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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[注] DMG (diffuse midline glioma)
[出典] "STAT3 is a biologically relevant therapeutic target in H3K27M-mutant diffuse midline glioma" Zhang L [..] Daniels DJ. Neuro Oncol  2022-04-09. https://doi.org/10.1093/neuonc/noac093
 H3K27M変異型DMGは,通常.小児に発症する致死性の脳腫瘍であり,現状では有効な治療法がない.Mayo Clinicを主とする18名の研究グループ患者由来のH3K27M変異DMG細胞株を用いて,FDA承認済みまたは臨床試験中の薬剤のライブラリーをスクリーニングし,細胞生存率でその効果を評価した.その上で,生検や剖検の患者検体,患者由来の細胞株,遺伝子ノックダウンや低分子阻害剤による阻害,患者由来の異種移植片を用いて,臨床的関連性と機序の重要性を検証した.
  • H3K27M変異DMG細胞に対してSTAT3阻害剤はin vitro   で強力な細胞毒性活性を示した. H3K27M変異細胞株や臨床検体では,活性化STAT3の一形態であるphospho-tyrosine-705 STAT3(pSTAT3)が選択的に上方制御されていることが明らかになった.
  • CRISPR/Cas9 KO, shRNA, および低分子阻害によるSTAT3阻害は,in vitroでの細胞生存率を低下させ,H3K27M変異DMGで失われているポリコーム抑制マークH3K27me3の発現を部分的に回復させた.
  • H3K27M KO DMG細胞株では,推定STAT3制御遺伝子が豊富に存在し,K27M変異細胞でSTAT3シグナルが相対的に増加していることが示された.
  • マウスにおいて患者由来の頭蓋内異種移植片腫瘍の成長が,小児脳腫瘍に対して現在臨床使用されているSTAT3経路阻害剤であるWP1066で処理すると,患者由来の頭蓋内異種移植片腫瘍の増殖が停滞し,マウスの全生存期間が延長した.
  • H3K27M変異DMG患者由来の血漿エクソソームにおいてpSTAT3(Y705)が検出された.
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