[注] 本記事は、新型コロナウイルス: ワクチンに関する雑感と専門家からの情報 (1)の続き; ブログ記事の文字数制限により、2024-06-09から新型コロナウイルス: ワクチンに関する雑感と専門家からの情報 (3)へ移行

2024-06-07
crisp_bio 2024-06-07
 米国FDAは今秋、COVID-19ワクチンをアップデートする予定

2024-05-10
crisp_bio 2024-05-10 アストラゼネカ, オックスフォード大学と共同開発したウイルスベクター形式の新型コロナワクチンChAdOx1 (バキスゼブリア) から撤退 
 同社は、英国における集団訴訟裁判の過程で、ごくまれに血小板減少を伴う血栓症(TTS)を引き起こす可能性があること」を認めた。

2024-05-05 [参考] サーズウイルス2の感染性
crisp_bio 2024-05-02 若年成人34人にサーズウイルス2を経鼻接種し, 感染したのは18, うち2名はウイルス量が高いまま無症状 - 英国研究チームの臨床試験の結果

2024-03-31
crisp_bio 2024-03-31 医療専門家に由来するワクチン偽情報 (disinformation) による"デジタルパンデミック"

  • 英国での調査では、ソーシャルメディアなどに流布されている誤った情報 (misinformation)の65%が、ソーシャルメディア上のわずか12人に由来している。また、反ワクチン産業は今やビッグビジネスになっている。
  • 偽情報を流布し健康被害を招いた医師や分子・細胞生物学専門家の事例が紹介されている。

2024-03-17 米国CDC, 65歳以上にCOVID-19ブースター接種を推奨
[出典] Medcial News in Brief "CDC Recommends Additional COVID-19 Booster for Older Adults" Anderer S. JAMA 2024-03-13. https://doi.org/10.1001/jama.2024.2071
 米国では、2023年10月から2023年12月の間、COVID-19による入院の半数以上が高齢者であった。CDCは2024年2月28日に、免疫不全の人に続いて65歳以上の成人に対しても、COVID-19感染の重症化を抑制するために、2023年から2024年にかけて更新されたCOVID-19ワクチンの追加接種を推奨した。米国感染症学会もこれを支持した [学会プレスリリース]。

2024-03-16  2024-03-16 9.41.59新型コロナワクチン反対派の動向を, 大量のツイートの機械学習により分析 (crisp_bio 2024-03-16)

2024-03-10 mRNAワクチンを繰り返すと記憶T細胞集団が置き換わっていく
[出典] "新型コロナワクチンに誘導される記憶T細胞集団がワクチン接種ごとに置き換わることを発見~ヒト免疫応答の理解と新たなワクチン設計への重要な知見~" 東京理科大学. 2023-03-08. https://www.tus.ac.jp/today/archive/20240306_8340.html;"CD8+ T cell memory induced by successive SARS-CoV-2 mRNA vaccinations is characterized by shifts in clonal dominance" Aoki H [..] Ueha S. Cell Rep. 2024-02-29. https://doi.org/10.1016/j.celrep.2024.113887 [所属] 理科大, 東大, 奈良県立医科大, 熊本大2024-03-10 19.31.14
 これまでは、初回ワクチン接種で誘導された記憶T細胞が新たなワクチン接種のたびに増殖することで、T細胞による免疫記憶を維持していると考えられてきた。今回、ファイザー/ビオンテックのワクチンBNT162b2を3回目まで接種した奈良県立医科大学の医療従事者38人を対象にした調査の結果、ワクチンによって誘導される記憶T細胞は、ワクチン接種のたびに古い抗原特異的T細胞クローンの一部が増殖能力を失い、新たな抗原特異的T細胞のクローンに置き換わることで、記憶T細胞の多様性が維持されていることが示された [挿入図は論文のグラフィカルアブストラクトから引用]

2024-03-06 
新型コロナワクチンを217回接種したらどうなった

[出典] "Adaptive immune responses are larger and functionally preserved in a hypervaccinated individual" Kocher K, Moosmann C [..] Schober K. Lancet Infect Dis. 2024-03-04. https://doi.org/10.1016/S1473-3099(24)00134-8 [所属]

 29ヵ月間に217回のSARS-CoV-2ワクチン接種を受けたドイツのMagdeburgに住む62歳の男性 (以下、HIM) の症例報告がLancet Infectious Diseases 誌から公開された。

  • HIMは臨床研究の枠外で、国のワクチン接種勧告に反して、私的動機から過剰ワクチン接種 / hypervaccination (以下、過剰接種) を行った。9ヵ月間に130回のワクチン接種を受けたことが、ドイツのMagdeburg検察によって確認され、同検察は詐欺の疑いでこの事件の捜査を開始したが、刑事告発はされなかった。
  • 研究チームは、検察官を通じてHIMに分析を提案し、その後、HIMは医療情報の提供、血液と唾液の提供に積極的かつ自発的に同意し、データ分析はドイツのErlangen大学病院の倫理委員会によって承認された。
  • 接種したワクチンは、BNT162b2Pfizer/BioNTechの68回、モデルナのmRNA-1273の33回の他にアストラゼナカ/オックスフォード大学製とJ&J製など8種類であった。
 サーズウイルス2に対する過剰接種は、有害事象をもたらさずHIMの免疫システムは正常に維持され、スパイク特異的抗体とT細胞の量を増加させたが、適応免疫応答の質に強い正または負の影響を与えなかった。現在までのところ、HIMではサーズウイルス2のブレークスルー感染の兆候は見られないが、これが過剰接種と因果関係があるかどうかは不明である。この症例は「過剰ワクチン接種は、適応免疫を高める戦略として選択すべきではない」ことを示した。

2024-02-29
crisp_bio 2024-02-29 新型コロナワクチン接種による心臓, 血管系, 脳神経系へのリスクは - 9,900万人のデータを分析

2024-02-08

crisp_bio 2024-02-08 新型コロナ:妊婦へのCOVID-19ワクチン接種は、新生児有害転帰のリスクを高めず, いくつかの有害事象に対する予防効果をもたらした (2報)

2024-02-02 XBB.1.5対応ワクチンはJN.1に対しても有効
[
出典] 複数のオミクロン変異体が流行している中での症候性感染に対するCOVID-19ワクチンの有効性: Link-Gelles R, Ciesla AA, Mak J, et al. "Early Estimates of Updated 2023–2024 (Monovalent XBB.1.5) COVID-19 Vaccine Effectiveness Against Symptomatic SARS-CoV-2 Infection Attributable to Co-Circulating Omicron Variants Among Immunocompetent Adults — Increasing Community Access to Testing Program, United States, September 2023–January 2024". MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2024;73:77–83. http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7304a2

1. これまで

  • 2023年9月、米国CDCの予防接種の実施に関する諮問委員会 (Advisory Committee on Immunization Practices: ACIP) は、重症化を含むCOVID-19を予防するため、生後6カ月以上のすべての人に2023-2024年 (一価XBB.1.5 )COVID-19ワクチン接種を推奨した。
  • 2023年秋に多くの変異型が同時流行し、2024年1月にはJN.1系統が優勢となった。
  • 2023-2024年の最新のワクチン効果 (Vaccine Effectiveness: VE) の推定値はほとんど得られていなかった。

2. 新たに分かったこと

  • 更新されたCOVID-19ワクチンを接種することで、更新されたワクチンを接種しない場合と比較して、症候性サーズウイルス2感染に対する予防効果が約54%増加した。
  • ワクチン接種により、JN.1および他の流行中の系譜 (ciculating linage) [*]に対する防御が得られる。
    [*] 日本感染症学会:STRAIN (株, 系統);VARIANT (変異体, 変異株, バリアント);LINEAGE (系譜, 系統, リネージ);CLADE (クレード, 系統群, 分岐群);ウイルス研究領域で必ずしも単一の訳語が使用されているわけではないため, 1対多の日本語訳になっている。

3. 今後

  • 生後6カ月以上のすべての人は、2023-2024年に更新されたCOVID-19ワクチンを接種すべきである。
  • CDCは、重症化や効果の減弱化を含むCOVID-19 VEのモニタリングを継続する。

2014-01-31 mRNAワクチン接種は幼児も効果的に保護する

[出典] "Humoral profiles of toddlers and young children following SARS-CoV-2 mRNA vaccination" Nadège Nziza N, Deng Y, Wood L [..] Yonker LM. Nat Commun. 2024-01-30. https://doi.org/10.1038/s41467-024-45181-7 [所属] Ragon Institute of MGH/MIT/Harvard, MIT, Boston Children’s Hospital, Massachusetts General Hospital, Harvard Medical School, Brigham and Women’s Hospital.

 mRNA-1273 COVID-19ワクチン (25μg) を接種した生後6カ月から5歳の小児コホート (19人)の抗体応答をプロファイリングし、サーズウイルス2に自然感染した幼児 (8人)、および成人と比較した。mRNAワクチン接種を受けた幼児は、免疫系が発達中で脆弱であり、また、接種量が成人の4分の1であるが、成人と同程度の強い抗体応答を誘発し、成人と比較して高い抗体依存性貪食作用を示した。また、副作用の報告はなかった。

 さらに、mRNAワクチン接種は、自然感染と比較して、サーズウイルス2に対するより高いIgG3依存性体液性免疫応答と関連しており、mRNAワクチン接種が幼児において強固な抗体応答を誘発するのに有効であることを裏付けた。

 解析したコホートの規模は小さいが幼児のワクチン接種に関する貴重なデータが得られた。

2024-01-18
crisp_bio 2024-01-18 COVID-19ワクチンは新型コロナ後遺症のリスクを低減する:英国, スペイン, およびエストニアの大規模コホート解析の結果から


2023-12-18 
粘膜および全身に強力な免疫応答を誘導する、吸入可能・非侵襲的・単回投与・乾燥粉末エアロゾルワクチンが開発された

[出典] "Inhaled SARS-CoV-2 vaccine for single-dose dry powder aerosol immunization" Ye T, Jiao Z, Li X, He Z [..] Wang H, Zhu L, Ma G, Wei W. Nature 2023-12-13. https://doi.org/10.1038/s41586-023-06809-8 [著者所属] 中国科学院過程工程研究所, 北京理工大学, 北京協和医学院, 北京化工大学, 首都医科大学, 中國人民解放軍軍事科學院実験動物センター, Sinovac Life Sciences Co Ltd, 中国科学院大学, U Queensland.

