[出典] 
  • 論文 "Noninvasive assessment of gut function using transcriptional recording sentinel cells" Schmidt F, Zimmermann J, Tanna T [..] Macpherson AJ, Platt RJ. Science 2022-05-13. https://doi.org/10.1126/science.abm6038 [著者所属] ETH Zurich, Bern U Hospital, Oklahoma State U, Botnar Research Center for Child Health (Bern), U Basel. 
  • PERSPECTIVE "Recording bacterial responses to changes in the gut environment" Zahavi L, Segal E. Science 2022-05-12. https://doi.org/10.1126/science.abq1455 [著者所属] Weizmann Institute of Science
 論文著者らは今回,先行研究において確立した「CRSPR-Casシステムの適応 (adaptaion)過程を利用することで転写事象を連続的にCRISPRアレイに記録し,その履歴を遡及して読み出すことを可能としたRecord-seq [*]」を,'センチネル細胞'を媒体として,腸管と腸マイクロバオームの相互作用および腸マイクロバイオーム内の相互作用の追跡へと展開した成果である.
[*] crisp_bio 2018-10-25 Record-seq:転写事象をCISPRアレイに記録し読み出す.; "Transcriptional recording by CRISPR spacer acquisition from RNA" Schmidt F, Cherepkova MY,  Platt RJ. Nature. 2018-10-03.
 腸マイクロバイオームは,食事,健康,疾病に関連する環境条件に,絶えず遺伝子発現を適応させており,その動態を捉えるには,腸管全域にわたり腸マイクロバイオームの遺伝子発現パターンを非侵襲的に測定する技術が必要であった.
 著者らは,大腸菌をベースとして,腸管通過中に,逆転写酵素 (RT)とCRISPR-Casシステムの適応過程を酵素を組み合わせたRT-Cas1-Cas2複合体を介して,プラスミドにコードされたバーコード付きCRISPRアレイに,過渡的なmRNA発現に関する情報をDNA断片 (スペーサー配列)として記録し,かつ読み出し可能とする媒体として機能する"センチネル細胞"を作出することで,宿主と腸マイクロバイオームおよび腸マイクロバイオーム内の相互作用の解析に利用可能なスケーラブルで非侵襲的なアッセイ法を実現した.CRISPRアレイに記録された情報の読み出しは,糞便サンプリングとディープシーケンス,およびin silico 解析によって実現された  [Graphical abstract 参照].こうして,転写記録センチネル細胞技術によって,マウス腸の長さに沿って,異なる食餌および疾患のコンテキストで,腸および腸マイクロバイオームの生理・病態生理の解析が可能になった.
 無菌マウスとノトバイオートマウスの消化管において,糞便サンプル中のスペーサー配列から,腸を通過中に,食餌,炎症,微生物-微生物相互作用に依存して変動していく転写プロファイルを追跡し,食餌,疾患,腸管長に沿った微生物間相互作用に関するトランスクリプトーム・スケールの情報が経時的に記録され,読み出されることを確認した.