[出典] "Targeted gene silencing in the nervous system with CRISPR-Cas13" Powell JE [..] Gas T. Sci Adv. 2022-01-19. https://doi.org/10.1126/sciadv.abk2485
[成果]
 University of Illinoisの研究グループは今回,Ruminococcus flavefaciens strain XPD3002由来のCas13d (CasRx; RfxCas13d) [*]システムをマウスの脊髄と脳に投与することで,筋萎縮性側索硬化症 (ALS)とハンチントン病 (HD)という2つの進行性神経変性疾患の原因遺伝子をノックダウンできることを実証した。
  • ALSモデルマウスの脊髄内に,AAV9を介してRfxCas13dとその変異がALSの原因となるスーパーオキシドジスムターゼ1 (SOD1)を標的とするcrRNAを投与すると,SOD1のmRNAとタンパク質が共に50%以上減少し,その結果,筋萎縮が減り,神経筋機能が改善し,疾患全体の進行が遅延することを確認した.
  • 次に,HDモデルマウスの線条体に,RfxCas13dとcrRNAをAAV1にて投与することで,HTTタンパク質とその凝集体が有意に減少することも,確認した.
  • [*] crisp_bio 2018-03-17 これまでで最小かつヒト細胞で活性なCas13dの同定と解析2報: Salk研 - RfxCas13d (CasRx);Arbor Biotechnologies/NCBI - Eubacterium siraeum EsCas13d & Ruminococcus sp.  RspCas13d).https://crisp-bio.blog.jp/archives/7960227.html
[課題]
  • ALSモデルマウスに症状改善が見られたが,最終的には死亡した.これは,アストロサイトと同様にSOD1-ALSの疾患進行に寄与する細胞タイプであるミクログリアへの送達の欠如が考えられる.
  • Cas13dのRNaseに依存しないノックダウンが進行した可能性がある.すなわち,crRNAのみ,あるいは,触媒活性を失活させたdRfxCas13dとcrRNAを送達した細胞において,SOD1およびHTT mRNAの比較的小さいが測定可能な減少を観察した.
  • RfxCas13dの特異性をHTTを標的とするshRNAと比較したところ,トランスクリプトームワイドで,同程度の数のオフターゲット効果を誘発することが確認された.
  • 今回の概念実証研究では,患者に見られるSOD1やHTTの変異が多様であることから,アンチセンスオリゴヌクレオチド (ASO)やshRNA/muRNAを利用する場合と同様に,アレル非特異的戦略を採用したが,この戦略は,野生型タンパク質の減少を介した副作用のリスクを伴っている (HDに対するアレル非特異的ASOの肝臓内投与の第3相試験は中止された例あり).
  • 他のRNA標的技術と同様に,RfxCas13dは,細胞内で持続的に発現させて,変異自体は修復されていないゲノムからの変異mRNAに継続的に関与させる必要がある.RfxCas13dはバクテリア由来であり,ヒト体内での持続的発現は,SpCas9と同様な免疫原性の問題を生じる可能性がある.