 サーズウイルス2が蔓延していく中で、ウイルスベクターワクチン、不活化ワクチン、タンパク質サブユニットワクチン、さらにはmRNAワクチンがこれまでにない短期間で開発・接種されたが、著者らは今回、標題ワクチンが、マウス、ハムスター、および非ヒト霊長類において、サーズウイルス2に対して効果的な防御をもたらすことを、実証した。

  • サーズウイルス2のACE2受容体結合ドメイン (RBD)抗原を提示するタンパク質性コレラ毒素Bサブユニット (cholera toxin B subunit: CTB)からなる自己集合型ナノ粒子 (self-assembled nanoparticle (CNP): R-CNP) を、多孔性ポリ乳酸-グリコール酸 (PLGA) マイクロカプセル (Microcapsules) に封入する。
  • このR-CNP@Mは空気力学的直径が1~4μmへと最適化され、排出あるいは気管支などの内膜への吸着が抑制されて、肺の深部 (肺胞) にまで到達する。これまでの鼻腔内投与や吸入型ワクチンが液状であったのに対して、乾燥粉末エアロゾルとしたこともその成功の一因であり、また、乾燥粉末エアロゾルは、ワクチンの保存や運搬も容易にする。
  • マイクロカプセルの緩やかな分解とともに、R-CNPが徐々に持続的に放出され (徐放性)、抗原提示細胞 (APC)によって内在化され、モデル動物において高いIgGおよびIgA産生を誘導する強力なT細胞およびB細胞応答をもたらす [注] これまでの筋肉注射型ワクチンのほとんどは筋肉内注射によって投与され、血清学的IgGの産生を誘導することによってウイルスの感染性を中和し、COVID-19を緩和する。しかし、筋肉注射によるワクチンは、分泌型IgAおよびIgGが欠乏しているため、呼吸器における第一線の防御にはならない
  • 単回投与後、モデル動物において高いIgGおよびIgA産生を誘導する。
  • さらに、野生型の抗原 (RWT) にオミクロン株の抗原 (RO) も組み合わせた"モザイク"ワクチンRWTRO-CNP@Mは、異なるサーズウイルス株の共循環対して、双方の感染を予防する可能性を示す [出典Figure 5参照]。

2023-12-13 [ニュース] 自己増幅RNAワクチン、日本が世界に先駆けて初承認:続くのは? (レプリコンワクチン)


2023-11-15 サーズウイルス2感染により脳細胞の老化が誘導されること、老化細胞の除去による治療の可能性があること、が報告された

crisp_bio 2023-11-15  ヒトの脳の生理的老化と新型コロナによる老化を緩和する老化細胞除去 (senolytic)


2023-11-05 感染研所長「
新型コロナウイルス感染症に関して国立感染症研究所所長の見解とする一部SNSにおける投稿について」のメッセージを発信
[出典] 国立感染症研究所 所長 脇田 隆字 Webサイト 2023-10-30. https://www.niid.go.jp/niid/ja/others/12342-2023-10-30.html

[注] 全文を以下に引用させていただきましたが、crisp_bioは本ブログ記事内で下線を施した部分 (特に太字にした部分)に注目しました。crisp_bio
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、ウイルスゲノムの変異を繰り返しながら世界中に広がっています。日本国内でも数次に渡る流行を経験し、感染管理や行動自粛、ワクチンなど様々な対策が実施されてきました。今年5月8日に感染症法上5類に指定されましたが、現在も市民の皆様をはじめ、医療従事者や高リスク者のケア従事者、自治体など様々な人々による感染対策が行われています。

10月28日に私たちは感染研の業務やサイエンスの楽しさを知っていただくため、戸山庁舎の一般公開を実施しました。私は4年ぶりに来場者と直接お話する機会を得ました。私にとって生の声を伺うことは大変貴重であり、500人以上の来場者の方々とお話をさせていただくことができました。

その中で、私の意図とは異なる内容が、私の言葉としてSNS等で広まることとなってしまったため、ここで改めて見解を述べさせていただきます

●ワクチンの重症化予防を示す国内のデータ

新型コロナワクチン(mRNAワクチンを含む)が新型コロナウイルス感染症による重症化、入院及び死亡を減らすことは、多くの適切にデザインされた研究に基づいて実証されており、学術的に確立された知見です[1-3]。これは日本国内で実施された複数の研究でも確認されています[4-10]。WHOの予防接種に関する戦略諮問委員会(SAGE)は、こうした学術的知見に基づいて、重症化、入院、死亡のリスクが高い集団に対してワクチン接種を行うことは公衆衛生上の最優先事項であるとしています[11]。

  1. https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD015477/full#CD015477-abs-0002
  2. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2023.1113156/full
  3. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001144459.pdf
  4. https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/12019-covid19-9999-2.html
  5. https://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/versus/results/20230725.html
  6. https://academic.oup.com/ofid/article/10/10/ofad475/7320084
  7. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0264410X22013706?via%3Dihub
  8. https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/28/9/22-0377_article
  9. https://www.thelancet.com/journals/lanwpc/article/PIIS2666-6065(22)00186-9/fulltext
  10. https://www.nature.com/articles/s41598-023-44942-6
  11. https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-Vaccines-SAGE-Roadmap
●超過死亡の原因

「新型コロナウイルスのワクチン接種が原因で超過死亡が発生した」と考えられる科学的根拠は、現時点において確認されていません。
2020年以降の超過死亡の発生については、以下の複数の要因が影響したと考えられています。

① 新型コロナウイルス感染症を直接の死因と診断され、実際に新型コロナウイルス感染症を原因とする死亡
② 新型コロナウイルス感染症を直接の死因と診断されたが、実際には新型コロナウイルス感染症を原因としない死亡
③ 新型コロナウイルス感染症が直接の死因と診断されなかったが(他の病因を直接の死因と診断された)、実際には新型コロナウイルス感染症を原因とする死亡
④ 新型コロナウイルス感染症が直接の死因ではないが、感染症流行による間接的な影響を受け、他の疾患を原因とした死亡(例えば、病院不受診や生活習慣の変化に伴う持病の悪化による死亡)
⑤ 新型コロナウイルス感染症が直接の死因でなく、また新型コロナウイルス感染症流行による間接的な影響を受けたものでもない死亡

なお、上で述べたように、新型コロナワクチンは重症化及び死亡を減らす効果があることが知られています。

今後も私を含め当所の職員一同は、市民の皆様の健康と安全の維持に寄与するために、より早く、より分かりやすく、より有益な情報を発信して参ります。
一人でも多くの皆様に、正しい情報が届き、活用していただくことを願っております。
//

2023-10-22 [crisp_bio] サーズウイルス2感染前のワクチン接種が、ロングCOVID (後遺症) のリスクを大幅に減少させる (2報)

2023ー10-02 mRNAワクチンの基盤技術, 2023年ノーベル生理学・医学賞を受賞
 crisp_bio "2023年ノーベル生理学・医学賞受賞: 2021年生命科学ブレークスルー賞受賞から2年"

2023-06-29 ワクチン接種にロングCOVID (COVID後遺症)抑制効果があるエビデンスが蓄積されてきている
 crisp_bio記事「新型コロナウイルス感染症の後遺症 (罹患後症状); ロングCOVID」の「2023-06-29 ロングCOVIDからの回復、予防、治療」の項参照 
 

2023-06-25 オミクロンBA.5株対応二価ワクチンの、これまでの有効性と、その後優勢になってきたXBB1.5/XBB.1.6に対する有効性
[出典] "Effectiveness of Up-to-Date COVID-19 Vaccination in Preventing SARS-CoV-2 Infection Among Nursing Home Residents — United States, November 20, 2022–January 8, 2023" CDC Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR). 2023-06-23. https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/72/wr/mm7225a4.htm?s_cid=mm7225a4_w
 COVID-19に対して、高齢、基礎疾患および集団生活というリスク要因を伴った老人ホーム居住者の場合、オミクロンBA.5株対応二価ワクチンのブースター接種は、SARS-CoV-2感染を非接種者から31.2%抑制する効果を示した [米国での14,464ヶ所の老人ホームからのデータ:接種者感染率 12.3% (52,853/4,314,714); 非接種者感染率 16.6% (77,240/4,648,119)]。
[出典]「新型コロナワクチンの接種について」 第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料1-1" 厚生労働省 2023年6月16日. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001108598.pdf
 この資料では、諸外国の施策や調査解析結果も参照しつつ、「現在の流行の主流であるXBB.1系統に対しては、オミクロン株対応2価ワクチンでは中和抗体価の上昇が低いこと、また、XBB.1系統内の様々な変異体の抗原性の差は小さいと考えられることから、2023年秋以後は、XBB.1系統を含有するワクチンを用いることが妥当」という方向になっている。 [注] ワクチンが変異を追いかけている状況が続くことになる
 ワクチンの安全性については、米国からの報告と国内の状況から、有効性が上回ると判断している。なお、死亡例については国内ではファイザー・ビオンテックならびにモデルナのワクチンについてそれぞれ、4回目 61件(100万回接種あたり1.4件) 5回目 67件(100万回接種あたり2.3件)ならびに4回目 27件(100万回接種あたり1.7件) 5回目 3件(100万回接種あたり2.3件)と報告されている。
 

2023-02-27 鼻スプレー型のインフルエンザワクチン
 「フルミスト点鼻液」の日本での製造販売が、27日に開催された厚労省の専門部会で了承された [日本経済新聞 2023-02-27 20:39更新]。米国FDAはこのワクチンを2003年に認可し、日本では、2016年2月に第一三共が承認申請していた。なお、これまで日本で接種されてきたインフルエンザワクチンは不活性化ワクチンであるが、フルミストは、インフルエンザウイルスを弱毒化した生ワクチンである。今後、新型コロナウイルスに対する点鼻型ワクチンも期待したい。

