高齢者の神経伝達が,身体活動によって促進される
[出典] NEWS "Exercise Alters Brain Chemistry to Protect Aging Synapses - Enhanced Nerve Transmission Seen in Older Adults Who Remained Active" Marks R. UCSF 2022-01-07. https://www.ucsf.edu/news/2022/1/422086/exercise-alters-brain-chemistry-toprotect-agingsynapses; 論文 "Late-life physical activity relates to brain tissue synaptic integrity markers in older adults" Casaletto K et al. Alzheimers Dement. 2022-01-07. https://doi.org/10.1002/alz.12530
 UCSFとRush University (シカゴ)にスペインとカナダの研究機関が加わった研究グループが,高齢者において,身体活動 (physical activity: PA)レベルが高いほど,脳神経細胞間の結合が強化され,健全な認知機能を維持する一群のタンパク質が多く存在することを明らかにした.
  • 運動がシナプス形成に有効であり,ひいては運動が認知機能に良い影響を及ぼすことが,マウスでは示されていたが,今回,それをヒトで支持する結果が得られた.
  • Rush Memory and Aging Project (Neuroepidemiology 2005)において,死亡時に脳を提供することに同意した高齢者44人の晩年のPAをアクティグラフィ (actigraphy/活動量計測)によりモニターし,脳組織の剖検サンプルにおけるシナプス前タンパク質(シナプトフィジン,シナプトタグミン-1,シナプス小胞結合膜タンパク質,シンタキシン,コンプレキシンI ,およびコンプレキシン-II)のレベルおよび神経病理学解析結果と照合した.
  • その結果, PAのレベルが高いほど,シナプス前タンパク質レベルが高いことが明らかになった (0.14 < β < 0.20,ただしコンプレキシン-IIはβ = 0.08).
  • この関連性には剖検からの時間依存が見られたが,病理や脳領域への依存性は見られなかった.すなわち,PAレベルと神経細胞間の情報伝達を促進するタンパク質のレベルとの相関は,記憶をつかさどる海馬だけでなく、認知機能に関連する他の脳領域にも及んでいた.
 筆頭・責任著者のCasaletto博士は先行研究で,生きている成人の髄液や解剖された成人の脳組織において「シナプスの完全性に関連するタンパク質のレベルが高い高齢者では,アルツハイマー発症の仮説であるアミロイドの蓄積に続くタウの蓄積というカスケードが減衰しているように見える」ことを発見している.