1.CRISPR/Cas9ツールによる麹菌におけるコウジ酸合成遺伝子kojA, kojR, kojTの一重,二重,三重変異体の構築
[出典] "Construction of single, double, or triple mutants within kojic acid synthesis genes kojA , kojR , and kojT by the CRISPR/Cas9 tool in Aspergillus oryzae   " Li Y, Zhang H, Chen Z, Fan J, Chen T, Zeng B, Zhang Z. Folia Microbiol. 2022-01-15. https://doi.org/10.1007/s12223-022-00949-6
 麹菌のコウジ酸生産効率向上には,コウジ酸合成機構を構成するい遺伝子の機能解析が必要であるが,麹菌は多核菌であり,また,優れた選択マーカーが少ないため,コウジ酸合成遺伝子の多遺伝子同時ノックアウト変異体が限られていた.
  • 江西科技師範大学に園芸研究所 (南昌市)と深セン技術大学が加わった研究グループはまず,先行研究で構築した CRISPR/Cas9 システムにより kojA , kojR , kojT の単一変異体を得ることに成功した,
  • 次に、AMA1を用いて麹菌にて多重遺伝子編集を行うゲノム編集系を開発した.このシステムでは,2つのガイドRNA発現カセットがタンデムにライゲーションされ,2つのU6プロモーターによって,Cas9発現カセットを帯びたAMA1ベースの自律複製プラスミドが駆動される.
  • さらに,コウジ酸合成遺伝子kojA kojR kojT をターゲットにした多重遺伝子編集を試みた結果,kojA kojR kojT 内の二重および三重変異体を得ることに成功した.
  • さらに,kojA kojR kojT の一重および三重変異体において選択マーカーpyrGをノックアウトし、従属栄養株を得た.
 これにより,kojA kojR , およびkojT  の一重および三重変異体に標的遺伝子を導入し,それらの関係性を検討することが可能になった.

2. 麹菌の新規遺伝子Aokap2 は,麹菌の成長とコウジ酸産生を目的とする遺伝子改変の標的になる
[出典] "Overexpression of a novel gene Aokap2 affects the growth and kojic acid production in Aspergillus oryzae " Li Y, Zhang H, Chen Z [..] Zeng B, Zhang Z. Mol Biol Rep 2022-01-16. https://doi.org/10.1007/s11033-021-07084-4
 2005 年に麹菌の全ゲノム配列が決定されたが,麹菌の生育や二次代謝産物に影響を与える遺伝子の解析は不十分のままであった.江西科技師範大学, 園芸研究所 (南昌市)と深セン技術大学の研究グループは今回,先行研究での麹菌の発生過程におけるトランスクリプトミクスからそれまで未知であったAokap2    遺伝子発現が麹菌の発生過程で抑制されていることを発見していた.
 研究グループは今回,その遺伝子発現パターンを qRT-PCR により検証した.系統解析の結果,AoKAP2 は Aspergillus の種特異性を持っていることが明らかになった.また,麹菌 amyB プロモーターによるAokap2 の過剰発現株およびCRISPR/Cas9遺伝子編集で作出した変異体での実験から,新規遺伝子Aokap2 が麹菌の生育に関与し,Aokap2 の過剰発現がlaeA および kojA の発現に影響を与えることで,コウジ酸の生産量を増加させることが示唆された.