2022-06-23 2022-06-23の項で取り上げたプレプリント「"Outcomes of SARS-CoV2- Reinfection" Al-Aly Z, Bowe B, Xie Y. Research Square. 2022-06-17 (Under Review)」がNature Medicine 誌から、査読付き論文としてオンライン出版された:"Acute and postacute sequelae associated with SARS-CoV-2 reinfection" Bowe B, Xie Y, Al-Aly Z. Nat Med 2022-11-11. https://doi.org/10.1038/s41591-022-02051-3
SARS-CoV-2の初感染は、急性期および急性期後の死亡や様々な臓器系の後遺症のリスク上昇と関連している。再感染によって、こうした初感染に伴いリスクが高まるか否かは不明であった。著者らは、米国退役軍人省の全国医療データベースを用いて、SARS-CoV-2への1回感染者(n=443,588)、再感染者(2回以上感染、n=40,947)および非感染対照群(n=5,334,729)のコホートを対象にして、逆確率重み付け生存モデル (inverse probability-weighted survival model) を用いて、死亡、入院、および後遺症のリスクと 6 ヵ月負担を推定した。
再感染がない場合と比較して、再感染は死亡(ハザード比(HR)=2.17、95%信頼区間(CI)1.93~2.45)、入院(HR=3.32、95%CI 3.13~3.51)の追加リスクおよび肺疾患、心血管疾患、血液疾患、糖尿病、胃腸疾患、腎疾患、精神衛生、筋骨格、神経疾患を含む後遺症をもたらすことが示された。これらのリスクはワクチン接種の状況には依存しなかった。リスクは急性期に最も顕著であったが、急性期の6カ月後にも持続した。
今回、再感染が、急性期および急性期後の複数の臓器系における死亡、入院、後遺症のリスクをさらに高めるエビデンスが得られた。SARS-CoV-2による死亡と疾病の全体的な負担を軽減するには、再感染予防のための戦略が必要である。
2022-08-24 [出典] "感染後でもワクチン接種は必要?そのメリットと注意点" 山田悠史 (マウントサイナイ医科大学老年医学科; コロワくんサポーターズ代表) 厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A 2022-08-17。https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/column/0013.html再感染がない場合と比較して、再感染は死亡(ハザード比(HR)=2.17、95%信頼区間(CI)1.93~2.45)、入院(HR=3.32、95%CI 3.13~3.51)の追加リスクおよび肺疾患、心血管疾患、血液疾患、糖尿病、胃腸疾患、腎疾患、精神衛生、筋骨格、神経疾患を含む後遺症をもたらすことが示された。これらのリスクはワクチン接種の状況には依存しなかった。リスクは急性期に最も顕著であったが、急性期の6カ月後にも持続した。
今回、再感染が、急性期および急性期後の複数の臓器系における死亡、入院、後遺症のリスクをさらに高めるエビデンスが得られた。SARS-CoV-2による死亡と疾病の全体的な負担を軽減するには、再感染予防のための戦略が必要である。
[注] 世界各国からの再感染に関連するデータ部分を抜粋 (出典にはデータの元論文が引用されており、項番はその文献番号に対応)
- 新型コロナウイルス感染後にワクチン接種を受けた人の再感染は1日当たり約2.5人/10万人にみられたのに対して、ワクチン未接種者の再感染は、1日当たり約10.2人/10万人であった;デルタ株流行時にはなるが、新型コロナウイルス感染後にワクチン接種を受けた人の再感染を予防する効果は16〜64歳の人で82%と試算される。
- オミクロン株流行前のデータにはなるが、「感染後にワクチン接種を受けなかった人」では感染から1年後に再感染リスクの増加がみられていたのに対し、「2回接種を受けた人」では、感染から1年後も再感染リスクは変わらず抑制されたままであった。
- 感染後にワクチンを接種すると、感染していた祖先型ウイルスだけでなくベータ株に対する免疫応答も高まる。
- オミクロン株が優勢の時期に行われた解析において、再感染時の入院を予防するワクチン効果は2回の接種で約35%、3回目の接種で約68%であった。
- オミクロンBA.5に関したブースター接種対象者を対象とするポルトガルの研究で、再感染時の入院予防に対する効果は2回の接種で22%であったが、3回目の接種で77%と算出された。
