[出典] REVIEW "Delivery of CRISPR-Cas tools for in vivo genome editing therapy: Trends and challenges" Taha EA, Lee J, Hotta A (京都大学CiRA). J Control Release. 2022-01-10. https://doi.org/10.1016/j.jconrel.2022.01.013; Graphical abstract https://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S016836592200027X-ga1_lrg.jpg [右図参照]
CRISPRゲノム編集技術によって複数の疾患の治療に汎用的な手法の開発が可能になり,これまでに,多くの前臨床試験や臨床試験で有望な結果が示されてきた.しかし,生体内ゲノム編集療法にとって,安全で効果的なゲノム編集システムのデリバリー法が依然として重要な課題である.
遺伝子治療にはアデノ随伴ウイルス (AAV)がデリバリー用に最も広く利用されてきたが,そのキャプシドに対する免疫原性,高用量での肝毒性,Cas9の長期的発現に伴うオフターゲット変異誘発,および,宿主ゲノムへの統合による潜在的なゲノム毒性の課題が未解決のままである.これらの課題を,最近開発されたウイルス様粒子 (VLP)や脂質ナノ粒子 (LNP)などによる一過性デリバリー法によって,解決できる可能性がある.
このレビューでは、既存の生体内デリバリー法とその限界を克服するための可能な解決策を要約している.また,現在進行中の生体内ゲノム編集治療の臨床試験と、最近開発されたゲノム編集ツールの応用の可能性についても言及し,塩基エディター,プライムエディターおよびエピゲノム編集にはカスタム最適化が必要なことを指摘する.
[構成]
1. はじめに
2.1. CRISPR-Casカーゴ3種類: DNA; mRNA; RNP
2.2. キャリア3種類 [Fig. 1 右図参照]
3. 生物学的デリバリー (ウイルスベクター,ウイルス様粒子/VLPs, 膜透過性ペプチド/CPPs)
3.1. ウイルスベクター
3.2. アデノ随伴ウイルス (AAV) ベクター
3.3. AAVベクターの臨床応用
3.4. AAVベクターの限界 [Fig. 2]
3.5. アデノウイルス (AdV) ベクター
3.6. レンチウイルス (LV) ベクター
3.7. VLP [Fig. 3]
3.8. CPPと核局在化シグナル
4. 化学的デリバリー法
4.1. 金ナノ粒子
4.2. ポリマーと脂質をベースとするナノ粒子 [Fig. 4]
5. 物理的デリバリー法
5.1. エレクトロポレーション
5.2. マイクロインジェクション
5.3. 超音波と微小気泡をベースとするソノポレーション
6. 生体内デリバリーに関する残された課題と限界
6.1. 反復投与とキャリアまたはCas9に対する免疫 [Fig. 5]
6.2. スケーラービリティーと生物種依存性 [Fig. 6]
6.3. 相同組み換え修復 (HDR)による編集に伴う変異と低効率 - NHEJとの比較
6.4. 宿主ゲノムへの統合,オフターゲット編集のリスク,およびオンターゲットでの望ましくない変異
7. 新たなゲノム編集ツール
7.1. 塩基エディター (BE)
7.2. プライムエディター (PE)
7.3. エピゲノムエディター
8. まとめ
[VLP関連crisp_bio記事]
- 2022-01-15 治療用タンパク質の生体内への効率的な送達を実現するウイルス様粒子を開発.https://crisp-bio.blog.jp/archives/28405766.html
コメント