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2024-07-19 Nature 誌刊行論文の書誌情報 (論文タイトルがbioRxivから改訂されている)とUW Medicineからのニュースリリース記事を以下に追記した。また、初稿のテキストに「マウスES細胞からガストロイドまでの記録」の成果と、Nature 論文のFig. 1とFig. 4を該当部分に挿入した。
2022-02-25 bioRxiv 投稿に準拠した初稿
[注] ENGRAM (ENhancer-driven Genomic Recording of transcriptional Activity in Multiplex) 

[出典] "Multiplex genomic recording of enhancer and signal transduction activity in mammalian cells" Chen W, Choi J [..] Shendure J. bioRxiv. 2021-11-05 [プレプリント].

 RNA-seq, 超並列レポーターアッセイ (massively parallel reporter assays, MPRAs),蛍光プローブやレポータを介した生体内での特定のシグナル伝達経路の動態を追跡する手法など,遺伝子発現やシグナル伝達活性の測定が可能になってきたが,さらに,定量的で,再現性があり,非破壊的で,多重化が可能であり,物理的に不透明な生体系に適用でき,多数のシグナルの時間的動態を捉えることができる手段が求められている.
 近年,細胞内外のシグナルを記録する手法として,部位特異的リコンビナーゼ (site-specific recombinases, SSRs)に続いてCRISPR-Cas9によるゲノム編集を利用して,シグナルに応じて記録媒体としてのDNAを改変する手法が広がってきたが,こうした手法も多重化に制約がある.
 University of Washington, Seattleを主とする研究グループは今回,DNA Ticker Tapeの投稿と同時に,複数の転写レポーターの活性と動態をDNAに安定して記録可能とするShendure 1ENGRAM (ENhancer-driven Genomic Recording of transcriptional Activity in Multiplex) を開発しbioRxiv に投稿したが、順次、査読済み論文としてNature 誌から刊行された。
  • ENGRAMは,シス制御エレメント (cis-regulatory-element, CRE)結合Pol-IIプロモーターを介して生成可能とした合成転写産物から,プライム編集ガイドRNA(pegRNA) [Nature Fig. 1引用右図 a 参照]を酵素的に放出することで成り立っている.
  • 各pegRNAにはCREのバーコードがコードされており,プライム編集酵素 (PE2)を介して,Shendureそのバーコードがゲノム上の記録遺伝子座(DNAテープ)に書き込まれていく [Nature Fig. 4 引用右図参照]。こうして,多重なCREの活性化の情報が,CREごとに異なる酵素を用意する必要なく,一種類の'酵素'PE2を介して,バーコードとしてDNAテープへ競合的に書き込まれていく.
  • このENGRAMによって,少なくとも数百のエンハンサーの相対的な活性を高い忠実度,感度,再現性でゲノム上に同時に記録し,読み出すことが可能になった.
  • 概念実証実験において,Tet-On,NF-κB, Wntを,それぞれDox, TNFα, およびCHIRで活性化した際に,ENGRAMを介して,それぞれのシグナル伝達パスウエイの活性化の濃度依存性と時間依存性の記録と読み出しが可能なことを確認した,
  • さらに,前項の3種類のシグナル伝達パスウエイの多重活性化の記録,加えて,DNAテープに書き込まれたバーコードを認識した上で活性化するpegRNAを用意することでシグナル伝達パスウエイの活性化の順を記録し読み出すことも可能なことを示した.
  • ENGRAMを応用して、マウス胚性幹細胞から、哺乳類発生初期のin vitroモデルであるガストロイドへの分化にまたがる、ほぼ100個の転写因子コンセンサスモチーフの過渡的な活性を、1日のウィンドウにわたって統合的に記録した。これらは概念実証の実験であり、その可能性を完全に実現するためには多くの課題が残されているが、細胞内の生物学的シグナルや状態をゲノムに、そして経時的にシンボリックに記録することは、生物学的システムにおける測定方法に関する現代のパラダイムを補完する広範な可能性を秘めている。
 ENGRAMは,Pol-2を介した転写に変換できるシグナル全てをDNAに記録することができ,また,特定のシグナルを特定のpegRNAを介した挿入配列に対応させることで,コード化可能なシグナルの数を挿入配列の長さに応じて指数関数的に拡大可能である.さらに,DNA Ticker Tapeと組み合わせることで,状態,空間,時間を超えて,細胞の歴史に沿った豊富な情報をDNAに記録することが可能になるであろう.

 News Release記事では、責任著者Shendureのコメント「DNAタイプライターは、多くの記号を持つキーボードに似ている。ENGRAMを使うことで、これらの記号を、関心のあるさまざまな生物学的シグナルに特化させることができる」が引用されている。また、ENGRAMの研究が、2023年12月にAllen Institute, Chan Zuckerberg Initiative, およびUWの共同で立ち上げた「Seattle Hub for Synthetic Biology」のベースになったと、紹介されている。Shendureがリーダーであえるこのプロジェクトでは、細胞の歴史を長期にわたり記録する新たな技術を設計している。

[注] ENGRAMのbioRxv 投稿については,ポッドキャストの"Researchat/研究雑談Podcast" [https://researchat.fm]が2022-1-1付の"123. We are still in the middle"にて, ~50分にわたりENGRAMレコーダーの作り方から利用可能性まで日本語で深掘りしている.
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