[出典] REVIEW "CRISPR Modeling and Correction of Cardiovascular Disease" Liu N, Olson EN. Circ Res. 2020-06-20. https://doi.org/10.1161/CIRCRESAHA.122.320496 [著者所属] U Texas Southwestern Medical Center
CRISPRゲノム編集の出現は,循環器研究の新時代を切り開き,疾患の遺伝的修正の可能性をもたらした。次世代シーケンシング技術 (NGS)により,疾患の原因となる変異の同定が大幅に加速され,遺伝子編集技術の進歩により,マウスや患者由来のiPSCでこれらの変異を迅速にモデル化することが可能になった.遺伝子編集システムの生体内投与による循環器疾患の病因変異修正には,安全で迅速なデリバリー法の開発などの課題をまだ抱えてはいるものの,循環器治療のフロンティアである.
このレビューでは,循環器疾患のメカニズム,および,疾患のモデリングと修正のためのCRISPRゲノム編集の潜在的なアプリケーションの概要を説明し,また,マウスがどの程度まで忠実に循環器疾患をモデル化できるか,そして今後待ち受ける機会と課題についても述べる.
[構成]
CRISPR-Casによるゲノム編集の新時代
- CRISPR-Casシステム
- 塩基編集
- プライム編集
- ゲノム編集の先にあるもの:遺伝子制御、エピジェネティック修飾、クロマチン生物学、ライブセルクロマチンイメージング
CRISPR-Cas9によるゲノム編集による心疾患モデルの作出
- CRISPR-Cas9によるマウスの体細胞遺伝子の欠失
- ヒトiPSC由来心筋細胞における心疾患モデル化
- 大型動物における遺伝性心疾患のモデル化 (非ヒト霊長類 (NHP), ブタ, イヌ)
CRISPR-Cas9ゲノム編集による循環器疾患の療法モデル
- ドミナントネガティブ変異の修正
- 機能喪失型変異の修復
- CRISPR-Cas9を用いたHDRによる正確な変異の修正
- 塩基編集による点変異の正確な修正
- プライム・エディティングの多様な編集能力
- 大型動物における治療用遺伝子編集 (DMDモデル・イヌ/ブタ)
心臓における治療用遺伝子編集のためのデリバリー戦略
AAVを用いたデリバリー方法
AAVを用いたデリバリー方法
- ゲノム編集のためのデュアルAAVベクターシステム (Cas9とsgRNAを別々のAAVでデリバリー)
- 自己相補型AAVベクター (scAAV)
- オールインワンAAVベクター (小型のCas9オーソログとsgRNAの一体化デリバリー)
- AAVキャプシドの改変によるデリバリーの安定化と効率化および筋組織指向性付与
- スプリット-インテインAAVベクター (AAVの容量を超えるBEとPEのデリバリー)
- AAV ベクターに対するヒト免疫反応の抑制
- 心臓組織向性 AAV ベクターと精密化
ナノ粒子を用いたCRISPR-Cas9のデリバリー
CRISPR-Cas9 RNPのデリバリーに利用されるウイルス様粒子 (VLP)
Cas9活性の時空間制御
- 組織特異的プロモーターを介したCas9発現
- 組織特異的マイクロRNAと抗CRISPRタンパク質 (Acr)の
組み合わせによる制御
- 組織特異的プロモーターを介したCas9発現
- 組織特異的マイクロRNAと抗CRISPRタンパク質 (Acr)の
組み合わせによる制御
循環器研究におけるゲノム編集の課題
- デリバリー, オフターゲット変異誘導, オンターゲットでの望ましくないゲノム改変)
今後の展望
- 遺伝子編集技術の急速な進歩と遺伝子編集因子のデリバリー法の進歩により,以前は想像もできなかったような方法で,心疾患を含む様々な疾患の原因となる遺伝子変異の修正が可能になった.しかし,技術的、医学的、倫理的な課題は依然として残っており、遺伝子編集技術がこれまで治療は不可能とされていた疾患の治療を実現できる可能性を持っているだけに,CRISPR-Cas療法の研究開発から臨床研究は,慎重に進めていくことがが最も重要である.
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