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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Systematic comparison of CRISPR-based transcriptional activators uncovers gene-regulatory features of enhancer–promoter interactions" Wang K [..] Hilton IB. Nucleic Acids Res. 2022-07-18. https://doi.org/10.1093/nar/gkac582 [著者所属] Rice U
 dCasをベースとするCRISPRaシステムは,ヒトのエピゲノムと遺伝子発現を人工的に再構築する強力な技術として登場した.しかし,様々なCRISPRaシステムの相対的な効力やメカニズムの相違は,特に,エンハンサーとプロモーターのペアを標的とした場合について,十分に解明されていない.
 ライス大学の研究チームは,最も広く採用されているdCas9ベースの転写活性化因子 (dCas9-VPR, -SAM, -SunTag, -p300)と,dCas9にヒトCBPタンパク質の触媒コアとを融合した活性化因子を,ヒトのエンハンサー・プロモーターのペアで系統的に比較評価した.
 これらのプラットフォームは,異なるヒト細胞型において様々な相対的発現量を示し,その転写活性化効率が,エフェクター・ドメイン,エフェクターをリクルートするアーキテクチャ,標的遺伝子座,細胞型に依存して異なることが明らかになった.
 また,dCas9活性化因子はエンハンサーRNA (eRNA)の産生を誘導し,このeRNA誘導は同種のプロモーターからの下流mRNA発現と正の相関があることを同定した.
 さらに,dCas9活性化因子を利用して,ヒトのエンハンサーとプロモーターの間に転写およびエピジェネティックな相互依存が存在しうること,エンハンサーを標的とするdCas9活性化因子によって,エンハンサーを介した下流のプロモーターの追跡と関与を人工的に駆動可能なことを示した.
 本研究は,エンハンサーを介したヒト遺伝子発現の制御とdCas9ベースの活性化因子の利用について、新たな知見を提供するものである.
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