[出典] "High-fidelity KKH variant of Staphylococcus aureus Cas9 nucleases with improved base mismatch discrimination" Yuen CTL [..] Wong ASL. Nucleic Acids Res. 2022-01-21. https://doi.org/10.1093/nar/gkab1291
香港大学にKarolinska Institutetなどが加わった研究グループからの報告.
Staphylococcus aureus由来のCas9 (SaCas9)は,SpCas9より小型であるなどの特徴から遺伝子治療へ応用が期待されている.遺伝子治療には,標的可能範囲がひろく,かつ,高精度な遺伝子編集が求められる.SaCas9では,PAM配列 "NNGRRT"を認識し,標的可能範囲が広いSaCas9変異体"KKH-SaCas9"や,高精度化をSaCas9-HFやeSaCas9などの変異体が開発されてきている.
精度については,SaCas9-HFとeSaCas9を比較すると,オンターゲット活性は同等であるが,オフターゲット活性はSaCas9-HFの方が低いことが報告されている.しかし,SaCas9-HFの変異 (R245A/N413A/N419A/R654A)をKKH-SaCas9に導入すると,多くの遺伝子標的に対するオンターゲット活性が大きく低下した.
研究グループは今回,構造情報に基づいてKKH-SaCas9の組み合わせ変異体パネルを作製し,
超高精度・高効率な新たな変異体を同定した [Figure 1 引用右図参照].
超高精度・高効率な新たな変異体を同定した [Figure 1 引用右図参照].- KKH-SaCas9のRECドメインにY239H変異を導入し,標的DNAとの相互作用を弱めるRECドメインとRuvCドメインの変異を追加すると,オンターゲットでの高活性を維持しながら,オフターゲット活性を大幅に減少させることができることを同定した.
- Y239H変異は,ガイドRNA-DNAヘテロ二重鎖構造におけるガイドRNAバックボーンとRECドメインとの相互作用を除去したものとモデル化された.
- さらに,KKH-SaCas9-SAV1およびSAV2と名付けた変異体は,ヒト細胞において,ゲノム全体の編集精度と共に,一塩基ミスマッチの識別能力が大幅に向上していることを確認した.
- 加えて,SaCas9のDNAおよびガイドRNAと相互作用する残基に対して,マルチドメイン変異を導入することで,編集精度の最適化が可能であることも発見した.
[関連crisp_bio記事]
- 2019-10-02 高精度版SaCas9 'SaCas9-HF' を合理的に作出.https://crisp-bio.blog.jp/archives/20159817.html
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