[注] PSTK (phosphoseryl-tRNA kinase/ホスホセリルtRNAキナーゼ ); HCC (Hepatocellular carcinoma/肝細胞がん)
[出典] "CRISPR screens uncover protective effect of PSTK as a regulator of chemotherapy-induced ferroptosis in hepatocellular carcinoma" Chen Y, Li L, Lan J [..] Lou H, Liang J. Mol Cancer 2022-01-04. https://doi.org/10.1186/s12943-021-01466-9
 Peking University Cancer Hospital and Instituteと生物物理研究所 (北京)などの研究グループは,方法
HCC細胞の18,053個のタンパク質コード化遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9 KOスクリーニングにより,これらの細胞における化学療法関連の合成致死遺伝子を同定した.合成致死遺伝子の相乗効果をin vitro およびin vivo 解析で,その分子機構をRNA-seqおよびメタボロミクス解析で探索した.また、ハイスループットなバーチャルスクリーニングにより,同定した遺伝子を標的の阻害剤を同定した.
  • PSTKを阻害すると,化学療法に対するHCC細胞の感受性が高まることを明らかにした.
  • PSTKは,化学療法が誘導するフェロトーシス (ferroptosis)を抑制し,PSTKの枯渇が,セレノシステインおよびシステイン合成の阻害によるグルタチオン過酸化 4(GPX4)の不活性化およびグルタチオン(GSH)代謝の阻害をもたらし,ひいては,化学療法によるフェロトーシスを亢進することが明らかになった.
  • B 型肝炎ウイルス (HBV)の治療薬であるプニカリンを PSTK 阻害剤として同定し,in vitro および in vivo でソラフェニブと併用することにより、肝細胞癌の治療に相乗的な効果を発揮することを明らかにした.
PSTK阻害剤は,HCCにおける薬剤耐性を克服するための理想的な候補となり得る.