- ワクチンの副反応:接種部位の痛みや腫れなどについてはワクチン接種の有無による違いは見られなかったが、倦怠感、頭痛、寒気などについては、未感染者よりも感染者の方が高頻度であった。ただし、いずれの場合も入院が必要になった副反応は見られなかった。
1. "Increased risk of SARS-CoV-2 reinfection associated with emergence of Omicron in South Africa” Pulliam JC et al. Science 2022-03-15. https://doi.org/10.1126/science.abn4947
2020年3月4日から2022年1月31日までの検体受領日のSARS-CoV-2の陽性検査のデータを2種類のモデルに基づいて解析した。
2022-07-31 米国バイデン大統領は21日に新型コロナウイルス陽性が判明し,ファイザー社のCOVID-19飲み薬パクスロビド(ニルマトレルビルとリトナビルの併用)の投与を受け,27日に陰性になったが,30日の検査で再び陽性になった [NHK NEWS WEB 2022-07-31 06:22].再感染というよりはリバウンドと見られているが,パクスロビド投与完了後に,稀ではあるが,リバウンドが発生することは以前から知られていた ["13 Things to Know About Paxlovid, the Latest COVID-19 Pill" のQ11. Katella K. Yale Medicine News. 2022-07-18; COVID-19 Rebound Adter Paxlovid Treatment. Distributed via the CDC Health Alert Network. 2022-05-24 9:00 AM ET.].- 90日以上の間隔をあけて連続して陽性反応が出た人を再感染が疑われるとし、2,942,248人の中105,323人を再感染疑いと判定した。
- ワクチンにはほとんど接種していなった感染が広がっている集団において、ベータ変異株またはデルタ変異株が再感染を引き起こすことはほとんどないことを発見した。
- 2021年11月初旬にオミクロン (B.1.1.529)変異株の出現の時期と一致する再感染と、2021年11月中旬以降、3度目の感染を起こすリスクが増加していたことを発見した。
2. "Covid reinfections in the UK: how likely are you to catch coronavirus again?" Geddes L. The Guardian 2022-06-22 07:00 BST.
The Guradian の記事にあるように、項目1の南アフリカからの報告に続いて、オミクロンのB.1系統に感染していても、B.2系統以下の新たなオミクロン亜系統に再感染する例が報告・報道され始めたことになる。以下に、記事の一部を引用:
The Guradian の記事にあるように、項目1の南アフリカからの報告に続いて、オミクロンのB.1系統に感染していても、B.2系統以下の新たなオミクロン亜系統に再感染する例が報告・報道され始めたことになる。以下に、記事の一部を引用:
- Danny Altmann教授 (Imperial College London)のコメント "オミクロンBA.1は、非常に高い免疫回避能を備えており、ワクチンを接種していても多くの発症をもたらす。一方で、免疫原性が低いため、BA.1感染には再感染を防ぐ効果がほとんどなく、また、BA.4やBA.5に対抗する免疫記憶を呼び起こす能力も極めて低い。
- デンマークでは、BA.1感染後のBA.2感染は、若年でワクチンを接種していない層で最も高頻度であると言われている (データ未公開)。
- ワクチンのブースター接種は、再感染に対して、オミクロンBA.1感染とは異なる免疫防御層を誘導する。
- 再感染に対するマスクの効果について:マスクと換気は、特に混雑した環境において、再感染に対する有効な防御になる;専門家のコメント「私は今でもマスクをつけていますが、安物のマスクではなく、FFP2 (米国N95, 日本DS2相当)やFFP3 (米国N100, 日本DS3相当)のマスクをつけています」
2022-06-23 初稿
[出典] “A reinfection red flag - Why a new report is so troubling” Eric Topol. Ground Truths 2022-06-22. https://erictopol.substack.com/p/a-reinfection-red-flag [所属機関] Scripps Research Institute
再感染は,オミクロン株が出現するまでは稀であり,デルタ株では再感染率は1%以下であった.しかし,オミクロンのBA.1株からBA., BA.2.12.1, BA.4, およびBA.5と続く変異株は,免疫回避能を強めているようだ.
