[出典] "CRISPR-Detector: Fast and Accurate Detection, Visualization, and Annotation of Genome Wide Mutations Induced by Gene Editing Events" Huang L, Wang D [..] Chen T, Jiang Y. bioRxiv. 2022-02-19 [プレプリント]. https://doi.org/10.1101/2022.02.16.480781
CRISPR/Cas9技術の臨床展開が進むにしたがって,遺伝子編集ツールのオンターゲットとオフターゲットの活性を,より高精度かつより高速で予測・判定するツールが必要とされている.College of Life Science (中国科学院大学), BGI-Shenzhen, Sentieon Inc (San Jose)などの研究グループは,ターゲットアンプリコン次世代シーケンシングのデータを解析する既存のツールの4つの欠点をあげ,それらを解決するパイプラインCRISPR-Detectorを開発し,bioRxivに投稿した.
[既存のパイプラインの欠点]
- スピードとスケーラビリティ:ほとんどのツールは,単一または少数のアンプリコンの解析を前提としている.臨床応用では,潜在的なオフターゲット部位を全て検証する必要性があり,大規模なパネル,あるいは全ゲノムシーケンス解析を実施する必要がある
- CRISPR-GA (8), AGEseq (9),、ampliconDIVider(10)およびCas-Analyzer(11)などのツールは,治療群と対照群のペアの配列解析をサポートしてないため,既存の遺伝的背景における一塩基多型 (SNPs)およびindelをCRISPR/Casが誘発した誘導変異と判定するリスクを伴っている [注 カッコ内の数字はbioRixv投稿の参考論文番号]
- 構造変異が対象外とされている.
- 臨床研究に極めて重要な誘発された変異の機能的または臨床的なアノテーションが付されていない.
CRISPR-Detectorは,CRISPR/Cas編集を加えた実験と対照実験の双方で得られる生のFASTQシーケンスファイルを入力とし,各入力FASTQファイルに,1つまたは複数のアンプリコン (例えば,1つのオンターゲットとその複数のオフターゲット・アンプリコン)からのシーケンスデータが存在することを前提としている.
- CRISPR-detectorのWe版の出力には,ゲノムワイド解析の結果とその直感的な可視化,および遺伝子座の比較などが含まれる.具体的には,i) 入力されたアンプリコンの編集結果を比較・可視化したサマリーページ,ii) 編集結果の詳細情報(SNPやインデルの頻度、定量化ウィンドウの参照アンプリコン全体のインデルの大きさのヒストグラム),iii) 編集が誘発した変異について,コードされたタンパク質配列が変化したかどうかを示すアノテーションと,ClinVarデータベースから引用した病原性,薬剤応答性,組織適合性などの臨床的意義のあるアノテーション,を含む.
- CRISPR-detectorは,塩基エディターのSPACER [*]による編集結果の評価にも利用可能である [*] 2020-06-03 C-to-TとA-to-Gの共変換を実現するBE: SPACE (ヒト細胞). https://crisp-bio.blog.jp/archives/23198840.html
- Web版に加えて,全ゲノム配列解析と構造変異 (SV)のコールに特化したローカルに展開可能なCRISPR検出パイプライン (https://github.com/hlcas/CRISPR-detector)も開発した.このパイプラインは,編集過程で生じる通常のSVだけでなく,ウイルスを介した遺伝子編集におけるウイルスベクター挿入も検出可能である.全ゲノム解析は,他の遺伝子編集パイプラインにはない特徴である.
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