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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[注] リポプレックス (lipoplexes): カチオン性リポソームとプラスミドDNAとを混合し,静電的相互作用に基づいて形成させた複合体 (ファルマシア 2016)
[出典] "In Vitro CRISPR/Cas9 Transfection and Gene-Editing Mediated by Multivalent Cationic Liposome–DNA Complexes" Sousa DA [..] Silva BFB. Pharmaceutics 2022-05-19. https://doi.org/10.3390/pharmaceutics14051087 [著者所属] University of Minho, International Iberian Nanotechnology Laboratory, 
 CRISPR/Cas9遺伝子編集の臨床応用には,未だ,安全で汎用性が高く,効果的な非ウイルス性デリバリーシステムが求められている.著者らは今回,2種類のカチオン性脂質(MVL5 +5eの名目電荷を持つ多価;DOTAP 1価)と3種類のヘルパー脂質 (DOPC, DOPE, モノオレイン/GMO)を組み合わせて評価した.
  • MVL5ベースのリポプレックスを介して,サイズが9 kbを超え一般にトランスフェクションが困難なCas9とsgRNAをコードするプラスミドを,リポプレックスを介してHEK 293T細胞に効率よくトランスフェクションできることを実証した.
  • 一方で,DOTAPベースのリポプレックスは、トランスフェクション率が極めて低かった.
  • MVL5系リポプレックスはライソゾームからの脱出能が優れており,このことが優れたトランスフェクション効率をもたらすと考えらた.
  • 遺伝子編集に関しても,MVL5ベースのリポプレックスは,GFPを標的として35%以上のノックアウト率を達成した.ノックアウト効率は全般として,市販試薬Lipofectamine 3000®と同等であったが,非特異的な遺伝子ノックアウトがMVL5系製剤でより顕著であった.これは,この製剤の細胞毒性に起因していると思われた.したがって,リポプレックスによるCRISPR/Cas9システムの生体内送達を目指して,さらなる最適化と機能化が必要である.
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