2023-01-28 Nature Biotechnology 誌から査読付き論文として刊行された。bioRxiv投稿から、アブストラクトの単語数が158から168に増えたが微生物学名をスペルアウトするなどの変更であり、図の一部改訂も内容の改訂には及んでいない:"Precise transcript targeting by CRISPR-Csm complexes" Colognori D, Trinidad M, Doudna JA. Nat Biotechnol. 2023-01-23. https://doi.org/10.1038/s41587-022-01649-9
2022-06-23 bioRxiv 投稿に準拠した初稿
[注] 6月22日にDoudna Lab@doudna_labは”Step aside Cas13 and RNAi! New Type III CRISPR-Csm tool for robust and precise RNA knockdown out on biorxiv today”とツイートした.
[出典] "Precise Transcript Targeting by CRISPR-Csm Complexes" Colognori D, Trinidad M, Doudna JA. bioRxiv 2022-06-20 [プレプリント] https://doi.org/10.1101/2022.06.20.496908 [著者所属] UC Berkeley, LBNL, Gladstone Institute.スクリーンショット 2023-01-28 7.56.11
 哺乳類細胞におけるロバストで精密な転写物の編集には,未だ,効率と精度,および,細胞内区画に課題がある.Doudnaらは今回,原核生物のタイプIII CRISPR免疫システムに属するタイプIII-A Csm複合体(以下, Csm)が,核内においても細胞質においても,精密な (surgical)RNA編集を実現することを報告した [右図はNature Biotechnology論文のFigure 1から抜粋したCsmの構成とデリバリーベクターの構成]
  • Csmは,プログラム可能なRNA (crRNA)に誘導されて標的RNA分子を発見し分解する.
  • Csm 2Csmは, RNAiと異なり,標的選択性が高く,核内のRNAも標的可能であり,また,RNAi機構を備えていない一部の真核生物にも適用可能である [bioRxiv投稿 Figure 2引用右図 A 参照].
  • Csmは,Cas13と異なり,細胞内RNAを無差別にトランス切断する活性 (コラテラル活性)を帯びておらず,哺乳類細胞内在のRNAを無差別に攻撃するリスクを伴わない [注 Cas13のコラテラル活性は高感度なバイオセンサーに利用されている].
  • 研究チームは,ヒト細胞に,S. thermophilus 由来のCsmを単一ベクターでデリバリーすることで,オフターゲット活性は最小限でありながら,高効率な (90-99%) RNAノックダウンが可能なことを実証した.
  • また,スクリーンショット 2023-01-28 7.56.20Csm複合体のリボヌクレアーゼ活性に加えて,不活性化したCsmが,標的RNAに選択的かつロバストに結合し,RNA可視化に利用可能なことも実証した [bioRxiv投稿 Fig. 4引用右図参照].
 以上から,研究チームは,多タンパク質複合体であるCRISPR-Casエフェクターが真核生物におけるRNAを標的とするツールとしてRNAiとCRISPR13を凌駕するとした.なお,著者のColognoriとDoudonaは,Csmシステムによる真核生物のRNAノックダウンの特許をUSPTOに申請した.

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