CRISPR技術をベースとするマウスモデルの開発と細胞系譜追跡法を利用
2022-07-25 一旦公開後,記事タイトルを「CRISPR細胞系譜再構築法を利用して,マウス体内での単一腫瘍細胞の進化と動態を解析」から「マウス体内で腫瘍細胞の増殖をシングルセルから追跡」へと改訂し,「CRISPR技術をベースとするマウスモデルの開発と細胞系譜追跡法を利用」を副題とした.
[出典] "Lineage tracing reveals the phylodynamics, plasticity, and paths of tumor evolution" Yang D, Jones MG [..] Weissman JS. Cell. 2022-05-05. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.04.015; Graphical abstract [著者所属] UCSF, MIT, MGH, UC Berkeley, Caltech, HMS, Princeton U.など
Jonathan S. Weissmanが率いる研究グループは今回, CRISPRゲノム編集技術によって,1ヶ月にわたりin vivo での細胞系譜の追跡と,Kras およびTrp53 の発がん性変異の誘発を同時に行うことができる肺腺がん自然発症 (autochthonous)マウスモデル"KP-Tracer"を開発した.
- KP-Tracerマウスモデルを,Kras <LSL-G12D/+>とTrp53 <fl/fl> という条件付き対立遺伝子を持つマウス胚性幹細胞 (mESC)のRosa26遺伝子座に,条件付きSpCas9とmNeonGreen蛍光色素をエンコード (Rosa26 <LSL-CAS9-P2A-mNeonGreen>; KPCas9)することで樹立した [細胞系譜の追跡法については参考記事と論文*参照].
- 細胞系譜追跡から,初期の安定した肺胞 II 型様の状態 (alveolar-type2-like state)が失われると,細胞の可塑性が一過性で増加し,腫瘍の進化と可塑性の変化が並行して進行することを見出した.
- この可塑性増加は,転移を可能にする安定したサブクローンの急速な拡大、そして最終的にはクローンの一掃する,異なる転写プログラムの活性化を伴うことを見出した.
- さらに,腫瘍は攻撃性の獲得に向けて定型的な進化の軌跡をたどるが,腫瘍抑制因子に摂動が加わることで,新たな軌跡が生まれ,進行が加速されることが示唆された.
KP-トレーサーマウスは,腫瘍の進化の階層的な性質を明らかにし,腫瘍の進行に関する詳細な研究を可能にするプラットフォームとして有用である.
[*] Weissmanグループの細胞系譜関連先行研究の参考crisp_bio記事と論文
- 2019-05-15 マウス胚形成時の細胞運命マップを描く.; "Molecular recording of mammalian embryogenesis" Chan MM, Smith ZD [..] Meissner A, Weissman JS. Nature 2019-05-13
- "Single-cell lineages reveal the rates, routes, and drivers of metastasis in cancer xenografts" Quinn JJ, Jones MG, Okimoto RA, Nanjo S, Chan MM, Yosef N, Bivona TG, Weissman JS. Science. 2021-01-21.
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