2022-11-12 Moleculer Cell誌掲載のハイライト記事 (Spotlight)へのリンクを追記:SPOTLIGHT "CRISPR-assisted transposition: TnsC finds (and threads) the needle in the haystack" Hossain AA, Marraffini LA. Mol Cell. 2022-11-03. https://doi.org/10.1016/j.molcel.2022.10.014 [著者所属] Rockefeller U;Hoffmanら [Nature, 2022は、RNA融合型トランスポゾンが、トランスポゾンを正しい標的部位にリクルートするAAA+ATpaseであるTnsCを介して、極めて高い配列選択性を実現していることを、明らかにした [crisp_bio 2022-11-12 CRISPRシステムに依存する転位:TnsCが、干し草の山の中の針を見つけて糸を通す https://crisp-bio.blog.jp/archives/30758827.html]。
2022-09-17 初稿
[注] CAST (CRISPR-associated transposases)
[出典] "Selective TnsC recruitment enhances the fidelity of RNA-guided transposition" Hoffmann FT, Kim M [..] Sternberg SH. Nature 2022-08-24. https://doi.org/10.1038/s41586-022-05059-4 [著者所属] Columbia University, New York University Tandon School of Engineering, Illumina Singapore Pte Ltd, New York Structural Biology,  Vertex Pharmaceuticals, Broad Institute,  St. Jude Children's Research Hospital;
 バクテテリアのトランスポゾンはバクテリアの中に広く存在する可動遺伝因子 (mobile genetic elements, MGEs)であり、水平伝播にはそれぞれ異なるDNA結合タンパク質を利用する。例えば、大腸菌のTn7はTnsD1を使って特定の付着部位 (attachment site) に結合するが、CRISPR関連トランスポゾン (CRISPR-associated transposons) はCRISPR-CasシステムのタイプI またはタイプV のエフェクター (Cascade)を利用して、ガイドRNA (crRNA)によって指定された標的部位の下流に挿入する。このターゲティングの全てにおいて、DNAの切り出しと挿入を触媒するDDEファミリーのトランスポザーゼであるTnsBと、トランスポザーゼとターゲットタンパク質の間の情報伝達を担うと思われるAAA+ ATPaseであるTnsCが必須であることが知られている。しかし、TnsCがトランスポザーゼとターゲティングタンパク質の間でどのように情報伝達を行い、それによってトランスポーズの忠実性をどのように制御しているのかは不明であった
 本研究では、ChIP-seqとシークエンシングによって、I-F型RNAガイド・トランスポゾームの形成をin vivo で観察し、統合に至るタンパク質リクルートメントイベントを明らかにした [Fig. 1-a参照]。TniQ-Cascade複合体によるDNAターゲティングは驚くほど非選択的 (promiscuous)であり、何百ものゲノム上のオフターゲットサイトがサンプリングされるが、それらのサイトの一部のみがTnsCとTnsBのリクルートを承認される (licensed) 校正のチェックポイントが重要であることが明らかにされた。
 さらに、スクリーンショット 2022-09-09 8.43.54トランスポゾームの形成に関わる相互作用の機構的理解を深めるため、研究チームはクライオ電顕法によりTnsCの構造を再構成し、ATP結合により7量体リングが形成され、DNAを中央孔に通し、それによって下流の統合に向けて基質を位置づけることを見出した [PDB登録データ参照; 右図にPDB 7UFMの構造図を引用]
 これらの結果は、RNAガイド下での遺伝子転位において、一連の因子が標的部位に結合することによってターゲッティングの選択性がもたらされることを明らかにし、将来の遺伝子工学的研究の指針の構造基盤を提供した。

 [構造情報]
  • PDB 7RZY/EMDB-24783: CryoEM structure of Vibrio cholerae transposon Tn6677 AAA+ ATPase TnsC (3.6 Å)
  • PDB 7UFI/EMDB-26476: VchTnsC AAA+ ATPase with DNA, single heptamer (3.4 Å)
  • PDB 7UFM/EMDB-26477 VchTnsC AAA+ with DNA (double heptamer) (3.9 Å)
 [参照した構造情報]
  • 7N6I ATP-bound TnsC-TniQ complex from ShCAST system [Scytonema hofmannii ] (3.9 Å)
  • 7M99 ATPgS bound TnsC filament from shCAST system  [Scytonema hofmannii ]  (3.2 Å)
  • 6VBWCryo-EM structure of Cascade-TniQ-dsDNA ternary complex [Vibrio cholerae ] (3.2 Å)
  • 6V9P Crystal structure of the transposition protein TniQ [Vibrio cholerae ]  (1.93 Å)
  • 7MCS Cryo-electron microscopy structure of TnsC(1-503)A225V bound to DNA [Escherichia coli ].  (3.56 Å)
[関連crisp_bio記事]