2023-02-17 COVID-19パンデミックが、日本をワクチン研究開発強化へと突き動かした

- 感染症・ワクチン研究・製造のインフラを再構築するための大規模な資金調達の試み

[注]  先進的研究開発戦略センター(Strategic Center of Biomedical Advanced Vaccine Research and Development for Preparedness and Response:SCARDA

[出典] NEWS "Japan moves to bolster vaccine R&D after COVID-19 exposed startling weakness" Normile D. Science 2023-02-09 12:15 PM. https://doi.org/10.1126/science.adh0968

 COVID-19パンデミックによって日本のワクチン研究開発能力が脆弱であることが露呈した。例えば、日本の規制当局が日本初の国産COVID-19ワクチンの認可を検討しているのは、多くの後進国が独自のワクチンを開発してから数ヵ月後のことである [参考:crisp_bio 20220604更新]。日本は2022年、多くの国々が採用している目標である「新興ウイルスに対するワクチンを100日以内に開発する能力を備える」ことを目指して、1兆1000億円(85億ドル)を投じることを決断した。この資金は今、基礎・応用研究、ワクチン候補の臨床試験、産業界のワクチン製造能力の拡大などに流れ始めている。

 この構想にはすでに解決するのが簡単ではない課題が見えている。研究開発を実施する側は、研究者にとって安定したポジションが不足しているため、特に若手が研究に進むのを躊躇している現状に対処できないのではないかと懸念している。また、2027年3月の第1回目の助成金終了後も、政府が助成金を継続することを確約しているかどうかも不透明である。

 日本のワクチン産業の衰退は、何年も前から始まっていた。東京大学とウィスコンシン大学マディソン校のウイルス学者である河岡義裕氏 は、「過去15年から20年の間、感染症研究への資金は年々減少し、この分野に進む若手研究者も減少した」と言う。デロイト トーマツ コンサルティングが2021年3月に発表した報告書によると、パンデミック前の日本のワクチン関連研究費は米国の2%未満で、英国、ドイツ、中国にも及ばなかった。

 2010年代後半に独立行政法人医薬基盤研究所のワクチン研究者であった石井健氏は、中東呼吸器症候群(MERSコロナウイルス感染症)のワクチン開発に当時発展しつつあったメッセンジャーRNA(mRNA)技術を採用したが、政府と日本の製薬会社も、そのヒトでの安全性試験への資金を提供することはなく(declined to fund )、「プロジェクトは凍結」と、現東京大学の石井氏 は言う。

 また、COVID-19パンデミックの中、2021年に発表されたCOVID-19を対象とする研究論文著者で最も引用された300人のリストに名前を連ねた日本人研究者はわずかに2人であった。これは、人口や研究施設が遥かに少ないイタリアと香港からそれぞれ18人と14人の研究者が含まれていたのと対照的である。

 先進的研究開発戦略センターSCARDA濱口道成センター長は、「米国や他の国々が自国民のためにワクチンを囲い込むのではないかと懸念される中、日本の政府関係者は『自分たちが守るべき日本国民を救うことができないのではないか』と危惧し、この恐怖(scare)が国内におけるワクチン研究開発の再構築に向かわせた」と述べた。

 他国に遅れをとったが、日本の製薬会社のCOVID-19ワクチンが形になりつつある。第一三共はCOVID-19に対するmRNAワクチンの販売を許可するよう規制当局に要請した。同社はこのワクチンをブースター・ショットとして提供する予定である。塩野義製薬も最近、タンパク質サブユニットのCOVID-19ワクチンを販売するための認可を申請した。規制当局がいつ決定を下すかは不明であるが。

 今回の日本のイニシアチブは、2022年3月に米国の生物医学先進研究開発局(Biomedical Advanced Research and Development Authority:BARDA)を参考にしたと思われるSCARDAの設立から始動した。SCARDAは、コロナ、インフルエンザ、ジカ、デング、ニパ、天然痘などのウイルスに対するワクチンの研究開発を支援するが、特に、研究者提案の研究プロジェクトに11億ドルの助成金を提供する予定である。

 その資金のうち4億ドル近くは、東京⼤学新世代感染症センター(ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点群 東京フラッグシップキャンパス;UTOPIA /University of Tokyo Pandemic preparedness, Infection and Advanced research;初代センター長 河岡義裕)と4大学のシナジー拠点および支援機関に投じられる。旗艦であるUTPOIAは感染症研究のトップレベルでの競争力を持つこと目指し、4シナジー拠点はそれぞれ、顧みられない熱帯病に対するワクチンや、喉や鼻腔に噴霧できるコロナウイルスワクチンなどの研究開発に取り組む予定である。このほかに、ワクチン関連の新興企業への助成に27億ドル、ワクチン製造プロセス強化に17億ドル、大規模臨床試験の支援とCOVID-19ワクチン購入に20億ドルを投与する予定である。

 このSCARDAからの新しい資金によって、研究所が十分な人材を雇用し維持することができるかどうかは、特にこのイニシアチブ継続の不確実性を考えると、先行き不透明である。国立国際医療研究センター研究所の満屋裕明所長  は、「研究チームを再建するには時間と資金が必要であり、それを維持しなければならない」と言う。また、満屋氏は、5年後には政府の優先順位が変わっていることを危惧している [*]。日本のワクチン研究開発のインフラを回復させるには、「より多くの資金と、新たにワクチン研究分野に参入する(entry-level)研究者のポジションの確保から始める必要がある」と満屋氏は言う。

[*] crisp_bio:CVOID-19の感染症状の分類は2類から5類に変更になる。「恐怖」から始まった施策は、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の轍を踏むのではなかろうか。また、独立行政法人医薬基盤研究所時代の石井健氏のエピソードも興味深い。政府や製薬企業が資金提供をしなかったことは、少なからず、当時の日本の学術・応用研究を方向づける層に、mRNAワクチンの実用化の可能性を見る目利きがいなかったことを示唆するからである。ファイザー・ビオンテックのmRNAワクチン"コミナティ開発に貢献したKatalin Karikó (カタリン・カリコー)も、研究の評価でも、研究資金の面でも、決して、恵まれていたわけではなかったが、基礎研究を継続できる場所と資金を繋ぐことができ、また、ビオンテックという目利きのベンチャー企業が現れたことで、mRNAワクチンが実現した [crisp_bio 新型コロナウイルス mRNAワクチン開発の舞台裏から,研究助成のあり方を考える]。


2023-02-1319 mRNAワクチンの死亡率抑制効果
 
Our World in Dataのスタッフが、そのWebサイトで公開していたワクチン接種の状況と死亡率の関係に関する記事のうち、米国の例を取り上げた部分(左下図参照)と、「ウイルス死亡者の○○%がワクチン接種をしていた」という言い方は、ワクチンの効果については何も語っておらず、百害あって一利なしの言い方である解説の部分(右下図参照)を、以下の2つの図にまとめた:

スクリーンショット 2023-02-13 16.18.27    スクリーンショット 2023-02-13 16.19.19
[出典] "How do death rates from COVID-19 differ between peonle who are vaccinated and those who are not?" Edouard Nathieu and Max Roser. Our World in Data 2021-11-23. https://ourworldindata.org/covid-deaths-by-vaccination

2023-02-03

新型コロナウイルスのワクチンの次は?不確実性の中での科学者と規制当局の舵取り-米国FDAの諮問員会は2023年1月16日に、COVID-19ブースターワクチンを毎年秋接種へと移行するというFDAの提案に大筋で合意した。

[出典] "What’s next for COVID-19 vaccines? Scientists and regulators chart a course amid uncertainty" Couzin-Frankel J (a reporter at Science). Science. 2023-01-25. https://doi.org/10.1126/science.adg8531

 今からちょうど二年前にワープスピードで開発された新型コロナウイルス・ワクチンの接種が始まった。しかし、このワクチンは重症化を防ぐことはできても、感染を防ぐ効果は限定的であり、また、短期間で効果が失われていくことが、徐々に明らかになった。その間に、新型コロナウイルスの急速な進化も始まり、免疫を回避する変異を獲得した型のウイルスの感染が優勢になることが繰り返されるようになった。世界的に優勢な変異株オミクロン株に適応したワクチンが昨年秋に開発され、現在までに、多くの人々が4〜5回のワクチン接種を受けている。

 科学者と規制当局は新型コロナワクチンについて議論を続けてきた。どのくらいの頻度でブースター接種をする必要があるのか? 誰が接種の対象になるのか?ワクチンは新たな亜種の出現に応じて更新され続けられるべきなのか? COVID-19感染とワクチン接種を受けた人の防御はより強く長くなるのか?26日の諮問員会でもこれらのいくつかについて議論し、冒頭の合意に至った。

 FDAの説明文書によると、FDAは、コロナウイルス株を「少なくとも年1回」評価し、「秋シーズンの株の選択に関して毎年6月上旬に」アドバイザーと協議することを想定している。したがって、遅くとも毎年9月には、すべての人のための新しいワクチンが展開されることになろう。

 Emory Vaccine DenterのディレクターRafi Ahmedによると、「年に一度のワクチン接種は、頻繁なブースター注射をするよりも混乱が少なく、またインフルエンザと同じように『流行する変異型にワクチンを打つ』ことは理にかなっている」と多くの研究者が同意しているとのことである。しかし、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスには決定的な違いがある。インフルエンザは季節性だが、コロナウイルスは季節性ではなく一年中流行し、インフルエンザでは滅多にないことだが、8月にCOVID-19に感染した人は、新型コロナウイルスに対する免疫が維持されているかもしれない秋にも予防接種を受けるかどうかを判断することになる。

 また、年1回の接種で1年間十分な予防効果が維持されるかは、現時点では、不明であり、また、年齢などに依存するかもしれない。CoVaRR-Netの共同責任者であるトロント大学のJennifer Gommermanは、「耐久性は解決すべき課題です」と言う。ヒト血中のSARS-CoV-2抗体の解析が盛んに行われてきたが、SARS-CoV-2の感染を防御するに十分な抗体のレベルはまだ確定されていない。

