[出典] REVIEW "Target residence of Cas9: challenges and opportunities in genome editing" Feng Y-L, Wang M, Xie A-Y (浙江大学医学院). Genome Instab Dis. 2022-03-23. https://doi.org/10.1007/s42764-022-00066-1
 Cas9によるゲノム編集の際に,Cas9が,標的によってはDSB後も標的DNA上に数時間留まることが知られている.DNAに滞留したCas9は,DSBによって出現したDNA末端の細胞内在の応答装置や修復装置による認識を阻害し,DNA損傷応答(DDR)や修復が遅延するに至る.
 このCas9のDNA標的への強固な結合と長い滞留は,DSB修復経路選択の新たな決定因子と想定され,他の内在性の経路選択を制御する因子と協力してDSB修復を制御している可能性がある.こうしたCas9の結合・滞留の挙動を理解し,利用することで,CRISPR/Cas9ゲノム編集の望ましくない結果を最小化すると共に,dCas9の強固な結合・滞留に依存するCRISPR/dCas9プラットフォームの応用を広げることが可能である.
 
 [構成]
  • はじめに
  • Cas9-sgRNA-DNA三次複合体における主要な相互作用
  • SpCas9のPIドメインによるPAM配列の特異的な認識
  • sgRNAと標的DNAの塩基対形成
  • Cas9と標的DNAの非特異的相互作用
  • Cas9の標的滞留を阻む細胞内因子
  • DNAのねじれ
  • 局所的クロマチンアクセシビリティー阻害
  • 転写
  • DNA複製
  • Cas9の標的DNA滞留とDSB修復経路の選択
  • オンターゲット修復経路の選択
  • Cas9を介したDSBに由来する3種類のDNA末端にユニークな修復経路選択 [Fig. 3 参照]
  • オフターゲット修復経路の選択
  • Cas9の標的DNAへの滞留
  • CRISPR/Cas9ゲノム編集における変異の不均一性
  • dCas9またはnCas9ベースのプラットフォームにおける必要条件
  • dCas9によるc-NHEJの標的局所的阻害 [全域阻害はオフターゲット編集を促進するが,局所阻害の場合はオフターゲット編集を抑制しつつHDR過程での修復を促進できる]