[出典] "CRISPR/Cas-Based Genome Editing for Human Gut Commensal Bacteroides Species" Zheng L, Tan Y [..] Dai L. ACS Synth Biol. 2022-01-06. https://doi.org/10.1021/acssynbio.1c00543
 バクテロイデス属は,ヒトの腸マイクロバイオームlに最も多く存在し,腸マイクロバイオームの機能や生態を研究するためのモデル微生物としてますます利用されるようになってきている.しかし,このような腸内常在菌のためのゲノム編集ツールは確立されて来なかった.
 中国科学院深圳先进技术研究院を主とする研究グループは今回,ヒト腸内のバクテロイデス種においてマーカーレスで遺伝子欠失・挿入が可能で高効率なCRISPR/Casベースのゲノム編集ツールを開発した.
  • 複数のCRISPR/CasシステムをオールインワンのBacteroides - E. coli シャトルプラスミドに構築し,Bacteroides thetaiotaomicron のゲノム編集効率の,Casタンパク質発現の様式 (構成的か一時誘導的か),異なるCasタンパク質 (FnCas12a, SpRY, またはSpCas9),およびsgRNAへの依存性を体系的に解析した.
  • アンヒドロテトラサイクリン (aTc)で誘導するCRISPR/FnCas12aシステムを利用して,50kbまでの大きなゲノム断片の削除と,代謝遺伝子クラスターの機能解析を実現した.
  • さらに,Bacteroides fragilisBacteroides ovatusBacteroides uniformis,Bacteroides vulgatus など、複数のヒト腸内バクテロイデス属の遺伝子操作にCRISPR/FnCas12aを適用できることを示した.
 研究グループは,CRISPR/Casを用いたバクテロイデス属のゲノム編集ツールは,腸内常在菌のメカニズム研究や人工生体治療薬の開発を大きく促進できると考えている.