[出典]
- "Dynamic mechanisms of CRISPR interference by Escherichia coli CRISPR-Cas3" Yoshimi K, Takeshita K, Kodera N [..] Mashimo T. Nat Commun 2022-08-30. https://doi.org/10.1038/s41467-022-32618-0 [著者所属] 東大医科研, 理研 SPring-8, 金沢大学, C4U Corporation, 兵庫大学
- 「国産ゲノム編集技術CRISPR-Cas3が二本鎖DNAを切断する仕組みを解明 ―社会利用が可能なゲノム編集法として期待―」東大医科研プレスリリース 2022-08-30. https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00191.html
I型CRISPR-Cas3システムは、Casタンパク質複合体Cascadeを介してヘリカーゼ・ヌクレアーゼCas3タンパク質が外来核酸を検出・分解するが、その独特な核酸配列分解様式から、Cas9がスイスアーミーナイフに喩えられたのに対して、Cascade-Cas3は自走するシュレッダーと称された [*]。これまでに、クライオ電顕法や単一分子FRET (smFRET)による構造解析とその分解機構の解明が試みられたきたがその分子機構は詳らかにされてこなかった。
研究チームは今回、CRISPR-Cas3システムをin vitroで再構成し、大腸菌のCas3 (EcoCas3)がEcoCascadeと協働して、非選択的に一本鎖DNA (ssDNA)を切断するコラテラル活性と標的の二本鎖DNA (dsDNA)を選択的に切断する活性を発揮する動態を明らかにした。
EcoCascadeがターゲットDNAに部分的に結合すると、PAMに依存することなく、スペーサー配列が許容範囲内にある場合、EcoCas3と共に、ssDNA切断活性を発揮する。
一方で、完全なR-ループを形成して安定に結合すると、EcoCas3は結合したDNAの非標的鎖 (NTS)をニッキングし、
その後、ヘリカーゼに依存した巻き戻しにより、標的鎖のssDNA切断とNTSのcis切断が繰り返され、標的の二本鎖DNA (dsDNA)基質が分解される [Fig. 1の一部引用の右図 a 参照]。
高速の原子間力顕微鏡を利用することで、EcoCascadeに結合したEcoCas3が標的DNAの巻き取りと放出を繰り返し、その後、標的の断片化を起こすことが示された [論文には原子間力顕微鏡観察のムービーが添えられている]。
その後、ヘリカーゼに依存した巻き戻しにより、標的鎖のssDNA切断とNTSのcis切断が繰り返され、標的の二本鎖DNA (dsDNA)基質が分解される [Fig. 1の一部引用の右図 a 参照]。高速の原子間力顕微鏡を利用することで、EcoCascadeに結合したEcoCas3が標的DNAの巻き取りと放出を繰り返し、その後、標的の断片化を起こすことが示された [論文には原子間力顕微鏡観察のムービーが添えられている]。
これらの結果は、CRISPR-Cas3によるssDNAの切断とdsDNAの分解に関する新たなモデルを提供し、タイプI CRISPRのプライミングと干渉 [Fig. 6引用左図参照]に関する理解を深めるとともに、将来のゲノム編集ツールに情報を提供するものである。
[Cas3関連crisp_bio記事と論文]
- [*] 2019-04-10 Cas9はスイスアーミーナイフ、Cascade-Cas3は自走するシュレッダー:タイプ I-E; E. coli由来Cas3と成熟crRNAのRNPを細胞へデリバー.http://crisp-bio.blog.jp/archives/16949725.html
- 2019-09-25 ヒト細胞における遺伝子の転写活性化と抑制を、E. coli 由来Cascadeで実現 https://crisp-bio.blog.jp/archives/20067570.html
- 2019-11-19 ヒト細胞におけるゲノム編集を、タイプ I CRISPR-CasシステムCascadeで実現 http://crisp-bio.blog.jp/archives/20829994.html
- 2019-12-07 CRISPR-Cas3を介したエクソン・スキッピングによるDMD遺伝子変異修復 https://crisp-bio.blog.jp/archives/21075878.html
- "CRISPR-Cas3 induces broad and unidirectional genome editing in human cells" Morisaka H, Yoshimi K, Okuzaki Y [..] Hotta A, Takeda J, Mashimo T. Nat Commun 2019-12-06. https://doi.org/10.1038/s41467-019-13226-x
- 2022-01-25 I-C型 CRISPR-Casシステム (Cascade-Cas3)によるヒト細胞ゲノム編集にはCas11が必須であった https://crisp-bio.blog.jp/archives/28465111.html
- [20220208更新] 新型コロナウイルス迅速検査法:DETECTRとSHERLOCKに、日本からコナンが続く https://crisp-bio.blog.jp/archives/23238480.html
- 2022-02-18 [プロトコル] CRISPR-Cas3により,ヒト多能性幹細胞に大規模ゲノム欠失を誘導 https://crisp-bio.blog.jp/archives/28660807.html
- 2022-07-28 タイプI-A Cascade-Cas3複合体のアロステリック制御とCRISPRDxとヒトゲノム編集のツールへの展開 https://crisp-bio.blog.jp/archives/29789194.html

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