[出典] "Evaluation of stromal cell infiltration in the tumor microenvironment enable prediction of treatment sensitivity and prognosis in colon cancer" Zhou R, Wen Z, Liao Y [..] Liao W. Comput Struct Biotechnol J. 2022-04-30. https://doi.org/10.1016/j.csbj.2022.04.037 [著者所属] 南方医科大学, 中山大学がんセンター (Collaborative Innovation Center for Cancer Medicine), 広東省人民医院
 大腸がんにおいて術後補助化学療法が有効な候補者をスクリーニングするための臨床的要因が定まっていない.腫瘍の微小環境,特に間質は,治療効果を決定する可能性を持っているが,腫瘍に関連する間質の特徴を、治療判断に役立つ実用的なバイオマーカーとして臨床応用する手法は確立されていない.
 著者らは,GEOデータベース の5つの大腸がんデータセット (N = 990)において,間質細胞が豊富に存在する患者を区別するために、機械学習を使用して,間質細胞浸潤強度スコア (stromal cell infiltration intensity score, SIIS)と称する31種類の遺伝子の新規シグネチャを定義した.
 SIISが高い患者は,再発や死亡のリスクが高く,内在性薬剤耐性のために術後補助化学療法の恩恵を受けられないが,SIISが低い患者ではその恩恵を受けられることが明らかになった.
 間質細胞浸潤が高く,薬剤効率が低下している患者の検出におけるSIISの役割は,TCGA-COADコホート (N = 382), 中山大学がんセンターのコホート (N = 30)で一貫して検証され,TCGA pan-cancer settings (N = 4898)および4つの独立した免疫療法コホート (N = 467)でも観察された.
 マルチオミクスデータ解析とCRISPRライブラリスクリーニングに基づき,遺伝子変異の欠如,ADCY4プロモーター領域の低メチル化,WNT-PCP経路の活性化,SIAH2-GPX3軸が高SIIS群患者の化学療法抵抗性の原因となることが示唆された.
 これらの結果は,SIISが,がんの個別化治療の方針を決定するに有用なことを示している.