasgow Centre for Virus Research, University of Glasgowなどの研究グループは今回,ファイザー・ビオンテックのBNT162b2,アストラゼネカのChAdOx1,モデルナのmRNA-1273のワクチンの2回接種者の中和抗体反応がオミクロン株に対して著しく低下するという結果と共に,オミクロン株は,D614G株,アルファ株およびデルタ株と異なる経路で細胞へ侵入するという興味深い結果を報告した.また,オミクロン株の細胞融合性 (fusogenicity)について,これまで高いとする報告と低いとする報告が出ていたが,合胞体細胞 (cell syncytia)形成を,分割したGFPが細胞融合によって復旧する実験に基づいて観察し,オミクロン株の細胞融合性は,D614G株とデルタ株よりも低いとした [プレプリントのFigure 5参照].
[細胞侵入経路]
研究グループは,SARS-CoV-2のこれまでのすべての変異株が細胞侵入時に利用しているTMPRSS2を介した細胞表面融合よりはエンドソーム融合を好むことを見出した.
SARS-CoV-2を含むコロナウイルスの細胞侵入の経路については元々2種類知られていた.一つは,ACE2に結合後にプロテアーゼTMPRSS2によるタンパク質サブユニット分解後に細胞表面融合していく経路 (以下,T経路; 挿入図参照)であり,もう一つが,ACE2に結合後にエンドサイトーシスの機構とエンドソームプロテアーゼであるカテプシンBまたはLにより活性化されるエンドソームからの融合の経路 (以下,C経路)である.オミクロン株は,他の株がT経路で細胞に侵入するのに対して,もっぱらC経路で細胞に侵入することが示された.
- 一連の実験の中で,A549 ACE2 TMPRSS2細胞株において,オミクロン株以外の株の感染は,TMPRSS2阻害剤カモスタットによって強力に阻害され,カテプシン阻害剤E4dでは阻害されなかったのに対して,オミクロン株はカモスタットで阻害されずE4dで阻害された.
- オミクロン株がTMPRSS2による活性化から独立な経路でヒト細胞に侵入する機構は,オミクオロン株がヒト細胞に感染する際に,合胞体細胞の形成が他の株に劣るとした同研究グループの観察結果と整合する.
[オミクロンの特性解析に関する論文とプレプリント紹介crisp_bio記事]
- オミクロン株は,中和抗体 (液性免疫)を免れるが,T細胞応答 (細胞性免疫)まで免れることはできない (プレプリント2報) https://crisp-bio.blog.jp/archives/28292787.html
- オミクロン株の伝播力はデルタ株の3~5倍あるが,病原性は低い - 細胞とハムスターでの実験から.https://crisp-bio.blog.jp/archives/28259824.html
- オミクロン株はデルタ株と比べて,免疫回避能が高く,病原性は低い - 気道オルガノイド,シュードウイルス,構造解析などをベースにして.https://crisp-bio.blog.jp/archives/28265362.html
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