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[出典] "Gene therapy using genome-edited iPS cells for targeting malignant glioma" Tamura R [..] Toda M. Bioeng Transl Med 2022-09-10. https://doi.org/10.1002/btm2.10406 [著者所属] 慶應大学、理研、東京大学
 膠芽腫は、正常な脳へのびまん性浸潤を特徴としている。浸潤性 (invasive)神経膠腫幹細胞 (glioma stem cells, GSC)は、治療失敗の根本原因であり、多剤併用療法にもかかわらず、予後は芳しくないことから、浸潤性GSCを標的とする新たな治療法が必要とされている。
 著者らは、CRISRP/Cas9ゲノム編集により自殺遺伝子を発現させたヒト人工多能性幹細胞 (hiPSC)による細胞療法を実現するにあたり、 間葉系幹細胞 (mesenchymal stem cells , MSCs) よりも脳腫瘍へ遊走する能力が高い神経幹細胞 (neural stem cells, NSCs)を利用する手法を開発した。
  • ゲノム編集を加えたhiPSCから分化させたNSCs (iPSC-NSCs)は、in vivo で顕著な抗腫瘍効果を示した。
  • iPSC-NSCsの高い遊走能は、EphB-ephrinBおよびCXCL12-CXCR4シグナルに関わる自己反発作用と向病巣性に関連していた。
  • ACTB への遺伝子挿入は、GAPDH やAAVS1 のような他の一般的な挿入部位よりも高く安定した導入遺伝子発現をもたらした。
  • フェロトーシスは、抗腫瘍免疫反応の増強と関連していた。
  • チミジル酸合成酵素とジヒドロプリミジンデヒドロゲナーゼの発現が、治療用hiPSC-NSCsの治療効果の予測に利用可能であった。
 この結果は、ゲノム編集されたiPS細胞を用いた遺伝子治療が、浸潤性GSCsに有効である可能性を示している。さらに、本研究のコンセプトは、hiPSCを用いた臨床研究を推進するためのプラットフォームとなる可能性がある。
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