[注] BSJ (back-splicing junction); circRNA (環状RNA)
[出典] REVIEW "Circular RNAs: Characterization, cellular roles, and applications" Liu CX, Chen LL. Cell 2022-05-17. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.04.021 [著者所属] Shanghai Institute of Biochemistry and Cell Biology
RNAは,直鎖mRNA前駆体が成熟する際に,通常のスプライシングと逆方向の "back splicing"によって合成され,1 つの遺伝子から複数生成される.近年の技術進歩により,環状の構造および直鎖の同族mRNAとの配列の重複という問題が克服され,その細胞内での役割がより良く理解されるようになった.環状RNAは,その局在と,DNA,RNA,およびタンパク質との特異的な相互作用とに依って,転写やスプライシングを調節し,細胞質におけるmRNAの安定性や翻訳を制御し,シグナル伝達経路に干渉し,多様な生物学的および病態生理学的状況において翻訳のテンプレートとして機能する.
環状RNAは,細胞内プロセスに干渉し,免疫反応を調節し,タンパク質への翻訳を誘導するという応用分野を切り開き,生物医学研究に新たな光明を投じている.このレビューでは,環状RNA研究に用いられるアプローチと,環状RNAの制御的機能,および潜在的応用に関する現在の理解について述べる.
[構成]
・はじめに
・環状RNAの細胞内での役割を理解するための実験スキーム
・環状RNAの細胞内での役割
・環状RNAを用いた生物医学的応用
・むすび
[図一覧]
[図一覧]
・Figure 1. Annotation and functional dissection of circular RNAs
・Figure 2. Cellular roles of circular RNAs
・Figure 3. Translatable circRNAs
・Figure 4. Circular RNA-based biomedical applications
[レビュー内のCRISPRに関する記述」
「環状RNAの細胞内での役割を理解するための実験スキーム」の中の「 LoF: Use of RNA interference (RNAi) or CRISPR-based approaches」にて取り上げられている.以下,その概略:
- RNAを標的とするタイプVI CRISPR-Cas13ヌクレアーゼを利用することで,ヒト細胞においてオフターゲット効果を低減しつつ,circRNAを同族線形mRNAから効果的に識別することができる.
- 大規模なスクリーニングのために最適化したRfxCas13d-BSJ/gRNAによって,細胞特異的に増殖に影響を与えるcircRNAのサブセットは特定された.さらに,精製したRfxCas13d mRNAと数十の保存されたcircRNAを標的とするgRNAを接合体に注入することで,circMan1a2がマウス胚の着床前に必要であることが確認された.同様のスクリーニングで,20人のヒト肝細胞がん(HCC)患者から2,543種類のHCC関連circRNAが同定された.さらに,ソラフェニブはHCC治療に一般的に使用されていますが、耐性が生じることがあります。Huh7細胞を用いて,HCC治療に一般的に使用されているソラフェニブに対する耐性をもたらすcircRNAのサブセットが同定された.
- CircRNAは,ゲノムレベルでも枯渇させることができる.CRISPR- Cas9によって,バックスプライス・エクソン全体を除去してcircRNAノックアウト (KO)マウスモデルが作出された.同様に、このアプローチによってcircRNAの生合成に必要なICS (intronic complementary sequences)を破壊すると,細胞およびにおいてcircRNAが失われた.
- 近年,circRNAに特異的な塩基エディター (BE)システムが開発され,circRNAのバックスプライス・キソンを主に標的として,直鎖mRNAに影響を及ぼすことなく,circRNAの欠失が実現された.BEによる293FT細胞における機能喪失 (LoF)スクリーニングにより,新規エクソンを含むcircZNF292-novが細胞増殖に必須であることが見出された.
- ここでCRISPR/Casシステムやそこから派生したBEにおいても,同一遺伝子座から環状RNAと線状RNAが本質的に共発現することが,それぞれの手法に限界をもたらすことに注目しておく必要がある.
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