[出典] "Stepwise-edited, human melanoma models reveal mutations’ effect on tumor and microenvironment" Hodis E [..] Regev A. Science. 2022-04-20. https://doi.org/10.1126/science.abi8175
[著者所属] Broad Institute of MIT and Harvard, Dana-Farber CancerInstitute, Harvard Medical School, Brigham and Women’s Hospital, Bar-Ilan University (Israel), Koch Institute for Integrative Cancer Research (MIT)
 がんの原因となる突然変異が多数同定されてきたが,多数の変異が併存する腫瘍において,個々の遺伝子変異が表現型に及ぼす影響を切り分けることは困難であった.Broad Instituteなどに所属のHodisらは今回,幹細胞にではなく健常なヒトメラノサイトに,CRISPR-Cas9遺伝子編集技術を利用して,メラノーマに関連する変異を順次導入し,一連のメラノーマ細胞モデルのライブラリーを構築した.続いて,これらの細胞モデルを免疫不全マウスに移植することで,ヒトメラノーマの異なる変異パターンを帯びたマウスモデルを樹立した.その上で,細胞モデル in vitro実験と,マウスモデル in vivo実験を行い,多数の変異が併存するがんにおける遺伝子型と表現型の関連を明らかにするに至った.
  • メラノーマで一般的に制御不全に陥っている6種類のパスウエイにわたるCDKN2A    (RBパスウエイの一部), BRAF (MAPK), TERT (テロメラーゼ), PTEN (PI3K/ACT), TP53 (p53), および APC (Wnt)という最大5つの遺伝子に段階的に変異を導入し,合計9種類の遺伝的に異なる細胞モデルを作成した.
  • これらのモデルを,in vitro での増殖中と,皮内注射後のマウスにて,生理学的評価,病理組織学,scRNA-Seqを加え,データ解析と機械学習アルゴリズムを介して,モデルの特性を明らかにした.
  • その結果,メラノサイトの遺伝子型と表現型 (遺伝子発現プログラム,無秩序な複製を介した不死性、悪性度,腫瘍の急速な成長,腫瘍の色素沈着,転移,および病理組織学的特徴など)を関連付けることに成功した.
  • In vitro 解析から,UMAP (uniform manifold approximation and projection)上で,段階的に導入した変異に応じて,健常メラノサイトから多様な遺伝子型の腫瘍細胞へと秩序だって広がっていくことが,可視化された [FIG. 2 参照]
  • In vivo 解析からは,悪性腫瘍細胞の変異が,腫瘍浸潤微小環境を構成する細胞の構成と発現にも影響を及ぼすことが明らかになった [FIG. 5 参照].
  • メラノーマの組織学的特徴は遺伝子型に特異的であり,また,遺伝子型に関連した発現プログラムと一致することも確認された.