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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Genetic ablation of PRDM1 in antitumor T cells enhances therapeutic efficacy of adoptive immunotherapy" Yoshikawa T [..] Kagoya Y. Blood. 2021-12-03. https://doi.org/10.1182/blood.2021012714; プレスリリース「がん細胞を長期間攻撃し続けられるT細胞の作製に成功―次世代型CAR-T細胞療法の開発へ向けて―」愛知県がんセンター・AMED. https://www.amed.go.jp/news/release_20211206-02.html
 CAR-T細胞療法は,進行がん患者に対して画期的な臨床効果をもたらしたが,持続的な効果が得られるのは少数とされている.これは,CAR-T細胞が,腫瘍抗原との出会いを繰り返すことで,ゲノムワイドなエピジェネティック構造のリモデリングを受けて分化し,寿命が短くなるためと考えられている.
 愛知県がんセンターの研究グループは今回,エピジェネティック因子の一種であるBlimp-1をコードするPRDM1遺伝子をノックアウトしておくことで,繰り返し刺激を受けたCAR-T細胞において,初期メモリー表現型が維持され,多機能なサイトカイン分泌が持続されることを示した.
  • PRDM1の破壊は,ヒトがん異種移植モデルマウスin vivo で低分化なメモリー記憶CAR-T細胞の増殖を促進し,CAR-T細胞の持続性を高め,治療効果を向上させた.
  • PRDM1を破壊したCAR-T細胞は,免疫記憶形成を制御する遺伝子のクロマチンアクセス性が向上し,初期メモリーT細胞の典型的な遺伝子発現プロファイルを獲得した.
  • また,肺がん,卵巣がん,子宮がんなどの患者の体内に存在する腫瘍浸潤リンパ球 (TIL)においてPRDM1をノックアウトすると,長期間持続するメモリーT細胞としての性質を獲得可能なことを確認した.
  • PRDM1ノックアウトは,持続性に優れた腫瘍T細胞を実現し,CAR-T細胞療法にもTIL細胞療法にも応用可能である。

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