オミクロン株の亜株のBA.2.12.1,BA.4およびBA.5は,BA.1株の感染またはBA.1を標的として開発されたワクチンを回避すると見られている ["BA.2.12.1, BA.4 and BA.5 escape antibodies elicited by Omicron infection" Cao Y, Yisimayi A, Jian F et al. Nature 2022-06-17. https://doi.org/10.1038/s41586-022-04980-y; "Neutralization Escape by SARS-CoV-2 Omicron Subvariants BA.2.12.1, BA.4, and BA.5" Hachmann NP [..] Barouch DH. N Engl J Med 2022-06-22. https://doi.org/10.1056/NEJMc2206576]
6月17日にはまたプレプリント・サーバへの投稿ではあるが,25万人を超える1回感染者 (257,427人),3万9千人の2回以上感染者 (再感染者 38,926人),および540万人近い非感染者 (5,396,855人)の比較から,再感染するごとに,死亡,入院,健康不全のリスクが高まるという報告が公開された ["Outcomes of SARS-CoV2- Reinfection" Al-Aly Z, Bowe B, Xie Y. Research Square. 2022-06-17 (Under Review). https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-1749502/v1]
22日の米国CDCの発表 [Data Tracker https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#variants-genomic-surveillance]によると,米国では,2022年の早い時期には米国の人口の半数がBA.1に感染していたが,今や,新規感染例の56%がBA.2.12.1株であり,パンデミックが始まって以来最も免疫回避能が高いBA.4/5株が35%を占めるに至っており,今後,BA.4/5株が優勢になるとみられる.
BA.4/5株の感染拡大は米国に先立って,南アフリカとポルトガルで見られ,今や米国だけでなく,欧州各国とオーストラリアでも見られている.オミクロン株のロングCOVID (COVID後遺症)のリスクはデルタ株の30-50%とされているが,オミクロン株の感染例が増えれば,ロングCOVID患者数がデルタ株由来を超える可能性が高まって行き,また,オミクロン変異株によっては入院率が高まるという報告もあるようだ.
BA.4/5株の感染拡大は米国に先立って,南アフリカとポルトガルで見られ,今や米国だけでなく,欧州各国とオーストラリアでも見られている.オミクロン株のロングCOVID (COVID後遺症)のリスクはデルタ株の30-50%とされているが,オミクロン株の感染例が増えれば,ロングCOVID患者数がデルタ株由来を超える可能性が高まって行き,また,オミクロン変異株によっては入院率が高まるという報告もあるようだ.
[crisp_bio注]
上記テキスト中で引用された国々と日本の人口100万人あたりの新規 (日別)感染者数と死亡者数の7日間移動平均の推移グラフ (3月1日から6月22日まで)をOur World In Dataサイトから左下図と右下図に引用した.
日別感染者数で見ると,3月1日から5月に入るまで日本を下回っていた米国が5月17日を境に日本より悪化し,英国は6月8日を境に日本より悪化した.これは,米国と英国におけるBA.4/5株の感染拡大の影響なのか,規制緩和の影響なのか,その他の要因、例えば、検査数の減少、がもたらした結果なのか.一方で,南アフリカの感染は,3月1日から6月22日までの間,他国に比べて相対的に抑制されているように見える.
上記テキスト中で引用された国々と日本の人口100万人あたりの新規 (日別)感染者数と死亡者数の7日間移動平均の推移グラフ (3月1日から6月22日まで)をOur World In Dataサイトから左下図と右下図に引用した.
日別感染者数で見ると,3月1日から5月に入るまで日本を下回っていた米国が5月17日を境に日本より悪化し,英国は6月8日を境に日本より悪化した.これは,米国と英国におけるBA.4/5株の感染拡大の影響なのか,規制緩和の影響なのか,その他の要因、例えば、検査数の減少、がもたらした結果なのか.一方で,南アフリカの感染は,3月1日から6月22日までの間,他国に比べて相対的に抑制されているように見える.
死亡者数の推移は,ざっくりと,日別感染者数の推移に相応しているように見えるが.日本の死亡者数が3月1日以後,他国に比べ,また,一貫して,低下し続けている [*]のは,医療体制のが追いついてきた効果なのか,そしてまたは,その他の要因がもたらした結果なのか。
[*] 2022年8月14日までの1週間の新型コロナ死者数でみると、日本は米国に次ぐ世界第2位へと急上昇していた [NHK政治マガジン 2022-08-19].
[*] 2022年8月14日までの1週間の新型コロナ死者数でみると、日本は米国に次ぐ世界第2位へと急上昇していた [NHK政治マガジン 2022-08-19].
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