[注] Science 記事は、オミクロン株に対応したニ価ワクチンの評価、SARS-CoV-2感染とワクチン接種によるハイブリッド免疫の有効性、ブースター接種の普及の問題、mRNAワクチンに対する警戒感、経鼻ワクチン[*]の可能性、についても論じている。
[*] 本記事2022-10-29の投稿および新型コロナウイルス: ワクチンに関する雑感と専門家からの情報 (1)の2022-08-26投稿参照 


2023-01-30 オミクロン株感染がもたらす妊娠合併症のリスク増加に対してワクチン接種が有効である

[出典] "Pregnancy outcomes and vaccine effectiveness during the period of omicron as the variant of concern, INTERCOVID-2022: a multinational, observational study" Villar J, Soto Conti CP, Gunter RB et alI.; INTERCOVID-2022 International Consortium. Lancet 2023-01-17. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(22)02467-9;NEWS "Vaccination provides effective protection against increased risk of pregnancy complications due to COVID-19 Omicron variant"  University of Oxford. 2-23-01-17. https://www.ox.ac.uk/news/2023-01-17-vaccination-provides-effective-protection-against-increased-risk-pregnancy

 オックスフォード大学のOxford Maternal and Perinatal Health Institute (OMPHI)が主導する国際研究ネットワークが、18カ国41病院で実施した「2022 INTERCOVID Study」の結果をLancet 誌に発表した [日本からの共著者は慈恵医科大学高橋 健助教と慶應大学医学部池ノ上 学助教の模様]。

 オミクロン株が母体および新生児の転帰に与える影響を評価するため、2021年11月27日から2022年6月30日の間行われた「オミクロン株感染と診断された妊婦1,545人と、対照として、オミクロン株感染と診断されなかった妊婦3,073人を対象とする調査」の結果である。また、オミクロン株に対するワクチン効果の評価結果も発表された。

 妊娠中のオミクロン株感染が、特にCOVID-19の症状のある女性やワクチン未接種の女性において、母体の病的状態、重度の妊娠合併症、入院のリスク上昇と関連していた。特に、重症の女性では子癇前症のリスクが増加した。肥満・過体重の女性で重症の場合、母体の罹患率と重篤な合併症のリスクが最も高くなった。

 ワクチン接種を受けた女性は,重度の COVID-19 症状と合併症から十分に保護されており,集中治療室への入院リスクは極めて低かった。COVID-19の重篤な症状や合併症を予防するためには、女性が完全にワクチンを接種しできればブースターも接種することが必要である。

 今回の研究では、mRNAワクチンがCOVID-19の重症化と合併症の予防に最も効果的であったが、ブースター付きのウイルスベクターワクチンも、mRNAワクチンと共に、最終接種から少なくとも10カ月間は十分な予防効果を発揮した。

 INTERCOVID 2022の共同責任者であるオックスフォード大学周産期医学のJosé Villar教授は、「(本研究の結果から)特に懸念すべきことは、妊娠中にCOVID-19オミクロン株感染と診断されたワクチン未接種の女性の4%から7%に重篤な症状が発生したことであり、妊娠中の完全ワクチン接種、できればブースター接種、の必要性を明確に示されました。世界中の産科医療サービスは、妊婦のルーチンケアにCOVID-19に対するワクチン接種を含めるように努力すべきです」と述べた。

 また、INTERCOVID 2022の共同責任者であるオックスフォード大学胎児医学のAris Papageorghiou教授は、「オミクロン株は一般集団におけるこれまでの変異体よりも害が少ないかもしれませんが、世界中でワクチン未接種の妊婦の大部分が大きなリスクを抱えていることに変わりはありません。誰が重篤な症状や合併症を発症するかを予測することは不可能であるため、まずは完全接種が必要です。残念ながら、妊婦の完全なワクチン接種率は、先進国でもまだ不十分です」と述べた。

 INTERCOVID 2022の共同研究者であるオックスフォード大学生殖医学のStephen Kennedy教授は、「今回の調査結果と、私たちのこれまでのINTERCOVID研究から得られた知見は、臨床と公衆衛生政策を、すべての妊婦へのワクチン接種を推奨する方向へと変えることに貢献しました。私たちの研究が、パンデミックやワクチンの効果に関して流布しているかなりの誤報を否定する一助となることを願っています」と述べた。

2023-01-12 XBB変異株に対するオミクロンBA.5株対応二価ワクチンの効果は?
 XBB変異株、中でもXBB.1.5亜型、が米国東北部では最も優勢になり、米国内およびEric Topol欧州とアジアでも感染が拡大する気配がある。Scripps Research InstituteのEric Topolによると、BA.5二価ワクチンがXBB.1.5に対する中和抗体を誘導するデータが公表され、また、米国CDCが「BA.5二価ワクチンをブースター接種した65歳以上の人は入院する確率が80%も低くなる」と発表したのことである [Eric Topolのツイート@EricTopol から引用した右図参照]

2022-12-13 COVID-19ワクチン接種後およびSARS-Cov-2感染後の体位性頻脈症候群のリスク

[注] 位性起立性頻脈症候群(postural orthostatic tachycardia syndrome: POTS / ポッツ

[出典]

論文 "Apparent risks of postural orthostatic tachycardia syndrome diagnoses after COVID-19 vaccination and SARS-Cov-2 Infection" Kwan AC, Ebinger JE, Wei J et al. Nat Cardiovasc Res 2022-12-12. https://doi.org/10.1038/s44161-022-00177-8 [著者所属] Cedars-Sinai Medical Center, Brigham and Women’s Hospital

News & views "The risks of POTS after COVID-19 vaccination and SARS-CoV-2 infection: it’s worth a shot" Blitshteyn S, Fedorowski A. Nat Cardiovasc Res 2022-12-12. https://doi.org/10.1038/s44161-022-00180-z [著者所属] U Buffalo, Dysautonomia Clinic,  Karolinska Institute

 米国ロサンジェルスのCedars-Sinai Medical CenterにボストンのBrigham and Women’s Hospitalが加わった研究チームが、2020年から2022年の間にシーダーズ・サイナイ・ヘルス・システム内の284,592人のCOVID-19ワクチン接種者COVID-19患者12,460人のデータの解析から、2つのコホートのポッツ診断・リスクを評価・比較した。

 その結果、ワクチン接種後90日目のポッツ診断の確率が接種前の90日目よりも高く (0.18% → 0.27%)、これまでのプライマリケアにおける診断時の確率よりも高いこと、しかし、SARS-CoV-2感染後の診断確率の5分の1程度であることを見出した [1.73% → 3.42%;参考図 New & viewsのFig. 1 "ポッツの既知のトリガーならびに新型コロナワクチン感染後とワクチン接種後の比率"]。

 今回の結果を普遍化するには、コホートの背景情報の偏りやポッツ診断 (例えば、一定の症状が90日以上継続することが前提) が課題となるが、COVID-19パンデミックの観点からは、ポッツまたはポッツ関連合併症が、COVID-19ワクチン接種の有害事象として心筋炎よりも高頻度で発生する表現型であり、また、COVID-19後遺症においても主要な表現型であること、を学んでおく必要がある。また、ポッツのワクチン接種後の診断確率が、COVID-19感染後の5分の1であることから、ワクチン接種を試みる価値はある [*]ことも認識しておきたい [* New & viewsのタイトル中の"It's worth a shot "で、米国では日常"It's worth a try"の意味で使われるが、ここでは、ワクチン接種を意味する"shot " と掛けたものと思われる]。
 

2022-12-04 感染して免疫を獲得するか、ワクチン接種で免疫を獲得するか

 「過去に感染が広がった国や地域に比べて、感染が比較的広がっていなかった国や地域で、感染が拡大している」説が広がっている。日本もこの仮説に当てはまるのだろうか。忽那賢志感染症専門医が、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードでの「日本における抗体陽性率の調査結果」をベースに解説している。本ブログ記事は出典に準拠はしているが、一部、crisp_bioの私見も含まれている。
[出典] “日本に住む4人に1人、沖縄県の2人に1人はすでに新型コロナに感染している 抗体調査から分かることは?” 忽那賢志. Yahoo News 2022-12-03 15:36
 今回の抗体調査は、2022年11月に日本赤十字社で献血した16歳~69歳の8,260名を対象に、SARS-CoV-2感染者だけが陽性になるN抗体を測定した結果に基づいている。2020年の6月、12月、2021年の12月、2022年2月に続き5回目の調査の結果である。なお、N抗体はワクチン接種者では陽性にならないが、S抗体は感染者だけでなくワクチン接種者も陽性になる。
 今回、N抗体陽性率は全国で見ると26.5%であったが、各都道府県で変動し、また、各都道府県の陽性率と人口あたりの感染者数が相関していた。10月から11月下旬の間の日別陽性者数7日間移動平均で見ると、陽性率が46.6%と最も高かった沖縄県が250人台から400人台へと推移したのに対して、陽性率が9.0%と最も低かった長野県も880人台から2,800人台まで大幅な上昇が続き、また、北海道の陽性率は22.4%と沖縄の約2分の1であったが、3,000人台から8,400人台まで上昇が続き、最近では、連日過去最多を繰り返した。尤もこの3道県の比較だと、気温の影響があったことも拭い切れないが。
 年代別には、陽性率は16~19歳の38%から60~69歳の16.5%まで年代ごとに低下したが、男女差は見られなかった。
 さて、N抗体陽性率から単純に外挿すると、日本では概ね3,300万人が新型コロナに感染したと想定されるが、2022年12月3日の時点で、全国の感染者数はおよそ2,500万人であったことから、診断を受けないままの感染者がおよそ800万人発生していたことになる。
 また、陽性率の変化を時期的に見ると、陽性率が5%未満(2022年2月まで)から26.5% (2022年11月)へと、オミクロン株が優勢になってから急上昇しており、オミクロン株の感染力の強さに加えて、「風邪のようなもの」として自己規制が緩んだことの影響も否定しきれない。

