2022-05-20 Nature Methds 誌のResearch Highlight記事の書誌情報を以下に追記し,プログ記事タイトルを「空間的フェノタイピングを読み出しとするCRISPRスクリーニングにより腫瘍微小環境の制御因子を同定」から「Perturb-map:腫瘍組織にわたる空間的CRSPRスクリーンを実現し, 局所的免疫浸潤のパターンも捉えた」に改訂し,初稿のテキストを補筆した.
[出典] RESEARCH HIGHLIGHT "Spatial CRISPR screens in tumors" Tang Lei  (Senior Editor) . Nat Methods. 2022-05-11. https://doi.org/10.1038/s41592-022-01501-7
2022-03-18
初稿
[出典] "Spatial CRISPR genomics identifies regulators of the tumor microenvironment" Hainaut M, Rose SA [..] Brown BD. Cell 2022-03-14. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.02.015
 機能ゲノミクスは近年,Perturb-seqを始めとするプール型CRISPRスクリーン [*1,2]の読み出しとしてscRNA-seqを利用する手法によって広く深くなってきたが,腫瘍内の免疫細胞の局在,血管密度,評価に空間分解能を必要とする機能ゲノミクスは実現していなかった.
 また,遺伝子ノックアウトの効果が,ノックアウトされなかった細胞によって補償される可能性があることから,現在のプール型CRISPRスクリーンでは,腫瘍組織内のごく一部の細胞における遺伝子ノックアウトがもたらす局所効果を特定できない.
 B. D. Brown (Icahn School of Medicine at Mount Sinai)が率いる研究グループは今回,先行研究で開発していた [*3]タンパク質バーコード (Pro-Code)システムをベースとし,読み出しにマルチモーダルなフェノタイピング (イメージングと3次元トランスクリプトミクス)を取り入れることで,生体内の空間分解能を伴うプール型スクリーン法Perturb-mapを開発した [Graphical abstract 参照].3次元トランスクリプトミクスには,10x Genomics社のVisium空間的遺伝子解析技術 (10x Genomics spatial transcriptomics)を採用した [参考 空間トランスクリプトーム.沖 真弥,大川恭行/企画.実験医学2021年08月20日発行 ISBN 978-4-7581-2547-5.].
  • 120種類の異なるPro-codeを発現するがん細胞集団を,腫瘍組織にわたってシングルセル分解能で検出可能なことを示した.
  • 腫瘍組織内の100個以上のがんクローンを可視化し,クローンの空間的構成を明らかにした.
  • Perturb-mapをKRAS<G12D>p53<null>肺がんモデルマウスに適用し,35種類の遺伝子を並行してノックアウト (KO)し,各遺伝子のKOが腫瘍の成長,組織病理,免疫細胞,などにどのように影響するかを同時に評価した.
  • その中で,TGFβ受容体2 (Tgfbr2) KOによって腫瘍の成長が促進され,腫瘍微小環境 (TME)のリモデリングを介して,TGFβの上方制御とTGFβを介した線維芽細胞の活性化とT細胞の排除が進行する一方で,サイトカインシグナル阻害因子1 (Socs1)のKOが腫瘍成長に有利であるが腫瘍へのT細胞浸潤・蓄積を伴うことを,同定した.ここで,Perturb-mapを介して,異なる遺伝子のKOの影響をin situ で同時に分析可能になったことで,Tgfbr2とSocs1が隣接していても,T細胞の排除と浸潤がそれぞれTgfbr2とSocs1の病巣に限定されることを,発見した.
  • Puturb-mapを肺がん以外の卵巣がんと膵臓がんのモデル系にも適用することにも成功した.
 [関連crisp_bio記事]
  1. [*] CRISPR関連文献メモ_2016/12/19:Perturb-Seq; CRISP-seq; CROP-seq. https://crisp-bio.blog.jp/archives/1883988.html
  2. [*] 2020-04-06 Perturb-seqバージョンアップ:スケーラブルかつマルチに.https://crisp-bio.blog.jp/archives/22492739.html; "Combinatorial single-cell CRISPR screens by direct guide RNA capture and targeted sequencing" Replogle JM [..] Weissman JS, Adamson B. Nat Biotechnol 2020-03-30. https://doi.org/10.1038/s41587-020-0470-y
  3. [*] 2018-10-20 Pro-Codes: CRISPRスクリーンによる一細胞分解能の遺伝子機能同定を実現するタンパク質バーコードを開発. https://crisp-bio.blog.jp/archives/12998884.html; Protein Barcodes Enable High-Dimensional Single-Cell CRISPR Screens. Wroblewska A, Dhainaut M, Ben-Zvi B [..] Merad M, Rahman AH, Brown BD. Cell. 2018 Oct 18. https://doi.org/10.1016/j.cell.2018.09.022
  4. 2021-04-05 [レビュー] CRISPR-Cas9で免疫細胞と癌を探る.https://crisp-bio.blog.jp/archives/26020352.html; "Interrogating immune cells and cancer with CRISPR-Cas9" Buquicchio FA, Satpathy AT. Trends Immunol. 2021-03-31. https://doi.org/10.1016/j.it.2021.03.003