[出典] "Mitochondrial base editor induces substantial nuclear off-target mutations" Lei Z, Meng H, Li L, Zhao H [..] Yi C. Nature 2022-05-12. https://doi.org/10.1038/s41586-022-04836-5 [著者所属] 北京大学, 清華大学.
 DddA由来のシトシン塩基エディター (DdCBE) [*]は,スプリットすることで無害化したDddAと,転写活性化因子様エフェクター(TALE)配列タンパク質の融合体で,ミトコンドリアのDNA上のC-GのT-Aへの変換を実現する.しかし,そのゲノムワイドでのオフターゲット編集は捉え切れていない.著者らは今回,DdCBEの編集中間体デオキシウリジン (dU)を追跡するDetect-deqを利用して,核ゲノム上に,DdCBEによってオフターゲット編集が誘発されるサイト (以下,オフターゲットサイト)を多数発見した.
  • オフターゲットサイトには,TSA (Tale array sequence)依存型とTSA非依存型があり,TAS依存的なオフターゲットサイトは,一対のTALE配列の一方が無傷のDddAtoxを誘導し,オフターゲット編集を発生させることに由来した.
  • 一方で,DdCBEのTALE配列でサイトが規定されないTSA非依存型オフターゲットサイトは,CBEのCas9オフターゲットサイトと異なり,編集率が比較的高く,明確なパターンを示し,CTCF結合部位に隣接したゲノム座に共通して見出された.DdCBEとCTCFの分子的相互作用が観察されたが,バクテリア毒素を構成要素とするDdCBEがヒト細胞のCTCF結合部位にリクルートされる分子機構は不明である.
  • 著者らはまた,特異性が向上した人工DdCBEを構築し,そのオフターゲット効果の特性を明らかにした.
 今後,より高度なDdCBEや塩基編集ツールの出現が予想されるが,その特異性を十分に評価することが重要である.また,Detect-seqのように編集中間体を捕捉する戦略は、基礎研究および治療応用の両方において、様々なゲノム編集ツール(CBE、ABE、GBE、ACBE、PEなど)の標的外事象を追跡する一般的アプローチ足り得る.

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