 海外の例では、N抗体陽性率が8割を超え、S抗体の陽性率も90%を超え、多くの人々が感染とワクチン接種による強固な「ハイブリッド免疫」を獲得したと考えられるイギリスでは、人口100万人あたりの日別感染者数7日間移動平均は、2022年1月には2,600人を超えたが、その後、3月, 7月, 10月とのピークかを迎えながらおおむね低下し現在は、50人弱で推移している。従って、イギリスは今や、マスクを装着しなくても、感染が広がらない状況に至ったと考えられる。一方で、人口100万人あたりの累積死亡者数を見ると、イギリスは日本のおよそ8倍になり、イギリスそうした犠牲の上にマスクフリーの状況に達したとも言えよう [左下図に日英の人口100万人あたりの日別感染者数の7日間移動平均の推移、右下図に日英の人口100万人あたりの累積死者数の推移を、Our World In Dataサイトから引用]

感染者数推移 累積死者数
 一方で、この夏以後の人口100万人あたりの日別死者数の7日間移動平均を日英で比較すると、1112日から日本が英国を上回り、日別死者数推移その後、123日までほぼ増加し続けている [右図に、日英の人口100万人あたりの日別死者数の7日間移動平均の推移をOur World In Dataサイトから引用]。ただし、英国は1118日から30日までゼロが続いたのち、121日に突然急上昇し、現時点では122日と3日のデータが表示されていないので、英国では18日から集計に問題が起きていたのかもしれない。

 いずれにしても、日本が今後、死亡を抑制しつつハイブリッド免疫の獲得者を増やすには「急激な感染拡大を招かない」「重症化リスクの高い人を中心にワクチン接種を始めとする防御策を継続すること」が重要と考えられる。ワクチン接種の効果については、米国CDCが、COVID-19感染時のワクチン非接種者のワクチン接種者と比較した入院リスクを以下のように報告している [20229月時点 https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#covidnet-hospitalizations-vaccination]5-11 ワクチン接種者の1.5倍;12-17 ワクチン接種者の1.6倍;18-49 ワクチン接種者の3.5倍;50-64 ワクチン接種者の4.2倍;65歳以上 ワクチン接種者の4.5倍。なお、65歳以上の場合、ブースター2回接種によって、入院リスクが80%以上低減する。

2022-11-27 mRNA-脂質ナノ粒子ワクチンにより, マウスとフェレットを, これまでに知られている全てのインフルエンザウイルスから保護することに成功
[crisp_bio注]インフルエンザ・ワクチンに関する進展ではあるが、新たなmRNAワクチンという観点から取り上げてみた。なお、mRNAワクチンについては、SARS-CoV-2ワクチン開発以後、今回のインフルエンザウイルスに加えてHIVなどの各種ウイルス感染症、マラリア原虫などによる感染症、がんなどを標的として、その研究開発が加速されている。
[出典] 
A multivalent nucleoside-modified mRNA vaccine against all known influenza virus subtypes" Arevalo CP [..] Hensley SE. Science 2022-11-25/11-24.  https://doi.org/10.1126/science.abm0271 [著者所属] U Pennsylvania, U Pittsburgh School of Medicine, Fred Hutchinson Cancer Center, Acuitas Therapeutics (Vancouver);論文紹介記事 "The influenza universe in an mRNA vaccine - An mRNA–lipid nanoparticle vaccine protects animals from 20 influenza lineages" Kelvin AA, Falzarano D. Science 2022-11-24. https://doi.org/10.1126/science.adf0900 [著者所属] U Saskatchewan"
 季節性インフルエンザワクチンには、パンテミックインフルエンザウイルス株を予防する効果がほとんどない。また、どの亜型 (subtype) がパンデミックを引き起こすか予測不能なため、これまでの手法でパンテミックワクチンを予め作成することは困難である。
 ペンシルベニア大学を主とする研究チームは今回、20種類すべてのA型インフルエンザウイルスおよびB型インフルエンザウイルスの代表的なヘマグルチニン抗原 (HA)をコードするヌクレオシド修飾メッセンジャーRNA(mRNA)-脂質ナノ粒子 (LNP) ワクチン "20-HA mRNA-LNPs"を開発し、この多価 [*] ワクチンが、マウスとフェレットにおいて、選択した20種類すべての抗原に反応する交差反応性およびサブタイプ特異的な抗体を高レベルで誘発することを、明らかにした [*] ファイザー/ビオンテックとモデルナのオミクロン株BA.5対応ワクチンは、オミクロン祖先型とBA.5変異型の2種類を標的とした2価ワクチン

  20-HA mRNA-LNPsの接種はHAのストーク領域に対する抗体を誘発し、ワクチンの成分と一致するインフルエンザだけでなく一致しない(または異種の)インフルエンザウイルスに対する一定の保護も、もたらした。前者については肺感染を完全に阻止し、後者に対しては肺への感染が見られるが重症化と死亡から保護した。この保護機構として、非中和抗体と抗体依存性細胞障害性( antibody-dependent cellular cytotoxicity: ADCC)が同定されたが、細胞性免疫の関与はほとんどないことが示唆された。
  20-HA mRNA-LNPsやその他のmRNAインフルエンザウイルスワクチンは、パンデミック対策の観点からは 、ニワトリの有精卵での増殖を経る不活性化ワクチンよりも極めて短期間でスケールアップ可能という利点があるが、ヒトの間ではまだ流行していないウイルスに対するワクチンの治験承認をどのように進めるかについて、次のパンデミックに備えて議論を始めておく必要がある。

2022-11-15_2 国産ワクチン承認なるか
 第一三共が、現在独自開発中のmRNAワクチンの最終段階の臨床試験の結果、3回目の接種用として、ファイザーやモデルナのワクチンと同じ程度の有効性が確認できたと発表した [NHK 特設サイト 新型コロナウイルス / ワクチン接種 日本国内の状況は 2022-11/15]

2022-11-15_1 BA.5に対する二価ワクチンの評価更新 [Eric Topolのツイートから]  
 これまで6種類であった一覧表にスクリーンショット 2022-11-15 8.14.11モデルナ社のBA.5対応二価ワクチンの評価 [*]が加えらた。[*] 500人を超える19-89歳の接種者を対象とする解析から、一価ワクチンに対してBA.5中和抗体が5-6倍になり、BQ.1.1に対する中和抗体も上昇. 

2022-11-05_2 二価ブースターワクチンの安全性情報:米国CDC発行Morbidity and Mortality Weekly Reportの11月4日版から

[出典] "Safety Monitoring of Bivalent COVID-19 mRNA Vaccine Booster Doses Among Persons Aged ≥12 Years — United States, August 31–October 23, 2022". Hause AM, Marquez P, Zhang B, et al. Morbidity and Mortality Weekly Report  2022;71:1401–1406. http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7144a3
[データ源]

  • COVID-19ワクチン接種後の有害事象の把握を目的としてCDCが設立したスマートフォンを介した自主的な安全性監視システム「v-safe」とワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System : VAERS)

[v-safe登録ブースターワクチン接種者 211,959人(12歳以上)]

  • 4回目 (96,241人; 45.4%) または5回目 (106,423人; 50.2%) のCOVID-19ワクチン接種者のうち、122,953人 (58.0%) がファイザー・ビオンテックの二価ブースターワクチンを接種、89,065人 (42.0%)がモデルナの二価ブースターワクチンを接種
  • 副反応・副作用の様相: 疼痛 (45.0%-70.5%), 疲労 (30.0%-53.1%), 頭痛 (19.7%-42.8%), 筋肉痛 (20.3%-41.3%), 発熱 (10.2%-26.3%) の順;55人が医療措置を受けそのうち45人が入院し、そのうワクチン接種が原因ではなかった29人以外の中で13人がVAERSへと登録し、3人はVERSへの登録を望まなかった。

[VERS登録ブースターワクチン接種者 5,542人 (12歳以上)]

  • 939人はブースターワクチンと同時に他のワクチンを接種し、そのうち852人がインフルエンザワクチンを接種していた。
  • (crisp_bioにとっては意外なことに)ワクチン接種の誤りに関連する事象(誤った製剤の投与、誤った用量の投与、過小投与、誤った製品の投与など)が1,913件 (34.5%) を占めた。ファイザー・ビオンテック接種時 877件、モデルナ接種時 1,037件のうち、健康被害の発生を示す報告が225件 (11.8%) に上った。
  • 副反応・副作用は、頭痛 (628; 11.9%), 疲労 (575; 10.9%), 発熱 (561; 10.6%), 疼痛 (524; 9.9%), 悪寒 (459; 8.7%).
  • VAERS登録のつい重篤と分類された251件の内訳:心筋炎 5件、心膜炎 4件、COVID-19感染 19件;心筋炎および心膜炎を経験した人の年齢層は、それぞれ12~78歳、46~78歳;死亡例は36例で,年齢中央値は71歳 (46〜98歳);本報告書作成時に十分な情報が得られた死亡者の死因は心停止、認知症、転移性前立腺癌、心筋梗塞などであった。CDCは、残りの死亡者について医療記録と生命維持記録を要求中である。

2022-11-05_1 11月3日の記事の訂正と更新

[訂正] 引用した表の中のShi研究室のアッセイ対象がシュードウイルスとされていたが、生ウイルスの誤りであった。したがって、生ウイルスを対象としたアッセイでは、二価ブースターワクチンが一価ブースターワクチンに比べて、BA.5に対する中和抗体価を3〜4倍あげる効果を示すことが、2つの研究室から報告されていたことになる。
[更新] ファイザー・ビオンテックが第2/3相試験の中間報告から、55歳以上の参加者において、BA.4/BA.5対応二価ブースターワクチンが一価ブースターワクチンに比べて、BA.5に対する中和抗体価を4倍をあげる効果あると、プレス公表した [Pfizer press release 2022-11-04 06:47 am]。二価ワクチン30μgブースター投与1カ月後、BA.4/BA.5中和抗体価はブースター投与前の値から55歳以上の成人では13.2倍、18歳から55歳の成人では9.5倍上昇した。スクリーンショット 2022-11-05 9.59.53一方で、従来株対応一価ブースターワクチン接種の場合、55歳以上の成人でのBA.4/BA.5中和抗体価の上昇は2.9倍にとどまった。安全性と忍容性は、オリジナルの一価ワクチンと同様であり、良好な状態を維持したとしている。
[注]挿入図の右図は、今回の訂正と更新が反映したEric Topolの11月4日付の記事から引用したもの。

