1型糖尿病・多施設ランダム化比較試験において、標準的インスリン投与法に勝る成績
[注] 多施設ランダム化比較試験 ( A multicenter, randomized, controlled trial, RCT)
[出典] NEWS RELEASE "Bionic pancreas improves type 1 diabetes management compared to standard insulin delivery methods" National Institutes of Health. 2022-09-28. https://www.nih.gov/news-events/news-releases/bionic-pancreas-improves-type-1-diabetes-management-compared-standard-insulin-delivery-methods
[引用論文] "Multicenter, Randomized Trial of a Bionic Pancreas in Type 1 Diabetes" Bionic Pancreas Research Group. N Engl J Med 2022-09-29. https://doi.org/10.1056/NEJMoa2205225
インスリン自動投与システムは、人工膵臓や閉ループ制御システムとも呼ばれ、血糖の持続測定機能を介して患者の血糖値を追跡し、必要なときにインスリンポンプを使ってインスリンホルモンを自動投与する。このようなシステムは、指掌で血糖値を測定する方法、連続血糖測定器と毎日何度も注射をするインスリン投与方法、または自動化されていないポンプに取って代わることが期待される。
バイオニック膵臓は他の人工膵臓と比較して患者や医療従事者に求められる操作が単純でより自動化されている。
- バイオニック膵臓は、初回使用時に体重を入力することで初期化され、ユーザーのニーズに合わせてインスリン投与量を継続的に自動調整するアルゴリズムによりインスリンが自動投与される。
- 糖質量の計算や、高血糖を補正するためのインスリン投与を開始する必要もなく、医療従事者が装置を定期的に点検・調整する必要も無い。
米国内の16の臨床施設で実施された13週間の試験には、1型糖尿病で1年以上インスリンを使用している6歳から79歳までの326名が参加した。参加者は、バイオニック膵臓デバイスを使用する治療群と、試験前の個人的なインスリン投与方法を使用する標準ケア対照群のいずれかに無作為に振り分けられた。対照群の参加者全員に持続グルコースモニターが提供され、対照群のほぼ3分の1が試験中に市販の人工膵臓技術を使用していた。
- バイオニック膵臓を使用した被験者では、長期的な血糖コントロールの指標である糖化ヘモグロビンが7.9%から7.3%に改善したが、標準ケア対照群では横ばいにとどまった。
- また、バイオニック膵臓を装着した被験者では、コントロール群に比べ、目標血糖値範囲内で過ごす時間が11%(1日あたり約2.5時間)長くなった。
- これらの結果は、若者と成人の参加者に共通であり、血糖コントロールの改善は、試験開始時に血糖値が高かった参加者で最も顕著であった。
バイオニック膵臓群に見られた最も多く報告された有害事象は、インスリンポンプ装置の不具合による高血糖であり、低血糖の発生件数は少なく、重度低血糖の発生頻度は、標準治療群との間に統計的な差はなかった。
[注] Diabetes Technology and Therapeutics誌に4つの姉妹論文が刊行されている。
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