(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/29)
- [論文] CRISPR/Cas9のPAM認識機構を、1塩基単位の修復に利用する:Leonidas Bleris (U. Texas at Dallas) [出典] Li, Y. et al. "Exploiting the CRISPR/Cas9 PAM Constraint for Single-Nucleotide Resolution Interventions." PLoS One. 2016 Jan 20;11(1):e0144970.
- Cas9のDNAヘの結合がPAM配列に制約されることを利用して、野生型のアレルに影響を与えることなく、発癌性の1塩基変異が生じたアレルの選択的修復を実現した。
- 大腸がんに存在するKRASの1塩基変異G13Aを標的として、大腸癌のMEK低分子阻害剤AZD6244に対す耐性が消えることで実証した。
- G13A変異は、KRASの13番目のコドンGGCがGCCに変異にすることに相当し、したがって、Cas9のPAM配列5'-NGG-3'に整合する5'-CGG-3'配列がアンチセンス鎖上に出現することで、変異アレルがCRISPR-Cas9システムによって選択的に標的・編集されるに至った (原論文Figure 1引用下図 b 参照)。
- CRISPR/Casシステムあるいはその改変によって5'-NGG-3'配列以外の配列からなるPAMも利用可能であり、本手法は、1塩基変異による常染色体優性遺伝疾患の治療に有望である.
- [論文] Ⅲ型CRISPRシステムは複数の核酸切断モードを備えている:Malcolm F. White (U. St Andrews) [出典] Zhang, J. et al. "Multiple nucleic acid cleavage modes in divergent type III CRISPR systems." Nucleic Acids Res.2016 Feb 29;44(4):1789-1799. Published online 2016 Jan 21.
- Ⅲ型CRISPR(Cmr, Csm)システムはin vitroでRNAを切断すること、また、多様なシステムの一部は転写反応と共役してDNAを切断する(*)こと、が知られている.超好熱好酸性古細菌スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus )は、Sso-ⅢDと、Cmr7を含むSso-ⅢBの2種類のⅢ型システムを備えている.
(*) Poulami Samai ~ Luciano A. Marraffini. "Co-transcriptional DNA and RNA Cleavage during Type III CRISPR-Cas Immunity." Cell. 2015 May 21;161(5):1164-1174. Published online 2015 May 7.(Staphylococcus epidermidisのタイプⅢ-A CRISPR-Casシステム - crRNAにガイドされたCas10-Csmリボ核タンパク質エフェクター複合体によるDNAの切断には、標的DNAの転写とcrRNAタグと標的配列3’末領域の間のミスマッチが必要(自己免疫寛容);Cas10-Cms複合体は、crRNAにガイドされてRNAも切断;DNA切断とRNA切断は互いに独立の現象) - 今回、Sso-ⅢDとSso-ⅢBは共に、Cas7の構造に伴い6 ntまたは16 ntの間隔でRNAを切断することを見出した.
- このin vitro 活性は、タンパク質の標的RNAに対するモル相対濃度に依存した.
- Sso-ⅢBはRNAをジヌクレオチド’UA’を切断することが知られていた.
- Sso-ⅢD複合体はまたin vitro でプラスミドDNAを切断した.その機構として、Csm1サブユニットのヌクレアーゼ、シクラーゼとHD、がDNA二本鎖のそれぞれを切断することが示唆された.
- Ⅲ型CRISPR(Cmr, Csm)システムはin vitroでRNAを切断すること、また、多様なシステムの一部は転写反応と共役してDNAを切断する(*)こと、が知られている.超好熱好酸性古細菌スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus )は、Sso-ⅢDと、Cmr7を含むSso-ⅢBの2種類のⅢ型システムを備えている.
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