2022-11-03 オミクロン-BA.5にも対応するよう設計された二価mRNAブースターワクチンの効果

 Eric Topolが、スクリーンショット 2022-11-03 17.37.31従来株とオミクロン株BA.5亜型の双方に対応すべく設計された二価ワクチンの有効性に関する5件のプレプリントの結果を要約して、GoundTruths 11月2日版で公開した [GOUND TRUTH掲載の一覧表を引用右図参照]。
 5件の報告は、いずれも比較的少数の参加者を対象にし、接種からの時間間隔も多少異なっているが、結果も異なっている。特に、オミクロン株の亜型の中で比較的新しいBQ.1.1に対する有効性については、Emory大学医学部のSutharらだけ[*]が、二価ブースターワクチンが一価ブースターワクチンよりも免疫を大きく増強することを報告した。Sutharらの結果は、他がシュードウイルスでの評価結果であったのに対して、生ウイルスに対するアッセイからの結果であり、より信頼性が高いと思われる。
 こうした差異はあるが、どの報告も、BA.5に対しては、二価ブースターワクチンが、少なくとも、一価ブースターワクチンに優るとも劣らない結果を出していることに注目したい。
[*] 一価ブースター1回 (7-28日後) 12人および一価ブースター2回 (70-100日後) 12人、と二価ブースター1回 (16-42日後) 12人の血清の中和活性を評価。

2022-10-29 経鼻ワクチンを、mRANワクチン接種のブースターとして投与することで、新型コロナウイルスの感染を阻止する"Prime and Spike"法登場

[出典] "Unadjuvanted intranasal spike vaccine elicits protective mucosal immunity against sarbecoviruses" Mao T, Israelow B, Suberi A, Zhou L, Reschke M, Peña-Hernández MA, Dong H, Homer RJ, Saltzman WM, Iwasaki A. (bioRxiv 2022-01-26) Science 2022-10-27. https://doi.org/10.1126/science.abo2523 [著者所属] Yale U School of Medicine, Yale U, HHMI. 

 新型コロナウイルスに対する防衛手段として、ワープスピードで開発されたmRNAワクチンは当初90%を超える有効率を示したが、デルタ変異株に続くオミクロン変異株の出現もあって、COVID-19パンデミックは終息するに至っていない。mRNAワクチンをはじめとして現在接種されている非経口ワクチンは、強固な全身免疫を誘導するが、コロナウイルス侵入の一次的標的となる呼吸器粘膜における免疫を強固にするには至らない。

 イェール大学の研究チームは、mRNAワクチンなどの非経口ワクチンの初回 (プライム) 接種 (primary vaccination: mRNAワクチンの場合は2回接種) のブースターとして、アジュバントを伴わない[*1]スパイクタンパク質、または、スパイクタンパク質のmRNAを内包した免疫応答しないポリプレックスを鼻腔内接種 (IN: intranasal boosting)するPrime and Spike法を開発した。

 呼吸器にワクチンを投与すると強力な粘膜免疫応答が誘導されるが、これまでに、ワクチンのプライム全身投与に経鼻ブーストを加えることで、全身投与によるプライムとブーストの組み合わせと同レベルの全身性免疫が得られ、さらに粘膜免疫も増強されるとする論文が複数発表されていた。

 研究チームは今回、Prime and Spikeが、呼吸器粘膜に常在性のT記憶細胞とB記憶細胞、およびIgAを誘導し、初回接種で誘導された全身免疫を増強しつつ、SARS-CoV-2の致死感染に対する部分免疫 (partial immunity) を帯びたマウスを完全に保護することを、示した。

 Prime and Spikeでは、種々のスパイクタンパク質を用いることで、抗原原罪 (original antigenic sin) [*2]に問われることなく、サルベコウイルス (sarbecoviruses) [*3]に対する交差反応性免疫を誘導することが可能である。

 [*] 注

  1. Prime and Spikeではアジュバントを使用しない:全身プライムに続く経鼻ブースト、または、経鼻プライム&ブーストで投与されるほとんどの組換えサブユニットワクチンは、免疫原性を高めるためにアジュバントを必要とする。しかし、呼吸器へのワクチン投与は、全身投与に比べて呼吸器内でのワクチン関連有害事象が許容されにくいという課題を伴っている。さらに、季節性インフルエンザ用のアジュバント含有経鼻不活化ワクチンが、患者に非呼吸器系の有害事象を引き起こした例があり、これはアジュバントを介した炎症が原因であると推測されている。
  2. 抗原原罪:最初に感染した病原体の「記憶」が優先されて、新規に感染した病原体に対してまず免疫応答するナイーブT細胞の反応が抑制されてしまう現象。
  3. Sarbecoviruses > Severe acute respiratory syndrome–related coronavirus/SARS関連コロナウイルス > SARS-CoV-1, SARS-CoV-1 and numerous bat-hosted strains

2022-10-28 生後6ヶ月~5歳児を対象とするモデルナ社のmRNA-1273ワクチン (Spikevax) の第2/3相試験からの報告がNEJM 誌から公開された

[出典] "Evaluation of mRNA-1273 Vaccine in Children 6 Months to 5 Years of Age" Anderson EJ, Creech CB, Berthaud V, et al., for the KidCOVE Study Group. N Engl J Med 2022-10-19. https://doi.org/10.1056/NEJMoa2209367

  • 生後6~23ヵ月の1,762 例と2~5歳の3,040 例に,mRNA-1273ワクチン25μgを2回、生後6~23ヵ月の593例と2~5歳の1,008 例に、プラセボを2回、注射した。
  • 有害事象は、ワクチン接種グループで頻度が高かく、また、第1回接種後よりも第2回接種後の方が頻度が高かったが、主に低グレードで一過性であり,新たな安全性の懸念は認められなかった.
  • 2回接種後57 日の時点での中和抗体価の幾何平均値は,生後6~23ヵ月で1,781(95% CI 1,616~1,962)、2~5 歳で1,410(95% CI 1,272~1,563)であり、mRNA-1273ワクチン100μgの注射を受けた若年成人の1,391(95% CI 1,263~1,531)と同レベルであった。
  • ワクチン接種グループとプラセボ接種グループにおけるCOVID-19発症の比率から算出したCOVID-19 に対するワクチン有効率は,生後 6~23 ヵ月で 50.6%(95% CI 21.4~68.6)、2~5 歳で 36.8%(95% CI 12.5~54.0)となった.
  • この評価が行われた時点では,オミクロン株(B.1.1.529)が主に流行しており、そのため、有効率はオミクロン株流行以前の成人を対象とした臨床試験で得られた値よりも、低下したと考えられるが、入院を予防する効果は先の結果と同レベルであった。

2022-10-19 デルタ株またはオミクロン株への感染前のmRNAワクチン2回または3回接種の効果は? (米国の例)

[出典] "Association of mRNA Vaccination With Clinical and Virologic Features of COVID-19 Among US Essential and Frontline Workers" The HEROES-RECOVERY Network. JAMA 2022-10-18. https://doi.org/10.1001/jama.2022.18550

[注] HEalth caRe wOrkErS (HEROES)

 米国の6つの州 (アリゾナ、フロリダ、ミネソタ、オレゴン、テキサス、ユタ) からの医療従事者、救急隊員、その他のエッセンシャルワーカーを主とする前向きコホートを対象に、2020年12月14日から2022年4月19日までにSARS-CoV-2に感染した1,199人のデータを解析し、また、2022年5月9日まで追跡調査を報告した。

  • 1,199名(年齢中央値41歳)のうち,オリジナルの株、デルタ株、及びオミクロン株への感染がそれぞれ、14.0%、24.0%、62.0%を占めた。
  • デルタ株感染の 14 ~ 149 日前に 2 回目のワクチン接種を受けた参加者は,ワクチン未接種の参加者と比較して症状が出る確率が有意に低かった。また、症状がある場合、感染7~149日前に3回目の接種を受けた者は、発熱や悪寒を訴える頻度が有意に少なく、症状を訴える日数も有意に少なかった。
  • オミクロン株感染者では,症候性感染のリスクは,非接種者と2回接種者との間に有意差はなく,3回接種者 (88.4%)の方が非接種者 (79.4%) よりも高い結果となった。オミクロン株症候性感染者の中で,感染 7 ~ 149 日前に 3 回目の接種を受けた者は,未接種の者と比較して,発熱や悪寒を訴える割合が有意に低いか、医療機関にかかる割合が低かった。
  • ウイルス量で比較すると、感染14~149日前に2回目の投与を受けたデルタ株およびオミクロン株感染者の平均ウイルス量は、ワクチン未接種の参加者と比較して有意に低かった。

2022-10-17 ワクチン接種後の副反応・副作用の調査、日本でも

 昨日、米国での調査報告を取り上げたが、報道によると国内でも、新型コロナウイルスワクチン接種後に頭痛や手足のしびれといった症状が長期間続く事例が報告されていることを受け、厚生労働省が実態調査を計画しているとのことである ["接種後長引く症状、調査へ コロナワクチン実態把握"共同通信 2022-10-16 https://nordot.app/954326813745496064]

2022-10-16 ワクチン一次接種とブースター接種後の重篤なCOVID-19発症事例(米国の例)
[出典] "Incidence of Severe COVID-19 Illness Following Vaccination and Booster With BNT162b2, mRNA-1273, and Ad26.COV2.S Vaccines" Kelly JD, Leonard S, Hoggatt KJ et al. JAMA 2022-09-14. https://doi.org/10.1001/jama.2022.17985 [著者所属] San Francisco VA Medical Center, UCSF, Richard L. Roudebush VA Medical Center, Indiana University School of Medicine, Regenstrief Institute.
[目的]
 Question BNT162b2、mRNA-1273、Ad26.COV2.Sワクチンの接種およびブースター後の重篤なCOVID-19発症率を把握する。
[所見]
 この後向きコホート研究 (retrospective cohort study) では、退役軍人健康管理局の施設でケアを受けている成人1,610,719人を対象に、2020年12月11日以後に一次接種を完了し、かつ、2021年7月1日から2022年4月29日の間にブースター接種を完了したコホートを対象に、接種後24週間フォローアップした。なお、このコホートには一次とブースターで接種したワクチンが異なる対象も含まれている。
 24週間で、1万人あたり125.0人がSARS-CoV-2にブレークスルー感染し、8.9人がCOVID-19による肺炎で入院または死亡し、3.4人が重度の肺炎で入院または死亡した。
 高リスク集団(65歳以上の高齢者、高リスクの併存疾患を持つ者そしてまたは免疫不全)については,COVID-19 肺炎による入院または死亡の発生率は、1万人あたり、65 歳以上 1.9 人、高リスク併存 6.7 人、免疫不全 39.6 人であった。
 COVID-19肺炎または死亡で入院した患者のブースター接種後の時間によるサブグループ解析では、65歳以上および高リスクの併存疾患を持つ患者では同様の発生推定値が示されたが、免疫不全の疾患を持つ患者は異なった。
[結論]
 全体として、COVID-19肺炎による入院または死亡の発生率は、1万人あたり8.9人であった。

