[出典] "Blood-brain barrier–penetrating single CRISPR-Cas9 nanocapsules for effective and safe glioblastoma gene therapy" Zou Y, Sun X, Yang Q, Zheng M [..] Shi B. Sci Adv 2022-04-20. https://doi.org/10.1126/sciadv.abm8011
[著者所属機関] Henan Key Laboratory of Brain Targeted Bio-nanomedicine (河南大学), National Center for Nanoscience and Technology (中国), National Cancer Center (韓国), Harvard Medical School, Columbia U, U Technology Sydney, Macquarie U (オーストラリア)
著者らは今回,遺伝子治療用のCRISPR-Cas9システムを脳へ送達するプラットフォームを,次の設計基準のもとに開発した:製剤化が容易,大容量,サイズが小さくかつ均一,血液中で安定・長寿命,高い血液脳関門 (BBB)透過性,脳および脳腫瘍細胞に対する正確なターゲッティング,CRISPR-Cas9の迅速な細胞内放出,効率的な遺伝子編集,および無視できる程度のオフターゲット編集活性.
- このプラットフォームは,
先行研究で利用したロバストなフリーラジカルin situ 重合を用いて,BBB内皮細胞やグリオブラストーマ (GBM)細胞に高発現する低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質-1 (LRP-1)と結合するリガンドの一種であるアンジオペプ−2ペプチドで装飾した薄いジスルフイド架橋ポリマーシェルで構成されている [Fig. 1 一部引用右図参照]. - "angiopep-2–functionalized, disulfide–cross-linked nanocapsules containing Cas9 and sgRNA"に因んで"ANCSS(Cas9/sgRNA) "と命名したこのグルタチオン (GSH)感受性ポリマーシェルは,
積荷である単一のCas9-sgRNA RNPを,ほぼ中性の表面電荷を有する小さなナノカプセル (〜30 nm)に内包することで,リボヌクレアーゼ (RNase)による分解から保護し,非侵襲的なBBB透過に不可欠な血中での安定性と血漿中での長寿命を実現する [Fig. 2の一部引用右図参照]. - 小さいサイズとアンジオペプ−2ペプチドによる機能化は,BBB透過とGBM特異的ターゲティングに向けた脳内細胞内へのデリバリーにさらに有効である.
- Cas9-sgRNAカプセルはほぼ100%の薬剤デリバリーを可能とし,また,ジスルフィド架橋を組み込んだことで,腫瘍細胞内の高濃度なGSH状態を利用して、そのジスルフィド切断によりその場での積荷放出が可能になった.
- 実証実験では,2種類の典型的な同所性GBMマウスモデルを用いて,ポロ様キナーゼ 1 (PLK1) を標的とするCas9/sgRNA RNPを内包させたナノカプセルを尾静脈注射することで,オフターゲット編集活性は無視できる程度まで抑制しつつ,GBMにおける細胞分裂タンパク質PLK1の発現を著しく減少させることに成功した.
- 一方で,アンジオペップ2の機能化やジスルフィド結合を欠いたナノカプセルの場合は,脳への到達効率が著しく低く,遺伝子編集も誘発されなかった.
今回開発したプラットフォームは,積荷の効果的かつ安全な脳への送達とGBM遺伝子治療のために,これまでで最も優れた非侵襲的かつ非ウィルス性のデリバリー法である.
コメント