1.       CRISPR-dCas9により選択的かつ可逆的クロマチンループ形成を実現

[出典]Morgan SL Wang KC (Stanford U). “Manipulation of nuclear architecture through CRISPR-mediated chromosomal looping” Nat Commun. 8, Article number: 15993. Published online:13 July 2017
  • 2遺伝子座を可逆的に並置(図1-a)させるツールCLOuD9を、CRISPR-dCas9技術と、哺乳類細胞には存在しない植物のアブシン酸(S-(+)-abscisic acidABA)ストレス応答シグナル伝達経路に倣った化学誘導接近(Chemically induced proximityCIP)技術を組み合わせて実現
  • 1-bにあるように2種類のCLOuD9コンストラクト、gRNA-SpdCas9-PYL1(CSP)gRNA-SadCas9-ABI1(CSA)、をレンチウイルスで送達後、ABAを加えることでPYL1ABI1の結合を誘導し、CSPの標的遺伝子座とCSAの標的遺伝子座を近接させ、ABAをウオッシュアウトすることで、2遺伝子座は内在状態へと戻る。CLOuD9
  • 発生段階に応じてサブユニットをコードする遺伝子群が変化していくことが知られているβグロビンの遺伝子座制御領域(Locus Control Region: LCR)を標的として、K562細胞とHEK293細胞で実証


2.       逆転写酵素(RTs)を介したRNA断片獲得機構を伴うCRISPR-Casシステムの進化系統解析

[出典]Silas S Koonin EV (NCBI), Fire AZ (Stanford U). “On the Origin of Reverse Transcriptase-Using CRISPR-Cas Systems and Their Hyperdiverse, Enigmatic Spacer Repertoires.” mBio 2017 Jul 11;8(4):e00897-17.
  • Cas1インテグラーゼはCRISPR Cas獲得免疫システムにおいて、外来DNAから獲得したスペーサをCRISPRアレイに組み込む鍵となる酵素であるが、隣接したグループⅡイントロン関連逆転写酵素(RTs)と融合している例が存在するが、最近RT-Cas1融合蛋白質がRNAからスペーサを獲得することが見出された。
  • 進化系統解析によるとRTCas1のドメインは共進化し、RTはほとんどのタイプⅢ CRISPR Casシステムに存在するが、その進化系統分類体系はCRISPR Casのタイプの分類体系には沿っていない。
  • 産業上有用なシアノバクテリアArthrospira platensisにはRT-Cas1を伴うタイプⅢシステムとRTを欠いているタイプⅢシステムが共存しており、双方のシステムで獲得スペーサ群を解析したところ、RTを欠いたシステムのスペーサには相当する既知のウイルスまたはバクテリアの遺伝子が存在したが、RTを伴うシステムのスペーサに相当する遺伝子を網羅的な遺伝子データベースからも見いだすことができなかった。