2022-10-10 COVID19の人口当たり死者数、米国はなぜ日本の9倍近いのか - 人口の~4分の1が65歳以上である日本の人口あたりCOVID死者数がどの主要国よりも少ない - 
[出典] “The marked contrast in pandemic outcomes between Japan and the United StatesTopol E. Ground Truths 2022-10-08. https://erictopol.substack.com/p/the-marked-contrast-in-pandemic-outcomes
 COVID19の最も重大なリスク要因は年齢である。65歳以上の高齢者は日本では人口の~25%を占めるが、米国では人口の15%に過ぎない。3CCOVID19パンデミック対応策として、日本ではマウス着用が普及し、三密 (3Cs; 右図参照)が避けられ、厳しい水際作戦が採られた。また、ワクチン接種開始は米国に遅れを取ったが、3ヶ月の間に2回接種完了者比率で米国を超え2022年10月時点で、米国が68%のところ、日本は83%に達している。ブースター接種で見ると、米国が40.8% (65歳以上の42%)のところ、日本は95%に達している。
 さて、人口100万人当たりの累積COVID死亡者数を比較すると、米国は日本のほぼ9倍であり、言い換えると、米国では315人に1人のところ、日本では2,758人に1人になる。100万人あたりの超過死亡者数で見ても、米国は日本のほぼ7倍に達する [入院、ICU治療およびロングCOVID19の定量的比較は不可能であった]。
 COIVD19パンデミック対応における日米の格差をもたらした要因を理解するには、よく知られているIan McKay教授の"スイスチーズモデル"が最適である [Wikipediaから引用した左下図参照]。スクリーンショット 2022-10-10 18.35.06すなわち、何か一つの要因だけではなく、マスク、換気や空気の質に留意した一貫したエビデンスに基づく3C回避、ワクチンやブースターの普及など、複数の要因が日本に米国にはるかに優る成功をもたらしたとした上で、著者 (E. Topol)は、スイスチーズモデルに、65歳以上のCOVID19患者の入院と死亡を明らかに抑制するPaxlovidの1層を加えた。米国ではPaxlovidの投与が、適用対象の50歳以上のSARS-CoV-2感染者の25%にも達していない。
 18歳以上のSARS-CoV-2感染者の入院を81%以上抑制し、2021年にCOVIDから2千万人以上の守ったとされるワクチン [The Economist 2022-07-07]の完全接種そしてブースター接種が進まないことが、今の米国の課題である。米国のワクチン離れの人口が、ブースター接種を受ける人口をわずかに上回るごとに、COVID19パンデミックに対して米国の脆弱性が増していく。ワクチン完全接種とブースター接種を軌道に乗せないと、米国は厳しい冬を向かえることになる。


2022-10-08 米国において、
共和党員のCOVID-19死亡率が民主党員よりも高いとする報告2報 - 共和党員のワクチン接種率が低いことが原因とする説もあるが、マスク着用とソーシャルディスタンスの確保の影響の方が大きいとする説もある
[出典] “Covid death rates are higher among Republicans than Democrats, mounting evidence shows - Lower vaccination rates among Republicans could explain the partisan gap, but some researchers say mask use and social distancing were bigger factors” Aria Bendix. NBC News. 2022-10-07 https://www.nbcnews.com/health/health-news/covid-death-rates-higher-republicans-democrats-why-rcna50883

1. 米国におけるCOVID-19死亡率と郡レベルの党派性との相関
[出典] PERSPECTIVE "The Association Between COVID-19 Mortality And The County-Level Partisan Divide In The United States" Neil Jay Sehgal, Dahai Yue, Elle Pope, Ren Hao Wang, and Dylan H. Roby. Health Affairs VOl. 41, No.6 2022 June. https://doi.org/10.1377/hlthaff.2022.00085 [著者所属] University of Maryland, UC Irvine
 米国では,COVID-19パンデミックに対する考え方や,マスク着用,ソーシャルディスタンシング,ワクチン接種する地域政策の妥当性について、明らかに党派による相違がある.先行研究では,共和党の投票率が高い地域ほどCOVID-19による死亡率が高くなることが示唆されており,このような相違の結果である可能性がある.
 米国の大多数の郡からデータを取得したこの観察研究では、郡の政治的所属を特徴付けるために2020年の大統領選挙のデータを利用し、共和党の投票率のレベルが異なる郡間で、2021年10月31日までのCOVID-19死者数を比較した。
 COVID-19 の伝播と転帰に影響を及ぼすと考えられる人口統計学的特性および社会的決定要因を配慮した解析の結果、郡レベルの共和党の投票率と郡レベルの COVID-19 による死亡率の間に正の相関があることが明らかになった。
 共和党が過半数を占めた郡では,調査期間中に民主党が過半数を占めた郡と比較して,人口 10 万人あたり 72.9 人の死者数の増加が見られ,COVID-19 ワクチンの接種によってその差の約 10 % が説明された。この結果は、郡レベルの投票行動が、住民をCOVID-19から守るような公衆衛生対策の遵守および支持のプロキシーとして機能する可能性を示唆した。

2. COVID-19パンデミック時の共和党と民主党の過剰死亡率
[出典] “Excess Death Rates for Republicans and Democrats During the COVID-19スクリーンショット 2022-10-08 21.43.37 Pandemic” Jacob Wallace, Paul Goldsmith-Pinkham & Jason L. Schwart. National Bureau of Economic Research Working Paper 30512. Issue Date September 2022. https://doi.org/10.3386/w30512 [著者所属] Yale University, Yale School of Public Health
 共和党寄りの郡が民主党寄りの郡よりもCOVID-19の死亡率が高かったという証拠や、所属政党とワクチン接種の見解の間のリンクの証拠がある中で、党派がCOVID-19の潜在的なリスク要因として浮上している。
 本研究では、オハイオ州とフロリダ州の2017年の有権者登録と2018年から2021年の死亡率データから、個人レベルでのCOVID-19パンデミック時の党派と過剰死亡率との相関を分析し、共和党員の過剰死亡率が民主党員のそれを大幅に上回り、その相違がワクチンが広く利用できるようになった後の期間に集中しているという結果を得た。
[注] 国内では、大阪府の人口あたりのCOVID-19死者数が他の自治体を圧倒していることが知られている [
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/japan_death.html 引用右図参照]。

2022-09-26_2 米国CDCからのワクチン接種とCOVID-19死亡リスクの相関データ
[出典] CDC COVID Data Tracker  https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#rates-by-vaccine-status

スクリーンショット 2022-09-26 11.06.10  スクリーンショット 2022-09-26 11.14.55

2022-09-26_1 COVID-19ワクチンの大規模臨床試験から学んだこと

[出典] "Lessons from a large-scale COVID-19 vaccine trial" Mahla RS, Dustin LB. J Clin Invest 2022-09-15. https://doi.org/10.1172/JCI163202 [著者所属] University of Oxford

 現在進行中のCOVID-19パンデミックに対抗するには、世界的なワクチン接種が依然として必要である。スクリーンショット 2022-09-26 10.32.50安全性,有効性,免疫防御の持続性は,無作為化比較試験(randomized controlled trial, RCT)の重要な指標であり,ワクチンの承認,世界的な流通,包括的な集団接種プログラムにとって不可欠である.ワクチン接種あるいは自然感染による免疫防御は、時間の経過とともに低下し、さらにウイルスの急速な進化が課題になる [図1 A引用右図参照]。
 Journal of Clinical Investigation 誌の本号では、Sobieszczykらが、アストラゼネカ/オックスフォード大学のワクチンAZD12222 (ChAdOx1 nCoV-19)の安全性、有効性、および免疫防御の持続性について、32,450人が参加した大規模な多国籍第III相RCTを実施した結果から、免疫保護効果が6ヶ月間持続し、180日後には免疫力が低下したことを報告している。
 スクリーンショット 2022-09-26 10.33.00また、ワクチン試験が直面する課題も浮き彫りにしている。例えば、COVID-19に対して脆弱な参加者に対しては早期に盲検化を解除する必要があるが、それが一方で、ワクチンの評価に影響する可能性がある。また、世界中のワクチン安全性・有効性試験において、社会から疎外されている少数民族が対象外になる可能性が高いことである [図1 B引用右図参照]。

 
2022-09-20 韓国初のCOIVD-19ワクチンSKYCovione™は、ヒトが設計した新しいタンパク質から作られた史上初の医薬品

[出典] 

 SK bioscience社が開発したSKYCovione™ は、2022年6月29日に韓国食品医薬品安全庁の承認を受けていたが、欧州の規制当局への条件付き販売許可の申請に続いて、WHOにEULへの登録を申請した。

  • SKYCovione™ は,SK biosicenceとUniversity of Washington School of MedicineのInstitute for Protein Design (IPD) [*]、GSK、およびInternational Vaccine Institute (IVI)に加えて、Coalition for Epidemic Preparedness Innovations (CEPI)、 Bill & Melinda Gates Foundation, 韓国政府などのパートナーとの協働の成果である。[* IPDの所長は、タンパク質設計の第一人者のDavid Baker博士]
  • SKYCovione™は、IPDと共同開発したSARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン (RBD)を標的とした自己組織化ナノ粒子に、GSKのパンデミックアジュバントAS03を組み合わせたワクチンである。IPDでは、David VeeslerNeil Kingの2つの研究室がCOVID-19パンデミックの初期から、RBDのコピー60個で修飾したタンパク質ナノ粒子を設計し始めていた。この設計は、ウイルス表面のスパイクタンパク質の繰り返しをミミックしており、強力な免疫応答を誘導することが期待されていた。
  • SKYCovione™は、摂氏2~8度で保存可能である。
  • SKYCovione™は、6カ国 (タイ, ベトナム, ニュージーランド, ウクライナ, フィリピン, 韓国) からの4,037人の参加を得て行った国際共同第III相臨床試験において、Oxford/AstraZenecaワクチンのおよそ3倍以上のレベルの中和抗体を誘導し、抗体陽転率も98%と高く、また安全性も確認された。
  • ブースターとして投与した場合、SKYCovione™はオミクロン変異体BA.1に対しても交差中和活性を示した。
  • SKYCovione™の開発は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団とCEPIからの資金援助を受けており、欧州連合のHorizon 2020プログラムからの支援も得た。
  • [crisp_bio] アジアにおけるCOVID-19ワクチン開発で、日本は、中国、インドに続いて韓米連携の後塵を拝することになった。

2022-09-19 ブースター接種すべきか、接種せざるべきか - いまさらの質問 !

