crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[注] RADARS: Reprogrammable ADAR Sensors
2022-11-04
Nature Biotechnology 誌から刊行された査読付論文に準拠したcrisp_bio記事を別途投稿:ADARをベースにRNAセンサー"RADARS"を開発し、真核細胞内でのタンパク質発現制御を実現. https://crisp-bio.blog.jp/archives/30658753.html


[出典] "Programmable eukaryotic protein expression with RNA sensors" Jiang K, Koob J, Chen XD, Krajeski RN, Zhang Y [..] Abudayyeh OO, Chen F, Gootenberg JS. bioRxiv. 2022-01-27 [プレプリント]. https://doi.org/10.1101/2022.01.26.477951
RNA editing アデノシンデミナーゼの一種であるADAR2の触媒活性ドメインをdCas13b-gRNAに融合してRNAの塩基編集'A-to-I' (Cell Rep 2020論文Graphical Abstract引用右図参照)を実現したREPAIRやそれに続く'C-to-U'を実現するRESCUE [*]などを開発してきたMIT, Broad Instituteなどの研究グループは今回,逆転の発想で,'RADARS'を開発した.gRNAでガイドされたADARを介してmRNAの塩基編集を実現したREPAIR/RESCUEに対して,RADARSは,単一または多重な標的mRNA(s)を認識したgRNA上のストップコドン (UAG)の'A'が,ADARによって'I'へと変換されてストップコドンが解消されてgRNAに繋留されていた遺伝子 (タンパク質)の翻訳・発現が進行するRNAセンサーである.
[*] crisp_bio 2019-07-12 RNAの1塩基変換ツールボックス拡張:REPAIR (A-to-I)にRESCUE (C-to-U)加わる.https://crisp-bio.blog.jp/archives/18805496.html; "A cytosine deaminase for programmable single-base RNA editing" Abudayyeh OO, Gootenberg JS [..] Zhang F. Science 2019-07-11. https://dx.doi.org/10.1126/science.aax7063
  • RADARSは,標的RNAに結合するgRNAを設計するだけで,gRNAの"積荷 (payload)'としてセットした遺伝子から任意のタンパク質を発現させることができる柔軟なRNAセンサーである.
  • RADARSは,単一の標的RNAに限定されず複数種類の標的RNAを検知してタンパク質を発現するANDまたはORゲートとし機能させることができる.
  • EGFP転写物の感知による実証実験では,蛍光とルシフェラーゼの双方が発現し.個々の細胞の追跡も可能であった.
  • RADARSの活性を,gRNAの伸長,gRNAへの翻訳リードスルーを阻止するMS2ヘアピンなどの二次構造の導入,結合部位の間隔の調節を介して,164倍まで向上させる最適化を実現した.
  • RADARSは25倍のダイナミックレンジを帯びた定量的RNAセンサーであることが,qPCR測定との比較から判明した.
  • RADARSにより,内在RNAを標的とするRNAのノックダウン (siRNA)とアップレギュレーション (熱ショックモデル)の制御が可能になり,また,qPCRと同様に双方向でRNAレベルを追跡できることも確認できた.
  • RARARSはRNAセンサーとしてだけでなく,'積荷'としてカスパーゼ遺伝子を組み込むことで,細胞の状態 (特定のRNA)に反応する細胞死誘導因子として利用可能である.
  • RADARは、外因性ADARだけでなく内因性ADARでも機能し,また,DNAからの発現させた因子としても,脂質ナノ粒子で送達した合成mRNAから発現させた因子としても,発現することを利用し,マウス生体内で肝臓特異的RNAセンサー (標的はSERPINA1 遺伝子)として機能することを実証した.
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