[出典] "Genetic manipulation of gut microbes enables single-gene interrogation in a complex microbiome" Jin W-B [..] Gut C-J. Cell 2022-01-19. https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.12.035; Graphical abstract https://els-jbs-prod-cdn.jbs.elsevierhealth.com/cms/attachment/b25dbe1c-cc6c-4d13-9094-5f5c0d025a77/fx1_lrg.jpg
 マイクロバイオームに由来する何百もの遺伝子が,宿主の生物学/疾患と関連しているが,その多くは,大腸菌のようなモデル微生物ではない腸内常在菌 (非モデル微生物)にコードされており,遺伝子操作が不可能なことから,宿主生物学とそうした微生物遺伝子の因果関係を明らかにすることが困難であった.
 Weill Cornell Medicineの研究グループは今回,微生物遺伝子が宿主の生理機能に作用する機構を明らかにすること目的として,微生物遺伝子関心のある微生物遺伝子を宿主に導入し,そこでの遺伝子操作を可能にするツールを構築するアプローチを追究した.
  • 遺伝子操作パイプラインを構築し,遺伝子導入の方法論を明らかにするとともに,5つの門 (ファーミキューテス門, フソバクテリウム門, プロテオバクテリア門, クテロイデス門, および放線菌)にわたる140種 (species)に属する200種類の腸内細菌から,そのほとんどが非モデルヒト腸内常在菌である88種類の遺伝子導入法を効率的に同定し,関心のある遺伝子を操作するツールを構築した.
  • 健康なヒトの腸内で最も豊富なマイクロバイオームの1つを構成しているファーミキューテス/クロストリジウムの遺伝子操作はこれまでほとんど未開拓であったが,コンジュゲーション/トランスフォーメーションの多因子を対象とする最適化により,38種類の非モデル腸内クロストリジアの遺伝子導入法を特定し,そのうちの27種類にCRISPRiまたはグループIIイントロンベースの遺伝子操作ツールを用意した.
  • 短鎖脂肪酸 (SCFAs)と二次胆汁酸をin vitro および宿主のコロニー形成のコンテクストで調節することにより,これらのツールの有用性を実証した.
  • 概念実証研究では,クロストリジウムに特異的な経路の1つである胆汁酸7α脱水素化を選択して,さらに機能調査を行った.クロストリジウム常在菌に遺伝子タグを付けることで,複雑な微生物相の中でのbai 遺伝子の操作を実現し,bai 遺伝子が宿主の腸マイクロバイオームと胆汁酸組成に大きく影響し,複雑なマイクロバイオームの中で大腸の炎症を媒介することを同定した.
 今回確立した遺伝子操作 (genetic manipulation, GM)パイプラインによって,非モデル腸内細菌を遺伝子操作することが可能になり,微生物と宿主の相互作用の分子機構解明が進むことが期待される.

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