[出典] "To boost or not to boost - Should that be the question?Eric Topol. Ground Truths 2022-09-18. https://erictopol.substack.com/p/to-boost-or-not-to-boost

 アメリカ人はブースター接種に対して驚くほど消極的である。米国のブースターの接種率は現在33%で、各国の中で73位である。世界の裕福な国々ではその2倍以上であり、ルワンダ、ウズベキスタン、イラン、ホンジュラス、アゼルバイジャンなどの後塵を拝している。最初にワクチンを承認し、製造し、5000万本以上のワクチンが接種されてきた国として、このブースター接種の遅れは異常である。それにもかかわらず、米国政府はオミクロンBA.5変種の二価ワクチンを新たに1億7100万本も購入した。

 この惨めな失敗には理由がある。きっかけは2021年8月に始まった米国のブースターキャンペーンである。取るべき戦略について異なる政府機関(CDC, FDA, NIH, WH) 間で内紛が起き、数日ごとに異なる計画が発表されたことから、米国民は大混乱に陥ったのである。さらに、全ての成人にブースター接種が必要とする判断が11月になるまで遅れに遅れたのである。その何ヶ月も前から、ブースター接種の有効性が、イスラエルや他の国からのデータから明白になっていたにも関わらず、である。混乱、判断の遅れ、拙劣なメーセージの伝え方から、ブースター接種は間違った道に迷い込んでしまい、誤情報、反科学、反ワクチン、偽情報に対して、効果的に対抗することもできなかった。

ブースターの効果を疑う余地のない証拠

 ブースターが有効であるとする確固とした証拠は、2021年10月に遡る。唯一の大規模 (~1万人)なブースター無作為化試験の結果が発表され、その後、デルタ株が優勢になった期間を経て、すべての年齢層で有症状感染を95%抑制し、少なくとも4カ月間そのレベルを維持すること、ならびに、安全性または心筋炎の懸念がないことが公表された [BNT162b2の3回接種のデータ: NEJM 2022-05-19]。また、2020年11月には、有効性レベルが当初の無作為化試験報告の95%まで回復したと報告された。

 3回接種の報告に加えて、多くのワクチン効果試験が行われ、その後、50歳/60歳/80歳以上で、3回接種に対して4回接種に死亡数減少に効果があったという報告が5件 (査読付き論文 3件, プレプリント 1件, CDC報告 1件) 報告された。入院に対しても同様な予防効果が示され、さらに、ロングCOVIDの減少を示すデータも公表された。

 しかし、オミクロン株 (BA.1, BA.2, BA.2.12.1, BA.4/5) に対しては一般に、その感染や伝達に対するワクチンやブースターの予防効果は低く、最初の2ヶ月で30~40%のレベルまで低下する。このことが、ブースターに対する熱意をさらに失わせる結果につながっている。また、筆者自身 (Eric Topol) が2回目、3回目、4回目の接種で経験した反応原性があり、深い疲労感、頭痛、悪寒など、1-2日ノックアウトされた状態で受け続けたいとは思わない。目的とする予防効果の保証なしに、誰がそのような接種をしたいと思うだろうか。このような背景から、現在流行しているオミクロン株 (BA.5 88%, BA.4.6 10%)を標的とする新たな二価ワクチンでさえ、進んで接種する気にならないのは理解できる。

 BA.5の二価ワクチンは9月2日 (金)に米国でブースター接種向けに承認されたが、これは、BA.1二価ワクチン、ベータ変異株二価ワクチン、および、BA.5二価ワクチンをマウスで評価した結果に基づいていた。また、BA.5だけを標的としたワクチンの評価データは添えられなかった。この状況は、ブースターが進んでいない米国では、新たな二価ワクチンの社会的受容性を損なうと恐れがある。

 筆者 (Eric Topol)がこの原稿を執筆する直前に、モデルナのBA.1二価ワクチンブースターのデータが発表された。BA.1 (およびBA.5)に対する中和抗体のレベル、祖先型ワクチンのブースターの約2倍になることが示され、この点は評価に値する。しかし、BA.5の二価ワクチンでこれ以上の効果が得られるか否かは現時点では定かではない。また、この報告のヒトのデータにおいても、同じワクチンのマウスのデータと同様に、オミクロン株に対する抗体誘導が、祖先株に対するものに比べて、かなり低いとことが、気掛かりな点である。

なぜ抗体誘導が低レベルなのか?

 2つの可能性がある。オミクロン変異株の免疫原性が低いか、あるいは、感染またはワクチンにより二価ワクチン接種に先立つSARS-CoV-2のスパイクタンパク質への曝露によって新たな抗原に対する反応が低下してしまう可能性である。もちろん、これは単純化した見方であり、エピトープによるサブタイプやメモリーB細胞やT細胞については別の話にはなるが、インプリンティング (original antigenic sin/抗原原罪 [*])という問題を無視することはできない。おそらく、ここで見られるのは、免疫逃避 (免疫原性の低下)とインプリンティングが組み合わさったものであろう。いずれにしても、重症化予防の指標と考えられる中和抗体のレベルが祖先株の2倍と言っても、有効性から見るとそれほど高くないことは、確かに懸念材料ある。なお、免疫インプリンティングに関する懸念は、Yunlong Caoらの新しい報告 [bioRxiv 2022-09-16]によっても裏付けられている [*:抗原原罪については、2022年3月24日に開催された第31回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会でも議論になっていた。厚生労働省Webサイト]。

 BA.5二価ワクチンの有効性については、今後のファイザー社とモデルナ社の新しいブースターのデータを待つ。

いま問うべき質問は

 祖先株を標的とするワクチンのオリジナル・ブースター接種が、重症化とロングCOVIDに対する予防効果を帯び、接種後一定期間感染と伝播を抑制する効果があることは確かである。しかし、BA.5二価ブースターがBA.1二価ブースターやオリジナル・ブースターより優れているかどうかは、現時点では、確かではない。

 一方で、粘膜IgA抗体こそが感染や伝播を阻止するのに必要とする複数の報告が出揃ってきた。例えば、9月14日に刊行されたNEJM 論文は、IgG抗体とは独立に、粘膜IgA抗体によってブレークスルー感染とウイルス量が60-80%減少することを報告している。経鼻・経口ワクチンで粘膜IgA抗体を誘導する方法は、副作用も少なく、繰り返し服用しやすく、中国のCanSinoが開発に中国で承認された吸入ワクチン「Convidecia Air」のデータはこの戦略の先触れとなろう [本記事2022-09-08の項参照]

 いま問うべきはワクチンの将来である。今後、ブースターを4~6ヶ月ごとに繰り返すことはできず、また、インフルエンザワクチンのように予防接種を毎年繰り返す戦略は、今のところ、根拠が薄い。SARS-CoV-2がインフルエンザウイルスのような季節性を示すとは証明されていない。

 むしろ、SARS-CoV-2の亜種への対策を講じるべきである。B.A.2.75.2はBA.2.75の亜系統であり、スパイクタンパク質に3種類の新しい変異を帯びた厄介な亜種である。Ben Murrellらがプレプリント [bioRxiv 2022-09-16]で、B.A.2.75.2の免疫逃避能がこれまでで最も高いとし、これは、先に引用したYunlong Caoらの新しい報告 [bioRxiv 2022-09-16]も裏付けている。 

 したがって、BA.5を標的とするワクチン開発は、BA.2.75.2への対策には役立たない可能性が高い。

まとめ

 3回目または4回目 (1回目または2回目のブースター) のワクチン接種がCOVID-19に対する防御に役立つとする証拠は十分にあり、特に、50歳以上の人々にとって必須であり、また、12歳以上のすべての人々にブースター接種を受けることを推奨するに値する。

 5回目のブースターについては、まだヒトを対象とする臨床データが無いが、重症化に対する高い予防効果を期待できる。しかし、今後さらにブースターに対する関心や接種率が低下していく(米国)においては、5回目のブースターは公衆衛生上の政策としては不十分であろう。幸いなことに、感染者数は減少しており、BA.2.75.2または他のBA.2誘導体が優勢になるまで、今後数ヶ月は感染や入院に関してかなり静穏な局面を迎えることになりそうだ。

 眼前にあるSARS-CoV-2亜種を追い続けずに、免疫逃避、免疫インプリンティング、新しい亜種の発生という3つの問題に取り組んで、SARS -CoV-2の先手を打つべき時だ。ブースターに次ぐブースターという注射中心のアプローチはオミクロン亜種登場までは極めて有効であったが、今後は、より耐久性があり、経鼻・経口投与が可能であり、より効果的な解決策を求めて、技術革新を進めていく必要があり、また、それらは私たちの手の届くところにある。

[crisp_bio注] 本稿は、原文を幾分簡略化した意訳であり、正確な記述については、いくつかの図表も備えた出典にて確認されたい。