crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[注] hPSC (ヒト多能性幹細胞: hESCとiPSC); 遺伝子KO (遺伝子ノックアウト)
[出典] "Robust genome editing via modRNA-based Cas9 or base editor in human pluripotent stem cells" Haideri T, Howells A [..] Bao X, Lian XL. Cell Reports Methods. 2022-09-07. https://doi.org/10.1016/j.crmeth.2022.100290 [著者所属] Pennsylvania State University, Purdue University
  CRISPR/Cas9は癌細胞株やヒト細胞において有効なゲノム編集ツールとして確立されたが、hPSCへの展開にあたってはCRISPRシステムのトランスフェクション効率ひいては編集効率が課題であった。著者らは今回、CRISPRシステムをプラスミドではなく、N1-メチルシュードウリジン (m1Ψ) で修飾したmRNA (modRNA)にコードし、modRNA-based  11.00.19リポフェクションすることで、hPSCにおける効率的遺伝子KOが可能なことを示した [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。
  • Cas9 modRNAのhPSCへのトランスフェクション効率90%を達成した。
  • Cas9/p53DD [*] modRNAにより、最大84%のノックアウト効率を達成し、プラスミドやRNPを介したトランスフェクションよりも大幅に効率が高いことを実証した。ここで、
  • ABE8e modRNAは、スプライスドナー部位を標的とすることで、標的転写物のスプライシングに欠陥を誘導し、最終的に遺伝子ノックアウトに至るが、プラスミドABE8eに対して5倍のノックアウト効率を達成した。
 こうして、著者らが開発したmodDNAベースのCRISPRシステムによるゲノム編集は、簡便なトランスフェクション法を利用でき、ノックアウト効率が高く、かつ、プラスミドDNAがゲノムに統合されてゲノムの完全性が損なわれリスクを伴わないことから、hPSCのゲノム編集に適した技術として期待できることが示された。
 
 [*]   p53DDはp53のドミナントネガティブ変異体であり、p53の機能を一時的にブロックし、Cas9が誘発するDNA二本鎖切断 (DSB)に由来する細胞毒性を低減することで知られている "p53 inhibits CRISPR-Cas9 engineering in human pluripotent stem cells" Nat Med 2018-06-11. https://doi.org/10.1038/s41591-018-0050-6
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